韓国大統領選を日本はどう報じたのか? 新聞各紙の論調を徹底比較

 

「革命」ではなく…

【毎日】は1面トップと2面3面の解説記事「クローズアップ」に「なるほドリ」、8、9面、社会面にも関連記事。見出しから。

1面

  • 韓国大統領に文在寅氏
  • 9年ぶり革新政権
  • 国政介入事件 混乱収拾急ぐ

2・3面

  • 慰安婦合意「再交渉を」
  • 対北朝鮮 融和模索へ
  • THAAD 慎重姿勢
  • 日米と足並み乱れも
  • 慰安婦問題 日韓合意って何?(なるほドリ)

8面

  • 朴前政権 負の遺産
  • 政経癒着の根絶急務
  • 国民との対話なく
  • 大統領制 高まる改憲気運
  • 保守に厳しい審判
  • 当選確定で即就任 閣僚人事先送りか
  • 異例の船出
  • 「成功モデル」陰り
  • 韓国 低成長で不満増幅

5面

  • 反朴氏の民意鮮明
  • 国政介入 若者怒り
  • 「盧武鉉の影法師」
  • 民主化運動で逮捕歴
  • 包容力ある政権運営期待
  • 業績主義の政治に変化
  • 格差社会が生んだ現象

31面

  • 「日本と友好関係を」
  • 新大統領に在日韓国人期待

uttiiの眼

3面は対北朝鮮関係、8面は保守に対する厳しい審判という側面、9面は文政権の課題に繋がる諸々のテーマといった書き分け方をしている。注目したのは9面。なかでも、ソウル支局長、米村耕一記者の解説と、木宮正史東大大学院教授のコメント。

米村記者は、韓国メディアが今回の政権交代を市民革命と表現していることに着目。朴前大統領の弾劾、罷免に繋がった一連の動きを捉えた言葉で、ハッキリとは書いてないが、選挙は「革命」の一シーンに過ぎないと言いたいようだ。「市民革命」とは、韓国社会に溜まった様々な不満を梃子に、社会を大きく変えようとする動きを指すものと思われる。

文氏の所属する「共に民主党」は、「革命」の名に相応しく、裁判とは別に前大統領の問題を徹底追求する方針だそうで、記者は「9年間に及んだ保守政権への激しい敵意がにじみ出ている」と見た。ところが、文氏自身は、若者の就職難を解消するための(地味な?)施策を公約の1番目に掲げていて、この点が、米村記者の眼には党と大統領の間の「ギャップ」と映るらしい。そして、こうした「ギャップ」が生じる原因の1つが、「文氏周辺に現実主義者と原則主義者が入り交じっている」ことだと言っている。しかし、そもそも、これを「ギャップ」とか「矛盾」と捉える必要があるのか、疑問だ。支局長の結論として「文氏には、大仰な「革命」よりも、実利的なテーマで多様な政治勢力と協力する包容力のある政権運営を期待したい」というのは、少数与党の現実を見れば当然のこととも言えるだろう。十分理解できるが、党には党のイデオロギーがあり、それによって結束が保たれていることを無視することもできまい。支局長の「提案」が、大統領と「共に民主党」に対して、保守に対する攻撃を控えよという意味なのだとしたら、それは無意味なことだと思われる。

東大大学院の木宮正史教授は非常に面白いことを言っている。「韓国の民主主義はもともと、国民の力で勝ち取ってきたという側面が強
い。保守とリベラルの間の政権交代があって、……前の政権の業績が芳しくなければ国民が選挙によって政権交代を実現する」と。また、盧武鉉政権の失敗は、保守系メディアを味方にできなかったことであり、金大中政権は反対に、敵対した人物を取り込んだり、敵対勢力が好む政策を断行したりしたのだという。そして、文氏には金大中氏を見倣うよう勧めている。さらに、「対日関係では与野党間に大きな違いはない」のであり、対日関係が「保守政権は良く」なり、「リベラル政権は不安定」とは言い切れないのだそうだ。必要なのは、「慰安婦問題などは日韓関係の中でできるだけ最小化し、北朝鮮の核ミサイル危機への対応、米中への対応、経済協力など、日韓で利害が共有できる部分を少しずつ増やしていくことだ」とする。

表現方法には難があったが、支局長が言いたいのは国内政治を脱イデオロギー化する努力の必要性であり、教授が言っているのは、国内においてと同様、日韓関係のような国際関係においても、脱イデオロギー可が必要だという点だろう。

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