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【森友学園】8億値引き問題と鴻池氏の関係を各紙はどう報じたか

先日公開した、森友学園問題に関する各紙の報道姿勢をわかりやすくまとめた記事「疑惑の森友学園問題、新聞各紙がどのように報じたかを徹底比較」は大きな反響を呼びました。その後、口利きのなどの関与を疑われた自民党の鴻池議員が会見を開きましたが、森友学園理事長の籠池氏側との言い分が食い違っていることから、騒動は静まる気配がありません。メルマガ『uttiiの電子版ウォッチ』の著者でジャーナリストの内田誠さんは、森友学園騒動で浮上した「政治家事務所の関与」に関する各紙の報じ方を分析・解説しています。

政治家事務所の直截的な関与が浮上した森友学園の問題、各紙はどう報じているか

【ラインナップ】

◆1面トップの見出しから……。

《朝日》…「森友側の要求、次々実現」
《読売》…「北朝鮮籍の男 釈放へ」
《毎日》…「鴻池氏側、国に仲介」
《東京》…「鴻池氏側が仲介」

◆解説面の見出しから……。

《朝日》…「政治家介入の有無 焦点」
《読売》…「国有地取得へ 「政治力」期待」
《毎日》…「「森友」保守系に浸透」
《東京》…「危険行為でなくても処罰」

ハドル

鴻池氏が問題の構図に入ってきて、俄に大きな問題になってきた「森友問題」。引き続き、昨日までに明らかになってきたことを整理する意味合いを含め、取り上げることにしましょう。上記1面トップと解説面の4紙全8項目中、6項目がこの問題です。今日のテーマはいよいよ政治家事務所の直截的な関与が浮上した森友学園の問題各紙はどう報じているか、です。

コンニャクは別の人の手に?

【朝日】は1面トップと2面の解説記事「時時刻刻」、16面社説に39面社会面。見出しから。

(1面)

(2面)

(16面)

(39面)

uttiiの眼

共産党が入手して小池晃議員の国会質問につながった、鴻池祥肇参議院議員事務所の「陳情整理報告書」に基づく1面記事。学園側が望んだ事柄を次々に相談、陳情し、それが一つ一つ実現していく様子が見て取れる。学園側の執拗な要求と、それに国の機関が次々に応えていったこと、そして、それらを仲介した鴻池議員サイドの役割。前夜、鴻池議員自身が会見で説明した内容がいかに不十分なものであったのかハッキリと分かる資料。鴻池事務所は立派に汗をかいていた。

1面には《朝日》が鴻池議員の秘書(神戸の地元事務所の秘書)と森友学園の代理人弁護士に取材した興味深い内容が載っている。

秘書氏は、事務所が行ったのは「口利き」ではなく、「それなりの対応」程度のことと言いたいようだが、これは資料に書かれていることとはかけ離れた「解釈」と言わざるを得ない。また、弁護士は、鴻池氏が「現金」と見なして投げ返したものは商品券だったというが、たとえ商品券だったとしても、いわば現金に準ずる扱いと思われ、賄賂性が減じるとは思えない。さらに重要なのは、政治献金は鴻池氏側から強くお願いされたから2回寄付したのだと弁護士が話していること。これ、カネ(商品券?)を渡そうとしたのが2014年4月で、鴻池氏の発言内容が真実ならば、それ以降は「出入り禁止」にしたはず。政治献金は14年と15年にも10万円ずつ渡っているので、話が食い違う。「出入り禁止」にしていなかったと考えれば辻褄が合うが、そうなると、カネを投げ返した話も怪しくなってくる(秘書氏は、「出入り禁止」にしたとは知らなかったと言っている(2面記事)ので、「出入り禁止」は鴻池氏の“脳内”だけの出来事だったのかもしれない)。いずれにせよ、鴻池氏の説明は、色々なところからあっと言う間に“総崩れ”になるのではないかと思われる。

2面記事の最重要ポイントは、「8億円の値引き実現の経緯が謎であるという指摘。

鴻池事務所と籠池氏の関わりは16年3月で終わっている。財務省にアポを取ってくれという籠池氏のリクエストを事務所側が断ったのが最後とされている。しかし、その後、籠池氏は財務省本省の幹部との面会を実現させ、結局「8億円の値引き」を実現させる。そんなことが可能になったのは、いったい誰の助力があってのことだったのか、ここがになっている。

