韓国大統領選を日本はどう報じたのか? 新聞各紙の論調を徹底比較
「親北・反日」を貫くのか
【読売】は1面トップに2面の「ニュースQ+」、3面の解説記事「スキャナー」と社説、6面に文氏のプロフィール、7面は特集記事「韓国大統領選」と識者の話、36面は在外投票を行う在日韓国人について。見出しから。
1面
- 韓国大統領に文氏
- 「親北・反日」路線
- 慰安婦合意 再交渉を主張
- きょう就任 任期5年
- 「理想主義」待ち受ける現実
2面
- 韓国大統領 どんな権限?
- 軍を統帥 3000ポスト任免
- 安倍首相 早期会談訴え
- 日韓 遠い未来志向
3面
- 対北包囲網に暗雲
- 融和姿勢「隙与える」
- トランプ氏 訪米・協力議論要請へ
- 文氏は「親北・反日」を貫くのか(社説)
6面
- 文氏の横顔
- 貧しさ知る「庶民派」
- 日本とつながり皆無
- 産業構造改革に無関心
- 綿密・合理的 盧氏と違い
7面
- 文政権 多難な船出
- 少数与党「首相」「連立」カギ
- THAAD 中韓なお火種
- 対北で関係修復も
- 日米と首脳外交早期か
- 保守に反感 若者が支持
36面
- 文政権 多難な船出
- 少数与党「首相」「連立」カギ
- THAAD 中韓なお火種
- 対北で関係修復も
- 日米と首脳外交早期か
- 保守に反感 若者が支持
uttiiの眼
見出しを見ながら、あまりの突っ慳貪(つっけんどん)、冷淡さに、ついつい吹き出してしまった。1面トップ記事に付けられたソウル支局長による解説の見出し、「「理想主義」待ち受ける現実」というのもなかなか凄いが、「日韓 遠い未来志向」に「対北包囲網に暗雲」と来て、「貧しさ知る「庶民派」」で少しだけ持ち直したかと思いきや、「日本とつながり皆無」で「産業構造改革に無関心」と突き放し、社説に至っては「文氏は「親北・反日」を貫くのか」と、もう半泣きの状態に。
まあ、《朝日》と違って立場がよく分かるというメリットは確かにある。北朝鮮との対話路線がもしかしたら増大させるかもしれない安全保障上の“危機”、新大統領の対日強硬姿勢が国内における求心力回復の“打ち出の小槌”に使われるのではないかという懸念など、全くの絵空事ではない以上、日本政府と立場を同じくする《読売》ならば、心配でならないはずだ。
しかし、そうした報道の基調と別に、もう一つのラインが強調されているのがきょうの《読売》。上に見出しを紹介した中島健太郎ソウル支局長の解説は、金正恩朝鮮労働党委員長を「対話相手」とみなす「理想主義者」の文氏を、朝鮮半島情勢緊迫化の中で韓国国民が大統領に選んだのは何故かという、重要な問いかけをしている。
その自問に対する中島記者の答えは、「対北認識をめぐる世代間のギャップ」。有権者の半分を占め、就職難などで社会の歪みを実感する20歳~40歳の若年層は、北朝鮮の脅威への対応よりも、韓国社会の不平等是正の方が遙かに重要だと考えたのだという。北朝鮮の脅威を実感する残りの有権者、高齢層は、2人の候補に票を分散させ、文氏の当選を許したという分析となると少々図式的に過ぎるような印象だが、若者がこぞって革新系に投票したという単純な事実に重みがあると言わなければならないだろう。
この点については、7面に掲載された社会コンサルタント会社「オピニオンライブ」の世論分析センター長がさらに興味深い発言をしている。文氏を支持した若年層には、「雇用問題を解決できない保守政権への反感」が強かったこと、また、保守地盤でも文氏が一定の支持を受けたのは、高齢者との「世代間の分離」が進んだからであって、今回の選挙は「地域間の対決から世代間の対決になった」とする。2位だった洪氏は保守層を結集させる時間が足りず、また放言が多かったため支持が広がらず、また3位に甘んじた中道左派の安氏は、地盤が光州と全羅道に限られ、全国的な組織力を持っていなかったという。ここから先は《読売》に書いてないことだが、今回の大統領選で、洪氏は保守の新しい価値を纏うことができず、安氏は旧態依然たる地方ボスの範囲を出られず、ただ1人文氏だけが、格差という、韓国社会を覆う最も深刻かつ巨大な問題に取り組む政治家として有権者の前に立つことができたということではないか。
【毎日】今回の選挙結果は「市民革命」のワンシーンに過ぎない
uttiiの電子版ウォッチ内田誠文在寅新聞韓国
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