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中国企業の日本進出が加速。買収される「メイド・イン・ジャパン」

かつては人件費の安さなどから「世界の工場」と呼ばれ、各国の企業がこぞって進出した中国。しかしここに来て今度は中国企業の日本進出が相次いでいると報じられています。中国の通信機器大手・華為技術(ファーウェイ)では6月、大卒の初任給が40万円以上であることが話題になりました。この流れが加速した場合、我が国はどのような事態に直面してしまうのでしょうか。メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』の著者で台湾出身の評論家・黄さんは、中国企業がこれまで国内はもとより世界各地で引き起こしてきた数々の問題を紹介しつつ、これからの日本に起こりうる深刻な事態について記しています。

【中国】中国の工場が日本に? 懸念される「アフリカ化」

華為が日本に通信機器大型工場 中国勢で初、技術吸収

衰退する中国経済を尻目に、世界で躍進する中国の通信機器大手メーカーが話題となっています。

台湾の市場調査会社「集邦諮詢(Trend Force)」によると、2016年の世界スマ─トフォン出荷台数は13億6,000万台、成長率が4.7%。市場シェアでは、韓国サムソン電子が22.8%で依然世界一で、2位は米アップル社。3位から5位は中国のファーウェイ(華為技術)、OPPO(広東欧珀移動通信)、vivo(維沃移動通信)でした。

6位は韓国LG電子でしたが、7位~10位も中国のメーカーが占めたということです。

2016年世界スマホ出荷台数13.6億台、中国勢が躍進

なんとTOP10のうちの7社が中国企業だというのです。中国大手企業の勢いを感じる統計です。

今回のニュースは、そのなかの華為技術が、千葉県船橋市にあるDMG森精機の工場跡地と建屋を買収し、生産設備を導入して、早ければ年内にも稼働するというものです。当面の投資額は50億円程度とみられ、今後も追加投資を検討するとも報じられています。

中国企業による日本進出は2000年代後半ごろから、業績悪化した日本企業の買収という形で増えました。記事によれば、2009年には中国の家電専門店大手がラオックスを買収、本間ゴルフやレナウンなども相次いで中国企業の傘下に入っています。以下、記事の一部を引用しましょう。

最近は研究開発拠点を設置する動きも広がる。自動車大手の長城汽車は16年に拠点を設け、電気自動車(EV)や自動運転の研究を開始。中興通訊(ZTE)もあらゆるモノがネットにつながる「IoT」の拠点を都内に開設した。

 

すでに研究拠点を持つ華為はさらに生産まで乗り出す。日本は人件費の高さが課題だったが、中国の人件費が上昇して差が縮小。日本の割高感が薄まり、華為は新工場で生産管理の人材を多く採用する予定。中国流の低コスト大量生産と組み合わせ、品質と価格競争力を両立させる。

これまでは、日本に進出する企業にとっての高いハードルは日本人の人件費の高さでしたが、波に乗る中国企業にとってそれは全く問題ではないということのようです(一方で、華為は工場ではなく研究所を新設するという報道もあり)。

シャープを買収した鴻海もそうでしたが、巨額の投資を貪欲に行い勝機に食らいついて離さない積極性は、中国企業が持つ特徴なのかもしれません。しかし、同時に非常に重要なニュースも配信されています。中国企業の工場から出る環境汚染の深刻化です。

埋められた毒 中国が隠す土壌汚染

パリ協定を離脱したアメリカの代わりに中国が世界を牽引するリーダーとして名乗りを上げているような報道もありますが、パリ協定というのは環境保護を目的としたものです。

中国が環境保護というテーマで世界を牽引する資格があるのかと問われれば、全くありません。中国が行っている対外インフラ投資も、ミャンマーのミッソンダム、ニカラグア運河など、環境破壊から多くのプロジェクトが地元の反対にあい、中断に追い込まれています。また、ご存知の通り大気汚染によるPM2.5で北京から脱出する人々が出ています。

