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陣痛から出産まで45分? あまりにワイルド過ぎるNY産婦人科事情

メルマガ『しんコロメールマガジン「しゃべるねこを飼う男」』でおなじみ、NY在住の猫好き医学博士しんコロさん。現在、奥様が妊娠中というしんコロさんは「NY産婦人科仰天ファイル」と題して、日米の産婦人科の対応の違いを紹介しています。今回は、最近出産を経験したというしんコロさんの同僚のお話。前回に続き、またも仰天必至の「ワイルド過ぎる」NY出産事情が明らかに…。

外人はワイルドだ

数号前のメルマガで、NYの産婦人科の仰天ファイルを紹介しました。ちゃっこがつわりの症状で頭痛が激しい時には「水4リットル飲め」と言われ、エコー検査では「赤ん坊がこっち向かない!」と検査技師にキレられる、というびっくりな経験をしました。

基本的に、日本と比較するとこちらの産婦人科は誤解を恐れずに言えば、乱暴というか、荒っぽいというか、ワイルドです。日本にはまだ無いような高度で最先端の検査が受けられる一方で、日本ではありえないような雑な扱いを受けられます(笑)。

アメリカにいると「どうしてこう人間の扱いが雑なのだろうか?」と疑問に思うことが幾度となくあります。人種差別をするつもりは全くありませんが、僕が達した結論は「外人は強くワイルドだからだ」です。つまり、多少乱暴に扱っても大丈夫なのではないか?と思うのです。

もしくは、日本人がちょっと良く言えば繊細、悪く言えば弱いのかもしれません。いずれにしても、アメリカの医療システムはワイルドな側面があります。今日は産婦人科にまつわる、ワイルド~な話をしてみたいと思います。驚くこと必至です。

僕の職場には最近子どもを出産した奥さんをもつ同僚が数人います。彼らは僕よりも数ヶ月先の「父親の先輩」です。僕が近い未来に経験することを、彼らがつい最近通り抜けてきたというのは心強いものがあります。何かわからないことがあったら彼らに訊けば良いのです。こういったことは本やインターネットに書いてあることよりも、生の情報がなによりです。

ところが、彼らの話を聞けば聞くほど、「ええっ!まじかっ!ひえぇっ!」となることばかりです。彼らは涼しい顔をして話しますが、日本人の僕からするとびっくりすることばかりです。

まず、子どもが生まれる前に「プレ・パパママ講習」とか「母親講習」というものを受ける方もいるかと思います。日本だと地方自治体や市町村がそういった講習を提供していて、 分娩時や子どもが生まれた直後に知っておくべき知識を無料か安い授業料で学ぶことができます。しかし、NYだとこのクラスが$300~500(3~5万円)します。

まず何にしてもお金がやたらかかるのがNYです。

入院させてくれない

そしていざ陣痛が始まった!の時も日本とアメリカではかなり違います。日本の場合は陣痛を確信したら病院に連絡し、入院して出産準備に入るのが一般的だと思います。

しかしNYでは陣痛が来たくらいで病院に行っても突き返されます。友人夫妻は陣痛が始まってから病院に行ったところ、あえなく突き返されました。病院には「陣痛は数分おきに来たら来てよし」と言われました。

そこで友人夫妻はハンバーガー屋に行ってランチをし、ジムで一汗流していたそうです。そうこうしているうちに陣痛が数分おきになり、再び病院に行きました。

っていうか、陣痛が始まってからハンバーガー屋に行けるものですか?痛みが始まったらバーガーどころではないのではと思うのですが、さらにジムで一汗っていうのも僕には驚きでした。余裕すぎやしませんかっ!

他にも、陣痛が始まって病院に行き突き返された夫婦の話があります。その夫婦は、陣痛が数分おきになるまで映画館で映画を見ていたそうです。しかも、それも病院に「映画でもいっといで」と言われたのだそうです。ええ~?そんなに陣痛って始まっても余裕があるものですか?

話を戻して、友人夫妻はハンバーガー屋とジムに行った後、病院に行きました。
この時はすでに陣痛がかなり短い時間で繰り返しています。さすがに、この時の痛みはハンパないはずです。

ちなみに、アメリカでは無痛分娩が一般的です。無痛といっても全くの無痛ではないはずですが、背骨に麻酔を打って痛みを和らげた状態で分娩するのが一般的です。もちろん、自然分娩を選択することもできます。日本では自然分娩の方がむしろ一般的かと思いますが、アメリカ人は痛みが大嫌いなので、痛い思いをしなくてもよいのに敢えて自然分娩を選ぶ人を「ものずき・変わり者」くらいに思うことさえあります。

麻酔は自分で打たされる

友人夫妻が病院につき、ドクターが陣痛の頻度など諸々チェックし「準備おっけ!」となるとめでたく入院です。やっとこさで入院を果たしたところで、背骨への麻酔です。しかし、ここでドクターが背骨にプスッと麻酔を注射してくれるわけではありません。

