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高城剛氏ロング・インタビュー Part2「今はシステムに殺される時代」

皆さま、お待たせいたしました。大人気のメルマガ「高城未来研究所」の著者で、毎日のように世界中を飛び回る高城剛さんに、めまぐるしく変わる世界情勢の「裏側」について聞いたロングインタビュー第2回目をお届けいたします。「裏で日本を牛耳る人々」や「医療大麻」の知られざる真実について語り大反響を呼んだ第1回に続き、リオの興奮も冷めやらぬ頃から問題が噴出している「オリンピックと報道の自由」について、高城さんが私見たっぷりに語ってくれています。

オリンピックと報道の自由

まぐまぐ:今年の夏といえば、リオ五輪が話題になりましたが、高城さんはご覧になられましたか?

高城:まず、オリンピック開催都市ってIOCの投票前に決まってるって知ったら、驚くだろうなあ。ええ、個人の意見ですよ、あくまでも(笑)。通りすがりの旅人の与太話程度に思ってくださいね。今年の夏は、ニューヨークでまったく手が離せない案件を抱えてまして、競技はほとんど見られませんでしたが、合間を縫って友人のラボで興味深い実験を見ました。巨大モニターに映されるオリンピック放送を数人もの治験者が見て脳波のログをとるラボです。いったい、人々はオリンピックにどれくらい本当は興味があるのか。年々高まる広告費は、見合うのかなど、脳波を見ると視聴率とはまったく違う真実が出てきますからね。

まぐまぐ:今回の閉会式では、次の東京五輪への引き渡し式ということで、アニメやゲームといった日本のコンテンツを全面に押し出したショーが披露されたんですが……。

高城:一ヶ月後どころか数日後には誰も話していませんので、わざわざ話すほどのトピックでもないように思いますが、脳波から見た真実の閉会式話せませんよ(笑)。今日は、無理目にでも持ち上げましょうよ、4年後には東京に来るんだから。えーと、どこの大手芸能プロがいくらで仕切るんでしたっけ?ああ、リオの閉会式の話でしたね。『キャプテン翼』いいじゃないですか。ブラジルで一番有名なサッカー選手って、『キャプテン翼』だと思うんですよ。アレってスペインでも放送してて大人気なんですけど、タイトルが日本とはまるっきり違うんです。『オリベル・イ・ベンジ』とかいうタイトルで、翼君でも何でもないのですが、十年ほど前にスペインの友人と話している時に戸惑って「あの『オリベル・イ・ベンジ』知らないのか?」と何度も聞かれました。『キャプテン翼』って、放映国によってタイトルがまったく違うんです。日本の常識は世界ではその通りではないことのひとつの例で、それを考えさせるショーでしたよね。スペインではあのアニメを見てサッカー選手になったっていう人間がいま活躍しているプレーヤーの中にも多くいます。そういう点では、ブラジルで『オリベル・イ・ベンジ』を出すのって、非常にいいことだと思いました。でも、美しくないですよね。しかも古い。

まぐまぐ:それが日本のコンテンツだっていう認識は、あるんですか?

高城:それは人によるでしょうが、大半は知らないと思います。でも、日本だろうがなんだろうが、世界中の観客が喜ぶことが大切ですよね。アテネ・オリンピックの閉会式は、ギリシャのDJではなくオランダのDJがメインアクトでしたが、日本日本と主張しすぎないことが現代のコミュニケーション上で大切だと思いますね。『キャプテン翼』と『オリベル・イ・ベンジ』は別物で、そのことすら理解していないのに、こちらが知る日本を声高々に全面に出すと、観客は楽しめなくなってしまいますから。ジェームズ・ボンドは、世界の「007」ですが、『キャプテン翼』は残念ながら違うんです。しかも、古い。

まぐまぐ:ありましたね。ロンドン五輪の開会式で……。

高城:その点では、マリオは世界のマリオです。ただ、子どもっぽく見られないようにするのが大事でしょうね。やっぱりゲームやアニメって世界的には子どものモノでその感性が大人もOKっていうのは日本だけなんです。知的ではないことは確かで、下手すると美意識が欠落しているように見えることさえあります。日本だと、幕張とかでイベントがあると大人がいっぱい行きますし、電車の中でも大人がマンガを読んでいますけど、そのような感性は多くの他国では、一部にはいますが主流ではありません。ここは、今後の日本の大きな課題になるでしょうね。増え続ける「幼い老人」のような。