共産党の小池晃氏は「コンニャクが別の人に渡ったと考えるのが自然。徹底的に追及する」と話しているという。

*カネだと判断して紙包みを投げ返したとする鴻池氏は、前日の会見で、中身は「コンニャクか、天ぷらか、かまぼこか、ういろうか、知らん」とも述べていた。「コンニャク」は流行語になるかもしれない(笑)。

あっせん利得処罰法違反には当たらない?

【読売】は、大阪社会部と神戸総局の記者に、3面の解説記事「スキャナー」を書かせている。他に4面と社会面に関連記事。見出しを抜き出す。

(3面)

(4面)

(37面)

uttiiの眼

3面は解説記事だが、担当は地方記者のみ、4面は一種の国会での話題という位置付け、そして社会面は関西ローカル的な扱い。こういう紙面展開を見せられると、「森友学園問題は、政権中枢とは距離があるテーマなのだ、安倍政権の命脈とは無関係な話題なのだと、しつこく念押しされているような気分になる。それなりに扱いながら小さく見せかけていくという“高等テクニック”。それでも、個々には興味深い内容が含まれているところが面白い。

3面記事。神戸の地元秘書は各紙の主材に応じていて、共産党が示した「陳情整理報告書」は自分が書いたものであると認め、籠池理事長からの接触は15回(《読売》によれば、そのうち電話が14回)あったと話している。

気の早い《読売》は、記事の最後の方で、あっせん利得処罰法に言及。「仲介しただけで違法になるわけではない」と鴻池サイドが安心できるようなことを書いている。そして、《朝日》同様、「最大の焦点は、(ゴミ撤去費用を)差し引いた経緯や妥当性だ」として、野党は「鴻池氏の他にも関与した政治家がいるはずだ」と主張しているとする。

39面は基本的にはローカルな情報という性格付けで、4本の短い記事から成り立っている。籠池理事長は、小学校認可の問題で大阪府議に接触していたこと、鴻池氏を紹介してもらうために兵庫県議に接触したこと、大阪府がまもなく現地調査を行うこと。そして、森友側の代理人である酒井康生弁護士の話として、鴻池氏が突き返したとされる紙包みには商品券3万円分が入っていて、「以前入院した時のお見舞いのつもり」だったと話していると。

しかし、1000円券としてもわずか30枚。これを紙に包んで「コンニャク」と表現するだろうか。それから、既に治った病気の場合、直後なら「快気祝い」があり得るけれど、「以前入院した時の…」というのはちょっとピントがずれている。理事長夫人が「これでお願いします!」と頭を下げて渡そうとしたとされる風景と、ここで言われていることがうまく馴染まない。

教育基本法に故意に抵触すれば学校閉鎖も

【毎日】は1面トップと3面の解説記事「クローズアップ」、5面には記事と社説、社会面にも関連記事。見出しを並べる。

(1面)

(3面)

(5面)

(31面)

uttiiの眼

今日の《毎日》の特徴は、森友学園の右翼的な教育内容とその学園に共鳴する保守派人士との関係にフォーカスしている点。

3面の解説記事「クローズアップ」は、学園側と保守政治家らの強い結びつきを、単に、陳情と口利きという関係ではなく、思想的な共鳴”の次元に掘り下げて説明しようとしている。

鴻池氏は、2008年に学園が運営する塚本幼稚園を訪れた際、「可愛い園児が朗々と教育勅語を暗唱したことに感動したと絶賛安倍総理は、森友学園問題が発覚した後も「私の考え方に非常に共鳴している方」と国会で答弁していた。新設される小学校の名誉校長に就任していた首相夫人、安倍昭恵氏も「園児たちはお行儀が良く…毎朝君が代を歌い、教育勅語を暗唱」などと讃える発言をしている。

