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作品名読み間違いにトランプ批判…前代未聞だらけのアカデミー賞

2月26日夜(日本時間27日)に行われた米アカデミー賞授賞式。作品賞の受賞作を読み上げる際に、誤った映画のタイトルが発表されていまい、会場は一時大混乱に陥ったことは皆さんもご存知の通り。米国在住の作家・ジャーナリストの冷泉彰彦さんは自身のメルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』で、今回のアカデミー賞は「アンチ・トランプ・ショー」としての側面も注目に値すると解説。作品の読み間違えも含め「色々な意味で歴史に残るオスカーだった」と紹介しています。

オスカー授賞式の光景

日本でもかなり報じられていると思いますが、アッケラカンとしたぐらいの「アンチ・トランプ・ショー」として終始していました。とにかく、アンチ・トランプという雰囲気は冒頭から「いきなり」という感じでした。

例えば、司会をしたコメディアンのジミー・キメルが、冒頭の漫談でメリル・ストリープを紹介した際に「これが過大評価されているというメリルです」とやったあたりで、もう全体的な雰囲気は「決まり」となっていたと思います。

言うまでもありませんが、ストリープは、1月の「ゴールデン・グローブ賞」で「セシル・デミル賞」という生涯に渡る貢献の表彰を受けた際に、名指しこそしなかったものの、トランプへの厳しい批判を込めたスピーチをしており、それに対して大統領自身が「過大評価されている女優だ」とツイートしたという経緯があるからです。

その他にも、様々な形でトランプ批判が繰り出されて行き、最終的には作品賞が下馬評の『La La Land』ではなく『Moonlight』に行ったということで、マイノリティ重視、そしてリベラルの側に立つハリウッドということを、宣言した格好になっています。

この発表ですが、ウォーレン・ビーティとフェイ・ダナウェイ(『俺達に明日はない』のコンビ、映画の50周年記念として登場)が、間違った封筒を渡されて「作品賞は『La La Land』」と言ってしまうということで、大混乱に陥っています。

これに対して「違う。作品賞は『ムーンライト』だ」と壇上で叫んでいたのは、ジョーダン・ホロビッツ氏という『La La Land』のプロデューサーでした。このホロビッツ氏には一夜明けて「賞は失ったが、オトコを上げた」という賞賛の声が殺到しています。

一方で、直後の会見で、主演女優賞は取ったものの、作品賞を逸したエマ・ストーンは「自分は『ムーンライト』が大好きなので、エキサイトしてます」と述べていましたが、マイノリティの問題を描いた『Help』が出世作である彼女は、自分のアーチスト・イメージを良く分かっているなという感じでした。

考えてみれば、そうしたストーンやホロビッツの見せた「立派さ」こそが、最も「反トランプ的」だったのかもしれません。いずれにしても、色々な意味で歴史に残るオスカーだったと思います。

image by: Featureflash Photo Agency / Shutterstock.com

 

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東京都生まれ。東京大学文学部卒業、コロンビア大学大学院卒。1993年より米国在住。メールマガジンJMM(村上龍編集長)に「FROM911、USAレポート」を寄稿。米国と日本を行き来する冷泉さんだからこその鋭い記事が人気のメルマガは第1~第4火曜日配信。

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