まぐまぐ:ちなみに今回、スーパーマリオに変装した安倍首相も登場して、そういう場に政治家が出てくるのはどうなのか、っていう意見もあったりしたんですけど……。

高城:そんなこと、どうでもいいじゃないですか(笑)。質問が、ポータルサイトやキュレーションサイトのように浅くなってますよ。もっと俯瞰的に物事を見ないと問題の本質が見えません。例えば、そのマリオが生まれた80年代は日本はバブルで、イタリアブームでした。三国同盟以来、日本とイタリアがもっとも近しくなった時期で、「明太子スパゲッティ」のような和製イタリアンメニューが続々生まれて、そのひとつがマリオだったんです。マリオは当時のイタリアブームというか、バブル・グローバリゼーションの産物で、キャプテン翼も80年代ですから、日本はそこで停滞していることが、誰にでも理解できたんじゃないでしょうかね。その後、90年代にやっと登場したピカチュウで止まったように見えますね

まぐまぐ:そういえば『ポケモンGO』って、まだ海外で流行っているんですか。

高城:もう、ほぼ終わったんじゃないでしょうかね。

まぐまぐ:そうですか。

高城:この前いたニューヨークではまったく。一部でやっているんでしょうけど。

まぐまぐ日本ではすごく流行っていると報道されていましたが……

高城:ですので、それをポータルやキュレーションで生きている、とお話ししているわけです。「セントラルパークにすごい人が集まっている」とかって聞いてましたが、僕がセントラルパークにいた限りは全然そんなことはありませんでした。現地の友達ともいろいろ話したけど、その話題は全然挙がらなかったし。

まぐまぐ:アレって、集まってる所だけを切り取って、見せていただけなんですかねぇ。

高城PR会社の仕込みですよね。そういうことをポンピングしている人が、いるっていうことなんじゃないでしょうかね? 時には、僕も皆さんも例外とは言えませんよ。

まぐまぐ:そういうのにやられちゃうんですけどね、日本人って……。

高城無理して持ち上げたものは必ず社会的な反動が起きます。うっかりすると『ポケモンGO』が社会悪のような事件が起きて、さあ、ここでPR会社や広告代理店が再び活躍するところです。流行らして、火消しして、二度美味しい。日本人は「世界中で流行っているから追いつかないと」っていう錯覚にみんな陥って、その後、事件が起きて一斉に規制です。なぜなら日本は「」を求めるから。変な話ですけど。

まぐまぐ:オリンピックのセレモニーなんかもそうですけど、世界からどう見えるかっていうのを日本人って気にしますよね

高城:僕は多くの人に知られているネタを持ち出すより、独創的で美しく強いことは普遍だと思っています。それだけでいい。ただ世界的にはオリンピックに対する興味ってだんだん冷めて来ているんじゃないでしょうか。特に80年代のLA五輪以降、放送料が高くなっちゃって、あまりにもスポンサードされたビジネスになってしまったこともあって、それでみんな白けてしまったというか。だんだん裏側みたいのが、分かっちゃいましたよね。例えば、投票前に開催都市が決まってるような。ええ、個人の感想です(笑)。

まぐまぐ:たしかに、たった2週間のイベントなのに、お金が掛かりすぎですよね。

高城:僕はお金をかけることが、悪いことだとは思いません。例えば、ランドマークを作るのに、ケチって安くさいものを作っても失敗します。むしろ、お金をかけたほうが元が取れるはずです。でも、現在の2020年東京オリンピックの現状を見る限り、無駄金が多くランドマークもできない様子です。これが大問題。コスト意識、美意識、マーケット感覚など、欠落しているものが多いですよね。

まぐまぐ:ああいうすり替えっていうのは、どこで起こるんですかね。

高城:日本は変化することを許しませんので、決まったらやりたい放題なんですよ。政治を見れば、公約なんか守らないですよね。決まったら密室でやりたい放題です。だから、決める前の根回しが大事ですよね。内緒のね。