その籠池氏は憲法改正を目指す「日本会議大阪支部の運営委員でもあるという。

こうした“共通基盤”のうえで、最終的に「8億円の値引き」がなされたのだとすれば、同じ基盤の上に乗っている政治家の誰かが助力したのではないかという話になる。

学園の右傾化は、創立者森友寛理事長死去後、娘婿の籠池氏が後を継いでから始まったという。教育勅語の暗唱は2000年頃からで、保守派の間で話題になり、著名人が訪れるようになった中に安倍昭恵氏もいたという話。こうした記述はこの間なかったので、新鮮に響く。

野党は幼稚園の運動会で「安倍総理がんばれ」と言わせたのは「教育基本法が禁じる学校での政治的活動」と批判するが、文科相は「大阪府の判断」として距離を置き、また都道府県知事は故意に法令に違反する学校には閉鎖命令を出すことができるという。そして、「戦時下で天皇や国家への奉仕を求め、軍国主義を正当化した教育勅語」について、文科省自身は、「戦前のように我が国唯一の根本理念と教えるのは問題だ」としていると。

この文科省の姿勢には、微妙な“相対主義”が感じられる。戦前の軍国主義への反省から生まれた戦後体制の中で、明らかに国民主権の原理に反する教育勅語については、「我が国唯一の根本理念」として教えるのはもちろん、そもそも正しいものとして教えることが、排除されているべきなのではないか。文科省の“相対主義教育勅語もまた1つの選択可能な理念となし得る余地を残すための方便のように思える。

鴻池事務所は接触25回に及ぶ

【東京】は1面トップに3面の解説的な記事、6面に参院予算委の論戦ポイント。まずは見出しから。

(1面)

(3面)

uttiiの眼

各紙、同じ「陳情記録」を入手して記事にしているわけだが、《東京》は、「鴻池氏の神戸事務所が籠池氏や国側と接触した回数は記録上、2年7カ月に25回」としている。他紙が数え上げたものよりかなり多くなっているのは、もちろん、鴻池事務所と国側との接触をカウントに加えているからだが、その意味は、この事件を鴻池議員の神戸事務所を中心に見るという意味合いがありそうだ。まだ形は見えないが、鴻池事務所の関西エリアでの活動全体を見渡した上で、この森友学園の土地取得に関わる事件を位置付ける観点があり得るのかもしれない。

1面記事に、「鴻池氏は麻生太郎副総理兼財務相の側近で、自民党内の麻生派に所属。麻生政権で官房副長官も務めた」となっていて、わずか4行の中に「麻生」が3回も出てくる。国会の場で麻生氏にこの問題で何かを問い質すタイミングがやってくるのかどうか

3面記事には「陳情報告書」の主な内容がかなりの紙幅を使って列挙されている。

あとがき

以上、いかがでしたでしょうか。

籠池理事長が小学校設置で協力を求めていた府議はおおさか維新の会の府議だったという情報が出てきました。また、安倍昭恵氏が講演で塚本幼稚園を訪れた時には、夫人のサポート役の職員1人が同行していたとの事実が出てきているようです。私的に付いていっただけで、公費は支出していないなどと苦しい言い訳をしているようですが、その「公的な随伴」の実態はいずれ明らかになるでしょう。色々な事実が出てきているなか、なんといっても籠池氏の参考人乃至証人としての喚問が必要ですね。この問題、もう、それなしでは済まされません。

ということで今週はここまで。すっかり森友ウィークになってしまいました。来週はどんなことになるか…。

image by: GOOGLE MAPS (yamane niudou)

 

内田誠この著者の記事一覧

ニュースステーションを皮切りにテレビの世界に入って34年。サンデープロジェクト(テレビ朝日)で数々の取材とリポートに携わり、スーパーニュース・アンカー(関西テレビ)や吉田照美ソコダイジナトコ(文化放送)でコメンテーター、J-WAVEのジャム・ザ・ワールドではナビゲーターを務めた。ネット上のメディア、『デモクラTV』の創立メンバーで、自身が司会を務める「デモくらジオ」(金曜夜8時から10時。「ヴィンテージ・ジャズをアナログ・プレーヤーで聴きながら、リラックスして一週間を振り返る名物プログラム」)は番組開始以来、放送300回を超えた。

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【著者】 内田誠 【月額】 月額330円(税込) 【発行周期】 週1回程度

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