韓国大統領選を日本はどう報じたのか? 新聞各紙の論調を徹底比較

 

いつもの「政権交代」?

【東京】は1面トップに2面の解説記事「核心」、5面の社説、9面外報面の記事。見出しから。

1面

  • 韓国大統領に革新系・文氏
  • 日韓関係 改善厳しく

2面

  • 日米韓 対北連携に溝
  • 韓国大統領に文在寅氏
  • 北は革新政権の「融和」期待
  • 貧しい幼少期■民主化求め学生運動

5面

  • 「核危機」回避が使命だ 韓国大統領に文在寅氏(社説)

9面

  • 中国、対北で変化の可能性
  • 高高度ミサイルに揺さぶり
  • 少数与党で前途は多難
  • 首相人事の国会承認焦点
  • 社会の亀裂修復が課題
  • 開票完了直後に任期開始
  • 就任式の規模 大幅縮小へ

uttiiの眼

外報面にユニークな内容がいくつか見られる。1つは、韓国大統領選の結果が及ぼす影響を、「中国」を主語にして語っていること。
朝鮮に対する姿勢が中国と似通った政権が韓国に誕生するという捉え方になっていて、対北朝鮮制裁で一旦は進むかに見えた米中協力も、例えば王毅外相が「今は交渉再開を真剣に検討すべき時だ」とホンネを見せ、綻びが見えてきていると。そのとき、文政権の誕生は中国が米国の強硬方針にブレーキを掛けるために利用できる存在になる」と意味づけられている。当然、既に配備が始まっているTHAADについても、中国は引き続き配備撤回を求め、文氏も「配備は次期政権が決める」と、「中国に期待を抱かせる発言をしている」と。トランプ政権がTHAADの配備費用について韓国の負担を求め始めていることも絡んでくるという。

もう1点は、記事の下に付けられた、増田未緒記者による解説。まず、今回の選挙結果は「韓国で10年ごとに繰り返されてきた政権交代の風景」として「新鮮さが感じられない」と一刀両断。吃驚させられる。「国民統合」を掲げた文氏は、「積弊清算」を強く訴えていたが、中道の安氏の支持が高まると、保守層を意識して一時的に主張を控え、逆に保守の洪氏が追い上げると、前政権への批判票を固めるため、強い主張を繰り返したという。かなり“柔軟”に姿勢を変えている様子には、私でも若干の不安を感じるが、大丈夫だろうか。選挙戦中の様々な出来事により、それまで安氏を支持していた保守層が北朝鮮への融和策を懸念するようになり、曖昧な安氏に失望、その分が保守候補に流れて洪氏が急浮上したので、文氏も対策を取る必要があったということのようだ。一時、「文氏か安氏か」と言われていたのに、蓋を開けたら安氏が洪氏に抜かれて3位に沈んだことに驚いたのだが、これで理由が分かった。

image by: Sagase48 / Shutterstock.com

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ニュースステーションを皮切りにテレビの世界に入って34年。サンデープロジェクト(テレビ朝日)で数々の取材とリポートに携わり、スーパーニュース・アンカー(関西テレビ)や吉田照美ソコダイジナトコ(文化放送)でコメンテーター、J-WAVEのジャム・ザ・ワールドではナビゲーターを務めた。ネット上のメディア、『デモクラTV』の創立メンバーで、自身が司会を務める「デモくらジオ」(金曜夜8時から10時。「ヴィンテージ・ジャズをアナログ・プレーヤーで聴きながら、リラックスして一週間を振り返る名物プログラム」)は番組開始以来、放送300回を超えた。

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【著者】 内田誠 【月額】 月額330円(税込) 【発行周期】 週1回程度

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