まぐまぐ:確かに。

高城:本来なら、そのような内緒の根回しや談合、そして決まった後の密室劇を追求するのはマスコミの仕事なのでしょうが、ほとんど機能していないどころか、むしろそちら側に加担してますよね。報道の自由度の世界ランキングが72位ってかなり問題です。このランキングの基準を問う声もあるでしょうが、2000年代初頭はトップ10に食い込むようなこともあったんです。それが、いままで日本語でわからなかったことが原発事故がきっかけで世界に露呈してしまって、ここまで落ちている現実は考える必要があるでしょうね。実際、記者クラブをはじめ情報談合してますからね。ですので、なにか決まったら、ひっくり返せないようにマスコミさえ押さえておけば、やりたい放題ですよね。最近だと、トルコもそんな感じです。マスコミを押さえちゃって。

まぐまぐ:トルコは、やっぱりそうですか。

高城:エルドアンが批判的なマスコミを全部潰しちゃってね。日本も似てきていて、NHKも完全に政府広報部になりつつあるので、あれほどNHKのOBが怒ってるんでしょうね。中立は難しいし、個人的には中立ではなく、各局の色がもっと出て多様化したほうがいいと思いますが、NHKのOBが経営委員会に会長の罷免を求めるのは、かなり問題ですね。

まぐまぐ:やっぱり、そうなんですか。

高城:アメリカだと保守系のチャンネルとリベラル系のチャンネルと、大きく2つに分かれてて一応拮抗するようになっていますが、過去の戦争を鑑み、抑止力としてリベラルな報道が強いのが一般的です。イラク戦争も保守系報道の煽りで突入し、それが一部の人たちの思惑だったことがバレちゃって、だから報道はリベラル寄りになりますよね。日本はそうなっていません。何度も言いますが、「世界の報道の自由度ランキング年々落ちていることが問題です。現在、日本は70位台ぐらいですが、どこまで落ちるか。

まぐまぐ:そんなに低いんですか。

高城イタリアと日本が断トツに低いんです。それって、要するに裏社会が存在するっていうことなんですよ。米国財務省が日本の反社会組織のトップを名指しで経済制裁対象にすると発表しても、それを日本で報道するテレビも新聞もほとんどない。むしろ、マスメディアが反社会組織を守っているように見えることさえあるし、事実、そのようなこともあるのでしょう。透明性が低くなり多様性がなくなると国家が発展しなくなるのは、人類史をみれば明らかですよね。

まぐまぐ:メルマガでも、日本とイタリアはよく似ているっておっしゃっていますよね。

高城とても似ていると思いますね。どっちも1000年、2000年という歴史があって、海に囲まれているという。イタリアも上を閉じちゃえば、実質上は島で、閉鎖的ですよね。

まぐまぐ:確かにそうですね。

高城:それでいて、両方とも第2次世界大戦の敗戦国ですよね。両国とも、もともと世界情勢に疎いとも、一部の官僚支配の国家だとも言えます。敗戦した後は、イタリアのほうが先に工業化が進みました。自動車産業とかオリベッティみたいな会社が出てきて。その後、日本もキャッチアップして工業化が進むわけですよね。イタリアはその次に食とかに行ったところも、日本と非常に似ていますよね。

政治の動きにしても、イタリアは長年独裁状態だった与党に対して、野党連合みたいなのが存在してたんだけど、なかなか政権交代ができないから、共産党が解党します。それでやっと野党連合が与党を倒したんですけど、結局それでも駄目だったから、政治家じゃない人たちが内閣をつくって国を運営するようになって、それでも難しいっていうのが現状で。国民がこっそり他国へと避難してますね。

まぐまぐ:八方ふさがりって感じですね。

高城社会って平和じゃ変わらないんです。簡単に言ったら、よほどの時じゃないと、裏社会や国の暗部をきれいにできないってことなんですよ。日本もそうじゃないですか。福島第一原発の除染の現場から東京オリンピックも、なんであんなに予算高くなるのって言ったら、色んな人たちにお金が流れているからですよね。8次孫請けって、他国になかなか説明できない不思議なものですよね。

まぐまぐ都議会のドンとか……。

高城:そのあたりは、本丸ではないように思いますし、組織や社会システムが制度疲労してるんでしょう。だから、特定の人物がいなくなったからっていって、国立競技場の予算が3000億から1000億になったりはしないですよ。いいとこ一割引きの2700億。もしくは、会計上でごまかして、つけかえているだけ。ザハの案がなくなって、新しい案になったけど、あれってファサード変えただけで、中は一緒ですよね。だって、もう決まって資材もあるから。……もしかしたら、メルマガに書いたかもしれないけど、初めからあれは実質的に建築家は決まっていたわけで。

