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65歳はまだ若い。高齢者の定義を見直したら日本人は損か、得か

労働問題に関連する様々な話題を、分かりやすい会話形式で解説してくださる『新米社労士ドタバタ日記 奮闘編』、今回考察するのは「高齢者の定義」。現在、65歳以上が高齢者とされていますが、このご時世、65歳といえばまだ若々しく、仕事を続けている人も数多く存在します。これを受け、一部ではその定義を見直そうという声もあがっていますが、メルマガでは「弊害が起こりうる可能性も否めない」としています。

高齢者の定義

高齢者の定義を見直すことで国民の意識が変わればより多くの人が社会の担い手に回るようになる、65歳以上の人も就労やボランティアに参加できる新たな枠組みを創設するなど、国はいろいろなことを検討している。医療の進歩、生活環境の改善等から平均寿命が大きく増えている。

上記のような理由もあって、平成29年1月5日、高齢者の定義と区分に関する、日本老年学会・日本老年医学会 高齢者に関する定義検討ワーキンググループからの提言(概要)があった。

新米 「所長、そういえば、この間、高齢者の年齢が変わるかも? ってニュース見たんですが、あれ、どうなんですか?」

所長 「あぁ、高齢者の定義のことだね。あれは、私もギョッとしたよ。現在は65歳以上が高齢者とされているが、それを75歳以上とするという提言だね」

新米 「そうです。それのことです」

所長 「日本もそうなんだけど、他のほとんどの国もいま、高齢者は暦年齢65歳以上と定義されているよね。あれは、1956年に国際連合の報告書『人口高齢化とその経済的・社会的意味』で高齢化となる基準を65歳以上の人口が総人口の7%を越した社会とするとしたことから、この報告書がもとになって世界的に65歳以上を高齢者とすることになったと考えられているそうだ」

新米 「国連から生まれたんですね」

所長 「その頃、ちょうど日本の平均寿命が男性63.59歳、女性67.54歳のときだったそうだ。それが、今はどうだい?」

新米 「平均年齢って、女性はずっと前から80歳過ぎてますよね? 男性は80歳手前でしたっけ?」

所長 「男性は平成25年に80歳を過ぎたよ。80.79歳だ。 女性は87.05歳にまでいってるね」

新米 「…となると、高齢者というのは80歳??」

所長 「ホントだね。今回の提言は75歳だけど、80歳でもいいくらいだね」

新米 「ってなると、65歳ってホントにまだまだ若いですよね」

所長 「そうだね。最近は、個人差はあるけど、元気な高齢者は増えているね。65歳という定義付けが医学的・生物学的に根拠はないそうなんだ」

新米 「要は、高齢者の定義が現状に合わなくなってきているってことですね?」

所長 「そういうことだ。高齢者、特に前期高齢者の人々はまだまだ若くて活動的な人が多い

新米 「だから、高齢者扱いをすることに躊躇したり、されたり…違和感を感じるようになってきてますぅ…」

所長 「そういうことの検証も含めて日本老年学会、日本老年医学会では、数年前から高齢者の定義を再検討する合同ワーキンググループを立ち上げて、いろいろ議論してきたそうだよ」

新米 「どんなことを検討してきたんですか?」

所長 「たとえば、高齢者の心身の健康に関する種々のデータ検討では、10~20 年前と比較して、加齢に伴う身体的機能変化の出現が5~10年遅くなってきていて、『若返り現象がみられているそうだ」

新米 「その学会では、65歳の線引きについては、どう考えているんですか?」

所長 「このワーキンググループでは、65~74歳:准高齢者 准高齢期(pre-old)、75~89歳高齢者 高齢期old)、90歳~:超高齢者 超高齢期(oldest-old, super-old)、という定義を提案しているそうだ」

新米 「ふーーん。そういう分け方なんですね。超高齢者は、90歳以上ですか」

所長 「学会では、高齢者の定義と区分を再検討することの意義を、『従来の定義による高齢者を、社会の支え手でありモチベーションを持った存在と捉えなおすこと』『迫りつつある超高齢社会を明るく活力あるものにすること』と言っているね」

新米 「アベノミクスの1億総活躍社会っていうのも関係あるんですよね」

所長 「この意義からもそれが見えているね。実際、内閣府が60歳以上の男女を対象にした調査でも、自分が高齢者であると感じる人は、65歳~69歳では24.4%70歳~74歳でも47.3%。それ以外は感じていないってことだもんな。『65歳以上は高齢者である』と回答した人も29.1%しかいなかったそうだ」

新米 「でも、高齢者の年齢引き上げとなると、年金問題なども関わってきますよね」

所長 「そうだね。報道でも、社会保障が改悪されるのではないかと警戒する声が多数上がったと言っていたね」

新米 「こんなときだけ高齢者を元気と持ち上げて、年金支給をいずれ75歳に繰り下げるんだろとかそういうことですね」

所長 「そう言うことだね」

新米 「そう言えば、この間テレビ番組で、へぇ~って思うこと言ってました」

所長 「どんなことだい?」

新米 「年金ができた頃は、平均寿命がもっと低くって『年金って言うのは、間違って長生きしちゃった人のための生活援助だった』ってことです」

所長 「ほー、そう言う表現だったんだね」

新米 「だから、今よく『年金が元が取れないとか、取れるとか保険料と比較して損だとか得だとか、そう言う考え方自体がおかしい』とも言ってました」

所長 「うーーん、確かに損も得もない、間違って長生きした人のための保険だって考えると、年金に対する考え方がゴロッと変わりそうだね」

新米 「原点に帰ると違うものが見えそうですね」

所長 「お、なかなか良いことを言うじゃないか」

新米 「損も得もないというためには、保険料は高すぎますけどね」

所長 「社会保険料は、税金より高い税金だなんて言われてもいるからね」

新米 「そうですよね~」

所長 「年金以外にも健康保険やいろんなことにも影響してきそうだね」

新米 「年金の支給開始年齢や健康保険の前期と後期高齢制度の区分や医療費自己負担率なんかも変わるんでしょうかね」

image by: Shutterstock.com

 

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【著者】 イケダ労務管理事務所 【発行周期】 週刊

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