【書評】護憲派が罹患する「9条至上主義症候群」という不治の病

 

改憲派の、明文改正により結着をつけようという立場は明快だ。護憲派は九条に手をつけさせないという思いから、首相の衆議院解散の権限や、ねじれ国会の国政停滞をはじめ、憲法のどんな不都合にも目を瞑ってきた。そして「疑問の余地のない条文に改めることで、九条問題に結着をつけよう」という運動がなかった。「自衛隊や日米安保が違憲というなら、それが明確になるような改正を提起すればいいのですが、なぜしないのでしょうか? そういう運動があれば、果てしない『攻防』ではなく、二つの改正案のいずれとするかということで、最終的な結着がつくことになっていたのではないでしょうか」

憲法改正なくしては解決の困難な問題があるのに、護憲勢力が「不都合な真実」を見て見ぬふりをしている現状を、著者は「九条至上主義症候群」と名付けた。九条に手をつけさせないために、他の点についても憲法論議はすべて拒否するというビョーキのことだ。九条の明文改正は、九条二項を削除するだけでいい。合意の欠ける点、困難な点については、優先順位を下げる姿勢が不可欠である。前文にこだわる改憲論者も少なくないが、あの愚かな前文をさわることで議論百出、収拾がつかなくなるから、法律上の重要性で本文に劣る前文にエネルギーを消耗してはならない。高校生諸君、これが憲法九条問題の真実だ。

編集長 柴田忠男

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