まぐまぐ:そうなんですか。

高城根回しの段階で9割決まっているんです。議論が大切ではなく、事前に話を通すようなことが大切なんです。だから、日本の変化バッファーは1割程度しかなくて、それを「選択」や「自由」、「公平」と呼んでいます。100%じゃなく、99%でも1%の自由があれば、決定ではありません。決定的なだけ。その後、よっぽどの問題が起きない限り、すべては藪の中ですよね。組織の透明性を担保する国際基準のISO26000など別の宇宙にある話ですね。ルールは、「を乱さないこと。人権無視だろうが、誰かが死のうが、「は絶対なんです。いまも昔もお家が大事で自己犠牲の精神が美徳とされていますからね。当面、あらゆる悲劇は続くでしょう。でも、米国でさえ追いつけないほど世界が大きく変わったので、「和」は、中長期的には国益に反します。いまは、個々が自己犠牲の精神が美徳とされ、お家第一と言われる社会の中で、うまく生き抜く力や身を守る力を本当に養わなければシステムに殺される時代になったと理解する必要があります。だから、僕は常に「通りすがりの旅人の与太話ですよ!」と、前置きするような必要があるんでしょうね。その上、あえて間違ったことを少し混ぜて話しておくと、「あいつの話は信用ならない」などという、少しダメだと全部ダメと考える人もいてくれるので、助かります。この時代のコミュニケーションのお作法は、難しいですよね。読み手が必要箇所を抽出して考える必要もあるし、信用毀損が時には前に進むこともあるから。誰もが僕の話を聞いて、「その通りだと言い始めたら僕は一刻も早く遠くに逃げないといけませんね(笑)システムの犠牲になる前に


……と、大いに盛り上がるインタビューはあと1回だけ続きます、近日公開の第三弾をお楽しみに。ちなみに11月中、高城さんのメルマガに新規でご登録されると、MAG2 NEWSに掲載する全3回のインタビューの2倍近くのボリュームとなる「インタビュー完全版」を読むことができます。メルマガは初月無料ですので、この機会にぜひご登録ください。登録はコチラから。さて、そんな高城剛さんの単独トークライブが来る12月2日に両国国技館で開催されます。2015年に渋谷公会堂で開催された「読者大感謝祭」に引き続き、 2016年は作家史上最大の1万人規模の「大忘年会」。経済や社会、医療や国家まで、普段表立って語ることができない話を、高城さんがこの大忘年会で読者の皆様に直接語ります。すでにメルマガ読者先行予約分のチケットは完売していますが、今回この記事をお読みいただいているMAG2 NEWS読者100名様を、このライブに特別ご招待いたします。ふるってご応募ください。

【応募方法】
メールでご応募を受け付けます。
メール本文に、以下の1~2をご記入ください

1、氏名
2、ご招待状送付先メールアドレス

メール件名は、「まぐまぐ招待枠」としてください。

以上をご記入のうえ、応募専用メールアドレス宛にご送信ください。
応募アドレス: ura@publabo.co.jp
※ご応募〆切:11月15日(火)
※厳正なる抽選のうえ、当選者にのみご連絡いたします。

読者感謝大忘年会 高城剛単独トークライブ  “裏”があってもいいじゃないか

開催日: 2016年12月2日(金) 

時間: OPEN 18:00 / START 19:00

会場: 両国国技館(JR両国駅:徒歩1分)

主催: 高城剛事務所、パブラボ

【お問い合わせ】
高城剛トークライブ実行委員会
電話: 03-5298-2280(パブラボ)
メール: ura-info@publabo.co.jp

 

メルマガ 『高城未来研究所「Future Report」』

著者:高城 剛
1964年生まれ。現在、コミュニケーション戦略と次世代テクノロジーを専門に、創造産業全般にわたって活躍。毎週2通に渡るメルマガは、注目ガジェットや海外移住のヒント、マクロビの始め方や読者の質問に懇切丁寧に答えるQ&Aコーナーなど「今知りたいこと」を網羅する。
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