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海外でも驚異の利益率。世界はニッポンの「MUJI」に恋してる

順調に業績を伸ばす「無印良品」ですが、海外事業においてもその勢いはとどまることはなく、東アジア地域を中心に着々と成長を続けているようです。無料メルマガ『店舗経営者の繁盛店講座|小売業・飲食店・サービス業』の著者で店舗経営コンサルタントの佐藤昌司さんは、その理由のひとつに「MUJI passport」というスマホアプリがあると断言。一体このアプリには消費者を引きつける何があるのでしょうか?

無印良品が好調。営業利益は東アジア地域が日本国内に匹敵

佐藤昌司です。「無印良品を運営する良品計画が好調です。11月の全社売上高(海外供給除く)は前年同月比12.4%増となっています。10月は9.8%増、9月は10.2%増、3~8月は9.0%増で、2016年2月期では全ての月で増加しています。

良品計画の16年3~8月期連結決算は、売上高は9.7%増の1,617億円、本業のもうけを示す営業利益は22.9%増の197億円と大幅な増収増益です。

日本国内の無印良品が好調ですが、海外の無印良品も好調です。海外ではMUJIブランドで展開しています。

16年3~8月期の日本国内事業では、衣服・雑貨では「オーガニックコットン」「フレンチリネン」といった素材にフォーカスした商品が好調に推移しました。秋冬では「首のチクチクをおさえた・洗えるタートルネック」シリーズが好評でした。同商品は09年に発売され、商品名のとおり、ネック部分に着心地の良い素材を使用し、洗濯機で洗える仕様になっています。

近年は「着心地の良さを前面に打ち出した衣服が人気です。他社でいえば、千趣会が運営する通信販売のベルメゾンのHotcott(ホットコット)」が好調です。着心地の良さを追求したインナー商品群で、11年の販売以降、シリーズ累計で547万枚を販売する大ヒット商品となっています。ユニクロのヒートテック」の新モデルでは、希少な美容ケアオイルとして世界中で人気のアルガンオイルを配合し、着心地の良さを進化させています。

無印良品の好調な業績を支えているものの一つとして「MUJI passport」を挙げることができます。日本国内では13年5月に配布を開始し、16年8月末時点で730万ダウンロードを達成したスマートフォンアプリです。

MUJI passportでできることは多岐に渡ります。商品情報を確認できることはもちろん、各店舗の在庫の確認や割引クーポンの獲得が可能です。商品の購入などで「マイルと呼ばれるショッピングポイントを貯めることもできます。店舗の半径600m以内でチェックインボタンを押すことでマイルを貯めることができます。これにより、店舗を訪れる予定がない人にも店舗の存在を意識させることができます。フェイスブックなどのSNSとアプリ上で連動できるため、口コミの拡散があります。

MUJI passportは店舗とネットの融合オムニチャネルの成功事例といえるでしょう。MUJI passport利用者の客単価は約4,000円で、利用しない人の2倍になるといいます。16年8月末時点の日本国内の会員売上高比率(店頭)は44%にもなります。会員証提示比率(店頭)は28%なので、MUJI passport利用者の購買力の高さがわかります。集客と客単価向上を実現しています。

MUJI passportは中国、台湾、香港、韓国でも展開しています。中国での利用が伸びていて、16年8月末時点の中国でのダウンロード数は295万にもなっています。会員売上高比率(店頭)は33%と高い数値です。

海外事業の業績は好調です。特に中国を筆頭とした東アジア地域が好調で、16年3~8月期の売上高は10.7%増の432億円です。日本国内の売上高は1,057億円なので、半分近くにまで成長しています。16年2月期の東アジア地域の売上高は47.1%増となる830億円です。中国だけでみると、同期の売上高は84.5%増の230億円と急成長しているのがわかります。中国の店舗数は、17年2月期では43店舗増となる203店舗を計画しており、出店攻勢を強めています。

また、驚異的なのが営業利益率の高さです。16年2月期の日本国内の営業利益率は8.6%ですが、東アジア地域は20.7%にもなります。東アジア地域が稼ぎ頭となっています。営業利益の額では、東アジア地域が日本国内を上回りました。

中国では日本とは異なり、ステーショナリーグッズ(文房具)が売れます。高機能、高品質、多様なデザイン、低価格といったことが評価されています。また、衣服・雑貨の構成比が高いのも特徴です。ファッションブランドとしての認知が強く、ユニクロやZARA、H&Mといったブランドと同様のブランドポジショニングです。出店はファッションゾーンが基本です。

無印良品の海外展開は91年から始まりました。海外第1号店はロンドンで、リバティ百貨店と共同出資で「MUJI West Soho」を出店しました。衣服や文房具をはじめ、味噌や醤油なども販売しました。その後、ヨーロッパとアジアで出店を広げていきます。アメリカには07年にニューヨークに1号店「MUJI SOHO」を出店しました。フォークやナイフ、マットレスなど小型の高性能製品が好まれました。

海外展開で注視したのが投資回収性とブランドの維持です。投資回収性では特に家賃の売上高比率を重視し、10%以下になるような物件に入居することを旨としました。規模の拡大を目指すことよりも収益性を重視し、1店舗ずつ黒字化していくことでブランド認知を高める戦略です。

ブランドの維持では商品や店舗設計を全世界で統一して推進していきました。当初は、海外事業部が独自で商品開発や店舗設計を行っていたため、無印良品らしくない商品や店舗が次々と生まれていきました。チープなものが溢れブランドの毀損が生じていたのです。そこで、日本本社が世界で統一してブランド管理を推し進めていくようにしたのです。

無印良品の躍進の原動力は「シンプルで使い勝手が良いというコンセプトが消費者に受け入れられていることにあります。良品計画は消費者と共に無印良品を創り上げていきました。消費者起点のマーケティング戦略を推進しています。

良品計画は消費者起点で商品開発を行うために、01年に「モノづくりコミュニティー」をサイト上に開設しました。09年に「くらしの良品研究所」へリニューアルしています。インターネット上で消費者とコミュニケーションを図り、消費者と協働で商品やサービスを開発する試みです。消費者が欲しいと思うものを開発していきました。

例えば、消費者の「家をつくってほしい」という声から、03年から「家」をつくることを開始しました。同年にモデルルームを発表し、翌04年に「木の家」の販売を開始しています。もちろん、家だけでなく衣服や雑貨など幅広い商品を消費者と共に開発していきました。

消費者起点の商品開発は、海外の無印良品ではまだまだのようです。しかし、無印良品の世界観を壊さずに、世界中から集めた消費者の声を取り入れた商品を開発することで、世界市場でさらなる成長が望めるでしょう。良品計画の今後の世界戦略に注目が集まりそうです。

image by: TungCheung / Shutterstock.com

 

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著者/佐藤昌司
東京MXテレビ『バラいろダンディ』に出演、東洋経済オンライン『マクドナルドができていない「基本中の基本」』を寄稿、テレビ東京『たけしのニッポンのミカタ!スペシャル「並ぶ場所にはワケがある!行列からニッポンが見えるSP」』を監修した、店舗経営コンサルタント・佐藤昌司が発行するメルマガです。店舗経営や商売、ビジネスなどに役立つ情報を配信しています。
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