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年金のプロが解説。今度の「最低10年加入」改正で年金が増える人

昨年11月に成立した改正年金機能強化法により、年金保険料を納めた最低の期間がこれまでの25年から10年に短縮されたことは、先日掲載の記事「年金が『最低10年加入』に短縮へ。専門家が分析した衝撃の受給額」でお伝えしたとおりですが、いよいよ今年9月分からその支給が始まります。無料メルマガ『年金アドバイザーが教える!楽しく学ぶ公的年金講座』では、著者のhirokiさんが「10年短縮による加給年金と振替加算で更に年金が増額する」というケースについて、事例を上げつつわかりやすく解説しています。

8月から年金受給資格が10年に短縮して、加給年金や振替加算も付いてくる人の留意点

今話題沸騰中ではありますが、今年8月から10年以上加入期間があれば老齢の年金が貰えるようになります。従来は年金加入期間…というか保険料を納めた期間が、全体で原則として25年以上ないと1円も年金は貰えない構造でした。

保険料納付済期間+保険料免除期間+カラ期間≧25年でなければならなかった。この25年の部分が今年8月1日から10年に短縮され、今まで無年金だった人は9月分から支給されます。

諦めるなかれ。年金を25年納めなくても貰える「カラ期間」とは

現在65歳になっても25年に足りていなくて、今回の10年短縮により無年金者が約64万人救済される事になります。

年金が「最低10年加入」に短縮へ。専門家が分析した衝撃の受給額

まあ、この事は過去記事や、ネットニュースなどにも自分の記事が拡散してるので、今回は10年短縮による加給年金と振替加算で更に年金増額という場合で話をしたいと思います(^^;;

というわけで事例。

1.昭和28年5月12日生まれの男性今は63歳

年金記録は20歳から60歳までの間に厚生年金21年と国民年金1年のみ。このまま年金記録が変わらないとして、とりあえず老齢厚生年金額は50万円とします。老齢基礎年金は77万9,300円÷480ヶ月×264ヶ月(22年分)=42万8,615円

65歳以降の年金総額は92万8,615円月額7万7,384円)。

また、昭和31年12月5日生まれ(今60歳の妻あり。妻の年金記録はカラ期間3年(海外在住で国民年金には加入しなかった)とサラリーマンである夫の配偶者としての国民年金加入期間(第3号被保険者)9年のみ。妻はこのままだったら一生無年金者だったが、8月から10年に短縮されるから65歳になると9年分の老齢基礎年金が支給される。カラ期間は期間に算入するだけで、年金額には反映しない。

妻の老齢基礎年金は77万9,300円÷480ヶ月×108ヶ月=17万5,343円月額1万4,611円

また、この男性が本来の年金支給開始年齢である61歳までに全体で25年以上あれば61歳からまず厚生年金(報酬に比例する年金)が支給されていました。

厚生年金支給開始年齢(日本年金機構)

参考
もしこの男性に22年以上の厚生年金期間、または厚生年金期間と共済組合期間合わせて22年以上あれば年金の受給資格を特例として獲得していた。

25年無くても特例的に年金貰える人達(被用者年金短縮特例参考記事)

しかし、25年無いから年金は支払われていませんでしたが、今年8月から10年に短縮されるから9月分から厚生年金が発生する。

平成29年8月時点でこの人は64歳4ヶ月。ここで老齢厚生年金50万円月額4万1,666円)が発生し、まず9月分の1ヶ月分(4万1,666円)が10月15日に振り込み。その後は偶数月に4万1,666円×2ヶ月=8万3,332円

そして、平成30年5月に65歳を迎えるとその翌月分から老齢基礎年金42万8,615円年額が発生する。

しかし、この男性は厚生年金期間が20年以上あり、65歳未満の生計維持している妻がいるので更に配偶者加給年金39万100円(平成28年度価格)が老齢厚生年金に加算されるようにもなる為に年金額が増加。

年金でいう生計維持って何?(参考記事)