中国政府は大気汚染対策を早期に実施し、改善を図るとして石炭の使用量を制限したり、世界一の風力発電設備を整えたりしていますが、実態はあまり変っていません

また、水質汚染も改善されることはなく、中国の水は相変わらず汚いままです。しかし、それ以上に深刻なのは土壌汚染です。記事によれば、広州市では工場から排出された汚染水が水田に入り、多くの家庭で「カドミウム米」を食べているというのです。

カドミウムが入った食品を日常的に食べれば、腎臓障害、肺疾患、骨の異常、癌などを引き起こします。しかし、こうした土壌汚染は目に見えにくく、食品をいちいち検査しなければ気が付かずにやり過ごしてしまいます。

悪影響が出るのは数年後または十数年後のため、原因も特定しにくいのが土壌汚染です。そうしたことを分かっていながら、土壌汚染対策を推進せず、企業の利益だけを追求することに目をつぶっているのが中国政府です。国民の健康よりも企業の利益のほうが優先される。それが中国です。

日本では、いくら工場に課す環境基準が厳しいとはいえ、ごまかすことはいくらでもできるでしょう。日本企業は、企業責任を果たすというモラルと使命を貫く姿勢と理念を持っているからこそ、環境基準を守り、環境保護に貢献しているのです。

ただ、日本も戦後の過渡期を経て、水俣病やイタイイタイ病など多くの教訓を経ているからこそ今の日本の環境保護があります。そうした経緯を経験せず、時代錯誤に工場排水を垂れ流して平然としている中国企業が、日本に工場を建設したからといって日本の環境基準を守るかどうか。

アフリカに進出した中国企業にしても、現地に雇用を生まず、自然環境を破壊するといったルール無視のやりかたが、現地の憎しみを増幅させ、アフリカ各国で中国人襲撃事件などが頻発しています。同様のことが、日本で起こらないとは限りません

環境は、一度汚染されたら取り戻すのは非常に困難です。日本人はそれをよく知っているからこそ、環境をこれほど大切にしてきました。そうした努力を中国企業に土足で踏みにじられないよう、日本政府はきっちりと監視するべきです。

監視の目を強めて、警戒心を怠らず、ごまかしがないように徹底しなければなりません。自己責任などという甘いことを言っていては、戦後の悲劇が再現されかねません。

近年、日本の家電メーカーが危機的状況にあります。シャープ、東芝、タカタなど、かつては日本を代表した企業も今や財政難で苦しんでいます。栄枯盛衰とは、文明だけでなく企業にも当てはまることなのでしょう。企業の寿命は30年という説もあり、特に日本の伝統産業はますます廃業の危機に直面するでしょう。

中国経済がもはや再起不能だという説は世界の常識になっています。今、世界の注目は中国のヒトカネ企業の海外逃亡に集まっています。中国の企業にとって、超経済的政治闘争は興亡の運命を決める最優先課題です。

中国企業は、政治力がなければ存続できません。さらに中国企業の根本的な問題は、社会環境と生存条件にあります。中国の大地は、有史以来、伝染病センターとして知られており、ペストなど歴史的な伝染病からSARSなど現代的なものまで、その種類は豊富です。

これを踏まえて考えると、2007年をピークにして中国企業が海外へ逃亡している最大の理由は、環境劣化の問題です。大気汚染、水質汚染、海洋汚染、土壌汚染などの環境問題のほかにも、治安の悪化社会の乱れが同時進行しています。

そのため、若いエンジニアなど能力のある人材は、競って祖国を捨てて海外へと逃亡するのです。こうして、ヒトとカネが国外大脱走するという潮流の中で海外の企業買収は、キャピタルフライトやマネーロンダリングなど企業エスケープの別形態となっています

蒋介石や政府の重鎮が海外に持ち逃げした国家の資金は中国には一銭も戻りませんでした。それに危機感を覚えた中国政府は、海外投資を制限するなど、さまざまな手法で資金流出を抑えようとしています。

image by: J. Lekavicius / Shutterstock.com

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