背骨に針を刺し、カテーテルを入れます。カテーテルの先にはチューブがついていて、その先に麻酔(エピデュラル)が入った小さなポンプを渡されます。そして「痛くなってきたら、自分でそのポンプを押して麻酔を注入してね!」と言われるのです。

もちろん、痛みの度合いは妊婦本人が一番良くわかっているので、麻酔を入れるタイミングもその度合に応じて本人が決めるというのはある意味合理的で効果的なのでしょう。しかし、「自分で入れていいよ!」というのが、なんだかワイルドです。麻酔をチュっと自分で注入して、「あぁ~キクぅ~!」とでもいうのでしょうか。

そして、友人の奥さんは入院してからわずか45分で出産しました。45分ですよ!4時間半でも45時間でもなく、45分!今どき、NYでピザを注文しても45分はかかります。そんな秒速出産すごすぎる!と思いましたが、逆に言えばギリギリまで病院に入れてもらえないというのも事実です。

もちろん、友人の奥さんの場合は安産だったと思います。本人も、「麻酔をしたら痛みなんか全然なく、最高だったわ!」と言っていました。よっぽど簡単にポコンと生まれたのでしょう。バーガー食べてジム行って、病院入って45分で出産!すごすぎます。むしろ羨ましいです。

秒速しか許されない

さて、出産時は麻酔をしてポコッと産んだとしても、母体は大変負担があったはずです。そして麻酔が切れたら痛みもかなり出てくるに違いありません。日本だったら、出産後も母体が回復・安定するまで1週間ほどは入院するのが普通だと思います。

しかし、NYではそうはいきません。どんなに長く入院できても2日程度です。友人の奥さんも2日で退院させられました。病院側はできるだけ患者を病院に滞在させないギリギリのタイミングで運営しているというわけです。患者数が多くベッド数が少ないから仕方のないことなのかもしれませんが、あまりにもドライブスルー的でびっくりです。

生まれた後の展開もNYでは早いです。ある日、日本人の僕の知人がバーで飲んでいたら、赤ちゃんを腕に乗せてマティーニを飲んでいるアメリカ人女性を見かけました。赤ちゃんといっても、かなり小さい赤ちゃんだったそうです。

そこで知人はその女性に声をかけました。生後どれくらいか聞いてみたら、なんと8日とその女性は答えたそうです。8週間でも8ヶ月でもなく、8日ですよ! 生後8日の赤ちゃんを連れてバーになんて行って良いんでしょうか?そもそもNYの埃と排気ガスと喧騒の中に赤ちゃんを連れ出すこと自体、許されるべきではないのでは?と疑問に思いました。ワイルドすぎて怖い!

さらに、女性の社会復帰もNYは早いです。日本の産休制度では、身体に支障がなければ出産後6週間から就労することができます。産後に仕事にすぐ復帰するかどうかはその人の色々な事情で変わってくると思いますが、産後の6週間なんてかなり短い期間です。

日本ではよほどの理由で仕事をしなければならない限り、育児に集中するお母さんも少なくないと思います。しかし僕の研究
所を見ていても、産んだと思ったら即仕事に復帰している人たちを見かけます。
え?ちょ!ついこの間までお腹に赤ちゃんいたのに、もう働いているの?」と思ったことが幾度となくあります。

そして極め付けは、子離れもNYは秒速です。人によっては産後6週間程度で、デイケア(託児所)にあずけてしまうのだそうです。僕の感覚からしたら早すぎやしないか?とつっこみたくなります。

ここでは皆、産んだらすぐに「デイケア!」と騒ぎ始めます。何故そんなにすぐデイケアに預けたいの?と彼らに聞くと「赤ちゃんに社会性と独立心を身に着けさせたい」と返ってきます。生後6週間の新生児はママが必要や!社会性も独立心もあるかっ!っとつっこみたくなります。もちろん、物価や家賃が超高いNYでは共働きでないと生活が厳しい家庭が多いのも事実ですが、生後まもない赤ちゃんをデイケアに預けなければならない状況もいかがなものかと感じます。

ということで、話を聞いている限りでは出産から育児までのペースがめっちゃ早いNYです。せめて、お腹の中にいる長さは世界共通なので、ゆっくりとしたいものです。生まれたら秒速の道を通る僕達ですが、なるべく自分たちのペースを保っていきたいところです。

みなさんは、産婦人科での仰天体験はありますか?

 image by: Shutterstock.com

 

しんコロメールマガジン「しゃべるねこを飼う男」

著者:しんコロ
ねこブロガー/ダンスインストラクター/起業家/医学博士。免疫学の博士号(Ph.D.)をワシントン大学にて取得。言葉をしゃべる超有名ねこ「しおちゃん」の飼い主の『しんコロメールマガジン「しゃべるねこを飼う男」』ではブログには書かないしおちゃんのエピソードやペットの健康を守るための最新情報を配信。
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