よって、老齢厚生年金50万円+配偶者加給年金39万100円+老齢基礎年金42万8,615円=131万8,715円月額10万9,892円)。

年金は偶数月に前2ヶ月分支払うから、偶数月支払額は10万9,892円×2ヶ月=21万9,784円

そして、妻が65歳になる平成33年12月の翌月から、夫の配偶者加給年金39万100円月額3万2,508円は消滅する。だから、夫の年金額が平成34年2月支払い年金額から変化してくる。年金額が変わる2月の7日~10日あたりに支給額変更通知書と振込通知書が送られてくる。

2月15日支払いは12月分(月額10万9,892円)と1月分(加給年金3万2,508円マイナスの月額7万7,384円)だから、合計額は18万7,276円。で、4月15日以降の偶数月支払額は月額7万7,384円×2ヶ月=15万4,768円となる。

また、妻にはこの2月時(年金の処理上、初回支払いはほぼ3月15日支払いになります)に1月分の初回支払いが開始されるので、妻には老齢基礎年金17万5,343円月額1万4,611円)が支給開始となると同時に、振替加算4万4,900円(平成28年度価格)が加算されて年金年額は22万243円月額1万8,353円)になります。

加給年金額と振替加算額(日本年金機構)

妻は偶数月に1万8,353円×2ヶ月=3万6,706円の支給

というわけで、平成29年8月以降は25年以上から10年以上に短縮されて、仮に厚生年金期間や共済組合期間、もしくは厚生年金期間と共済組合期間合わせて20年以上あると配偶者加給年金や振替加算の年金も付いてくる人もいるのでご留意ください。

なお、10年短縮年金により新たに年金受給者となる人には、2月下旬から7月にかけて生年月日順で5回に分けて年金請求書が発送されます。

10年年金請求書送付スケジュール等(厚生労働省)

年金請求書が届いたら、年金請求は8月前に事前請求して構いません。なお、戸籍謄本や住民票などの公的書類は3月1日以降で年金請求日の6ヶ月以内のものが有効となります。

ちなみに今回の記事のように配偶者加給年金や振替加算の対象になるような人は、年金請求時に戸籍謄本、世帯全員の住民票、所得証明書を提出してください(マイナンバーが年金にも適用されるようにはなりましたがまだこれら3つの書類は今のところ提出が必要。ただし、戸籍謄本はマイナンバー対象外)。

戸籍謄本、世帯全員の住民票、所得証明書を出すと、7月以降から「生計維持関係現況届の提出のお願い」と合わせて、「生計維持関係現況届」というのが送付されてくるので現況届の提出の上で加給年金や振替加算の加算が開始になります。

なお、8月1日より後に65歳になって加給年金が発生する人は65歳誕生月の初旬あたりに生計維持申立書が送付されてくるので、誕生月末までに提出が必要(これは従来と変わらず)。

そして、加給年金を貰い続ける場合は毎年誕生月に送られてくる生計維持確認届というハガキタイプのを出す必要があります。生計維持が続いているか確認するため。これを出さないと加給年金が一旦差し止められてしまうので注意

振替加算については、一旦加算されれば余程のことがない限り一生付くものなので一度加算されたら原則として何も手続きは要りません。

image by: Shutterstock.com

 

年金アドバイザーhirokiこの著者の記事一覧

佐賀県出身。1979年生まれ。佐賀大学経済学部卒業。民間企業に勤務しながら、2009年社会保険労務士試験合格。
その翌年に民間企業を退職してから年金相談の現場にて年金相談員を経て統括者を務め、相談員の指導教育に携わってきました。
年金は国民全員に直結するテーマにもかかわらず、とても難解でわかりにくい制度のためその内容や仕組みを一般の方々が学ぶ機会や知る機会がなかなかありません。
私のメルマガの場合、よく事例や数字を多用します。
なぜなら年金の用語は非常に難しく、用語や条文を並べ立ててもイメージが掴みづらいからです。
このメルマガを読んでいれば年金制度の全体の流れが掴めると同時に、事例による年金計算や考え方、年金の歴史や背景なども盛り込みますので気軽に楽しみながら読んでいただけたらと思います。

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【著者】 年金アドバイザーhiroki 【発行周期】 不定期配信

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