手紙やメールの「表現力」が豊かだと、教養があると思われたり、上品だと思われたり、とにかくいいことずくめですよね。今回の無料メルマガ『1日1粒!「幸せのタネ」』では、いつもの文章をワンランクアップさせるための、ちょっとしたコツが紹介されています。…と言っても、文法が云々というような難しいお話ではありません。この時期ならでは、年末の慌ただしさを表現する時によく使われる言葉を見ながら、楽しく学んでいきましょう。
年の瀬も押し…迫る? 詰まる?
「いよいよ年末」というときに
- 年の瀬も押し迫ってまいりました
- 年の瀬も押し詰まってまいりました
みなさんはどちらを使われますか? あらためて言われると、「ん???」となるかもしれません。
『明鏡国語辞典』(第二版)を弾いてみますと
- 押し迫る:まぢかに迫る
(用例)年の瀬が押し迫る - 押し詰まる:期日が差し迫る。特に、年の暮れがまぢかに迫る
(用例)今年もいよいよ押し詰まってきた
とありました。どちらも同じように使えるのですが、微妙なニュアンスの違いがありそうです。「迫る」と「詰まる」の違いを考えてみるといいでしょう。
「迫る」は「すぐ近くまで押し寄せる」というのが基本的な意味で、「時間的な隔たりが小さくなる」という意味でも使えます(「刻限が迫る」「締め切りが迫る」など)。
「詰まる」は「すき間なく物が入る」というのが基本的な意味。「あいた時間がないくらいに、するべきことがたくさんある」という意味でも使いますね。「今日は一日、詰まっている」と。
これを見ると、より暮れに近づいて、慌ただしい感じがするのが「押し詰まる」の方です。用例でも「いよいよ」という言葉が入っていますね。
母語話者はすごいな…と思うのは、こうした微妙なニュアンスを感じて、自然と使い分けていることです。
今回取り上げた「押し迫る」も「押し詰まる」も、「押す」という動詞に「迫る」や「詰まる」という別の動詞がくっついたものです。こういうのを「複合動詞」と言いますが、二つの動詞がくっつくことで、意味やイメージが広がります。
こうした複合動詞の使い分けに少し気を配ることで、文章表現がより正確に、より細やかになって、自分の言いたいことが相手にちゃんと伝わるようになります。
身の回りの複合動詞、ちょっと見渡してみませんか?
※「見渡す」も、「見る」だけじゃなくて「渡す」で、「ぐるっと端から端まであたり一帯全部を」というイメージが付いていますね。
image by: Shutterstock
『1日1粒! 「幸せのタネ」』
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