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黒船、再び襲来。トランプ政治が推し進める「米国の日本化」革命

メキシコとの国境に「トランプの壁」を建てると宣言するなど、強硬な姿勢で連日マスコミを賑わせている、米ドナルド・トランプ大統領。一貫して「アメリカ第一主義」を掲げていますが、その真の狙いは何なのでしょうか? メルマガ『国際戦略コラム有料版』の著者・津田慶治さんは「トランプは、米国を日本のような国家にしたいのだ」と持論を展開。さらに、トランプ革命は日本にとって「黒船」であり、それに対抗して日本がとるべき国家戦略は何かを分析しています。

トランプ政治革命は黒船

トランプ政権の政治は、米国の革命であり、そして米国から日本への黒船でもある。それを考察したい。

0.トランプ氏の思想は何か?

トランプ氏は、米国を日本のような国家にしたいのである。日本は自国民を守るために、犯罪が多くなるとして、多くの難民も移民も受け入れないで来たし、自国製造業を守るために、日米貿易摩擦でも結局のところ、米国の自動車を受け入れていない。

自国産業を米国からは守ったが、米国からの要求で日本での製造から、台湾や韓国、中国、今はベトナムなどに日本企業が進出して、それぞれの国で製造した製品を米国や日本に輸出したことで、アジアは日本の技術移転で発展したのである。

日本の製造業を守るために、日本の官僚も企業人も一丸になって、やったのは、自国民の富を守ろうとしたことである。企業は、自社の社員を守るために、海外で製造をしたのである。これによりコストが減り、価格競争力も手にした。

しかし、この日本企業を見ていた米国企業は脱工業化やコスト削減として海外に移転して、自社の労働者を首にして、コストを下げて企業利益を上げて、資本家と企業経営者だけが豊かになった。米企業には自社の労働者を守るという概念がない。このため、格差が拡大してしまったし、貧困白人層の自殺者が急激に増えてしまった。

その上に、それを一歩進めて、世界から優秀な人を米国に呼び込み、国際化を推し進めて、IT企業が繁栄した。異文化主義や多元性、多様性という考え方で、それが正義であるという考え方に立っている。

そして、これを裏付けるために、多様性がある企業の労働者の収入が高くなることを言っているが、元の白人社員や労働者たちを首にして、その人たちは忘れ去られて、落伍者として扱われた。

しかし、トランプ氏の思想は、自国民というか自民族保護という考え方に立ち戻ることになった。これは日本の考え方である。このため、トランプ氏は、日本と同じようなに頑強に国際化を拒否するのである。守るべき自民族の人たちは、非国際化を賛成するはずである。

日本の考え方としては、政府は日本国民全体を、各企業はそこに勤める社員全員を守るために、マネージする文化である。明らかに米国の企業文化とは大きく違う。それでも、世界第3位の経済大国の位置にある。今のところ、没落はしていない。

日本の考え方を米国に根付かせようとしているのが、商務長官になったウィルバー・ロス氏である。日本とのビジネスや交渉で日本のような国家運営を理想として、日米交流団体の会長にもなったのである。

このロス氏が、対外通商交渉の司令塔になるとトランプ氏も述べている。

トランプ氏が目指しているのは、日本の自民族を優先する国家運営なのである。よって、安倍首相はトランプ氏にとっては戦友であり、同じ考え方の同士なのだ。だからといって、日本の思い通りにはならない。日米の利害対立が待ち構えている。

トランプ政権では、自民族とは白人であり、その白人を優先した国家運営となる。このため、白人至上主義者バノン氏を全体の司令塔にしているのだ。

しかし、今までの正義からすると、とんでもない政権である。猛反対が出て当然である。マスメディアは、もちろん正義の味方であり、トランプ政権を嫌うことになる。

また、国際的なIT企業は、トップ自体がインド系の人たちであり、白人優先思想には猛反対することになる。しかし、H1B(技術者)ビザの審査を厳格化することになり、米国に技術者は入れないことになる。

そして、トランプ大統領の任期は4年であるが、1年で終わるのではないかという掛けも出てきた。ケネディ大統領と同じで暗殺やクーデターの計画も出てくる可能性がある。

1.日本の置かれた状況

米国が日本と同じような自国民優先にシフトするとき、日本は、どういう状況かというと、自国民を守る政治が持続性を失いかけている。1990年から20年以上も年間20兆円もの国債発行で、とうとう国家債務が1000兆円にもなってしまい、持続不可能という状態で、一部の日本人が貧困層になっている。

