ビジネス書などにお決まりのように記されている「業務の効率化」という言葉。しかし無料メルマガ『ビジネス真実践』の著者で戦略コンサルタントの中久保浩平さんは、「業務の効率化を安易に進めるのは危険」と警鐘を鳴らしています。そこには「客離れ」に繋がるデメリットが潜んでいるとのことなのですが…、一体なぜなのでしょうか。
効率化を進める前に
業務の効率化を図ることによって、無駄な経費を省き、増収増益へ繋げるということを経営者は考え実行に移していきます。ですから、業務効率化というのは自社のスリム化や改善によって、それがどのような利益となるか? が焦点となります。しかし、その反面、効率化を推し進めることが、お客さんにとってはどうか? ということは、蔑ろにされてしまうことが多々あります。
たとえば、これまでは新商品が出ると営業マンがカタログ片手にお得意先へ出向き丁寧に説明していたのに、それだと移動する交通費も説明する時間ももったいないということになり、カタログをPDF化してメールで送信、説明や問い合わせに対するやり取りまでもメールで済ます。印刷代も時間も移動経費も削られて、めでたしめでたし、というようなことです。
しかし、それは、あくまで営業側の都合、ということになります。この場合、移動の経費や印刷代などを削ることができる反面、段々と大事な取引先と疎遠になっていくというリスクが生じます。相手とface to faceのコミュニケーションをとっていただけに、余計に印象が薄れていきます。やがて、そのことが原因で得意先との信頼関係も崩壊し、増収増益どころかマイナスに…。「ネットやSNSを使ってマーケティングをすれば成功する」というような言葉に感化され、慣れないことをやっつけでやり、売上を落としていくのがこのタイプです。
効率化というのは、無駄と思えるところを削ったり、よりスピーディーに物事を進めていくために有効な手段です。しかし、業務を効率化することによってお客さんに対する影響はどうなのか? その影響は良いものか? 悪いものか? ここを全て検証しクリアしていかないことには、何でもかんでも効率化したところで本末転倒になるのです。
逆に、ライバル他社が効率化を進めているのであれば、非効率なことをあえてやるほうがお客様に喜ばれる場合だってあります。先ほどの営業マンの例でいうと、「他社はみんなメールでやり取りしているところを、自分だけはきちんと顔を見て、お客さんの疑問にその場で応えられるようにするため、直接伺っています」なんて姿勢が伝われば、それだけで印象は全く違うはずです。簡単にいうと、そういうことです。
効率化しなくてはいけない部分は、それがどう取引先、お客さんに影響するのか? を踏まえて効率化する必要がありますし、効率化する必要もないところを、自社都合だけで効率化してしまうことでお客さんにとっては不利益となる、そんなこともあるのです。営業、サービス面は特に効率化というものについてよくよく考え、やるべきもの、やらない方が良いもの、を見極めていきましょう。
御社では効率化という言葉を免罪符にして、かえって、お客さんにネガティヴな影響を与えてしまっていませんか? お客さんにとって不利益な場合、それは効率化ではありませんので、くれぐれもご注意ください。
■今日のまとめ
『効率化はお客さんにとって有益でなければならない。』
- 自分の業務を箇条書きにする。
- 箇条書きにしたものを見て、今より効率よく業務を行う方法を考え、まとめる。
- その方法によって、取引先、お客様、周りのスタッフにどのような影響を与えるか?考えノートに書き出す。
- 書き出したことをみんなの前で発表し各々にも考えてもらう。
- みんなで考えたものから真の効率化を目指す。
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