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実は大麻の使用を罰する法律はない?なぜあの女優は逮捕されたのか

人気ドラマ「相棒」出演女優として知られ、最近はナチュラリストとして活動していた高樹沙耶(本名:益戸育江)容疑者ですが、「医療大麻の解禁」を求めて参院選に出馬したことでも注目を集めました。その効果についてはさておき、日本において薬物を取り締まる法律にはどのようなものがあり、どのくらいの罪の重さになるのでしょうか。無料メルマガ『知らなきゃ損する面白法律講座』で、現役弁護士が詳しく解説しています。

元女優が大麻所持の疑いで逮捕。大麻取締法とは?

元女優の高樹沙耶容疑者が沖縄県内で大麻を隠し持っていたとして10月25日厚生労働省の麻薬取締部に大麻取締法違反の疑いで逮捕されました。高樹容疑者は自分のものではないと容疑を否認しているということです。

昨年末は女優が自宅でコカインを所持していたとして麻薬取締法違反で逮捕され、今年に入ってからは2月に元野球選手が覚せい剤取締法違反で逮捕、さらに6月に元俳優が覚せい剤取締法違反と大麻取締法違反で逮捕されるというように芸能人の薬物がらみの逮捕が相次いでいます

薬物を取り締まる法律は、覚せい剤に関して規制を行う「覚せい剤取締法」、大麻に関する「大麻取締法」、ヘロイン・モルヒネ・コカイン・向精神薬等に関する「麻薬及び向精神薬取締法」、あへん(けし、けしがら等)に関する「あへん法」などがあります。今回は、ニュースでよく見る「覚せい剤取締法」と比較しながら「大麻取締法」の詳細について見てみたいと思います。

覚せい剤については、輸入・輸出・製造した場合は1年以上の有期懲役(41条1項。営利目的の場合は、無期又は3年以上の懲役、1,000万円以下の罰金が併科される場合もあります)、譲渡・譲受・使用は10年以下の懲役(営利の場合は1年以上の有期懲役、500万円以下の罰金が併科される場合もあります)に処されるおそれがあります。また覚せい剤の原料を輸入等した場合についても処罰の規定があります。

大麻については、栽培・輸入・輸出をした場合は7年以下の懲役(営利の場合は10年以下の懲役、300万円以下の罰金が併科される場合もあります)、譲渡・譲受・所持をした場合は5年以下の懲役(営利の場合は7年以下の懲役、200万円以下の罰金が併科される場合もあります)に処されるおそれがあります。覚せい剤よりはやや軽い刑罰が定められています。

大麻取締法では、「所持」は罰せられますが、実は、「使用自体では罰せられません。なぜなら「使用」を禁止する規定がないからです。この不思議な点については、いくつかの説がありますが、大麻は古来から様々な用途に使用されてきたことから、「使用」については処罰しないとしたのではないかという説が有力です。

もっとも、使用しても大丈夫!ということにはなりません。使用する場合は、「所持」が前提となりますので、所持していたことを理由として処罰される可能性が非常に高いでしょう。

また、平成3年の改正で大麻取締法には国外犯処罰規定が定められました。日本国外で大麻の輸出入や譲渡・譲受・所持等の行為を行った者についても、日本の法律で処罰されます(法24条の8)。海外では大麻が合法となっている国もありますが、そこで日本人が大麻を入手した場合、処罰されるおそれもあるということです。

大麻については、医療大麻であれば使用を許すべきという議論が国内でも出てきており、今回逮捕された元女優も医療大麻の解禁を求めて活動を行っていたそうです。しかし医療大麻については未だ認められているものではありません。

参照:治療のための大麻は許されないか?

定められている処罰も覚せい剤よりは軽いとは言え、決して軽いものではありません。どのような理由であれ、大麻に手を出すということは、絶対にしないようにしましょう。

image by: Shutterstock

 

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