2020年のプライマリーバランスも危うくなり、国債依存の自国民保護もできなくなり、最後の拠り所をして米プリンストン大学のクリストファー・シムズ教授による「物価水準の財政理論」(FTPL)に頼るという状況である。

しかし、シムズ理論でも、十分な需要のあることを前提としているが、日本の現状は、老齢人口増加と人口減少などで需要不足が起こり、これを解決しないとハイパーインフレになり、国民全体が貧乏になり、国民を守ることとは反対の方向になる。

もう1つが、主要国全てが金融緩和を続けていたら、近隣窮乏化のような議論は出てこないが、米国が出口を迎えて利上げになり、日本やEUだけが金融緩和を続けることで、米国は為替操作と批判して、関税を高めることになり、日本は製造業も守れなくなる。

江戸時代の幕府と同じで、米国の自国優先という黒船が来て、日本の財政事情や自国優先という今までの心地いい考え方では、立ちいかない状態になってしまったのである。

米国が自国優先と日本の考え方にシフトしたとき、日本は逆方向の開国して移民や難民を受け入れ、十分な需要を増やさないといけない事態になっている。

それと、悩ましい問題は、米国から為替操作と言われる日銀の国債買取オペをしないと、国債の金利が急上昇して、円高金利高になり、需要もないのにインフレになり、スタグフレーションと最悪なことになることだ。このように変動相場制の問題が露わになっている。

国民を守る政治に必要ことは、日本にとって良いことの全てを追求しないで、選択をして最悪なことにならないようにすることである。

米国の要求に屈して、円ドル相場を固定化して、日銀の国債買取オペを行うと、一番の問題は金利差があり、円で貯金するよりドルで貯金したほうが得であり、円からドルに皆が替えるので、為替介入を行わないといけないことである。

人民元とドルとの弱いリンクでも、人民元の流出が続きドル売り介入をしたことで、大量の米国債を売り、ドル売り人民元買い介入の原資にしている。ドルが大量に必要になる。

円ドル間も無限の為替介入になる。というように通貨マフィア間では、問題点の大きさに気づくことになるが、トランプ大統領は、大量の米国債を発行して、米国債の金利を上げる方向にある。ということは、日銀が金利ゼロ付近に固定した国債買い取りをすると、一層の円安ドル高になり、トランプ大統領の文句が来ることになる。

日銀は、そろそろテパーリングと言わないで、国債買い取りオペを調節して、金利差を縮めて円ドル為替水準をある範囲に収めるという暗黙の了解を取り付けることである。その水準値と範囲幅を日米通貨担当者が話すことであるように思う。暗黙のドル円リンクである。

2.将来的な方向は

ITやAIなど、今後の方向はグローバリズムであるが、国民軽視で進めると、反対方向に国民が向くということになる。当分、英米の両国は反グローバルに政治が向いていく。日本は徐々にグローバル化していくことで、現時点、日米英の3ケ国は同じ位置にいるような気がする。

米国のIT企業は技術者の入国が難しくなり、米国から他の国に出る決断をすることになる。その時には日本が選択されるような状態を作ることである。特に東京・大阪などは交通機関もあり、商業施設も充実しているし、医療機関も十分であり、来てもらうには最適なようである。経済特区で英語での日常会話をできるような環境を整えることが必要なのであろう。

IT企業は、インド系の人が多く、米国とインドの中間にある日本が最適であり、それに加えて、日本は自由な経済活動も保証されているので、一番居心地が良いはずである。

米国は反グローバルに向かい、日本はグローバル化と逆位相にあることで、日本に多くの外国人雇用ができることが重要なのである。

その雇用に、多くの移民が押し寄せてきて、日本全体の需要規模を増やすことである。需要不足の日本はグローバル化で、需要を作る必要があり、日米は共同市場化して、お互いに利害を調節することである。

さあ、どうなりますか?

参考資料:米国における保護主義とポピュリズム

image by:  Joseph Sohm / Shutterstock, Inc.

 

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【著者】 津田慶治 【月額】 初月無料!月額660円(税込) 【発行周期】 毎月 第1〜4月曜日 発行予定

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