最大42%も年金受給額がUPする「繰り下げ受給」の落とし穴

 

この、厚生年金に加入しながら貰う年金を在職老齢年金といいますが、この在職老齢年金により老齢厚生年金が停止になるため老齢厚生年金の繰り下げ増額についてはあまり機能しない事があります。そんな例を見ていきましょう。

1.昭和27年7月12日生まれの男性(今65歳)

  • 老齢厚生年金120万円
  • 老齢基礎年金70万円
  • 年金総額は190万円

とします。ちなみに60歳以降も働くと経過的加算(老齢厚生年金の部類)という年金が増える場合がありますが、この記事では省いて話を進めます。

普通に70歳まで5年間繰り下げをやれば老齢厚生年金なら、42%増額の170万4,000円で、老齢基礎年金は99万4,000円となり、年金総額は269万8,000円となります。繰り下げない場合より79万8,000円増加しました。たった5年間年金を貰わないだけで…。

しかし、この男性は65歳以降も厚生年金に加入して、月給与40万円で直近1年の賞与は7月に80万円、12月に80万円貰いながら働く事になりました。繰り下げは70歳までの5年間やるつもり。直近1年に貰った賞与の総額160万円を12ヶ月で割って換算すると13万3,333円。となると、総報酬月額相当額は40万円+13万3,333円=53万3,333円となります。

という事は、65歳以降の在職老齢年金による停止額は{(老齢厚生年金月額10万円+総報酬月額相当額53万3,333円)-460,000円}÷2=8万6,667円が停止になります。

※注意

老齢基礎年金は年金停止額を算出する場合には含めない。老齢基礎年金は厚生年金に加入して働いても本来は全額支給される。

ア.65歳から66歳までの12ヶ月間の総報酬月額相当額が53万3,333円の場合は、年金の支給月額は老齢厚生年金月額10万円-月停止額8万6,667円=1万3,333円。

イ.66歳から67歳の12ヶ月間も総報酬月額相当額は53万3,333円なら、同じく停止額は8万6,667円で月年金支給額は1万3,333円。

ウ.67歳から68歳までの12ヶ月間の総報酬月額相当額は40万円に下がった。となると、停止額は{(老齢厚生年金月額10万円+総報酬月額相当額40万円)-46万円)÷2=2万円。年金支給月額は10万円-2万円=8万円。

エ.68歳から69歳までの12ヶ月間は総報酬月額相当額は45万円に上がって、年金停止額は{(老齢厚生年金月額10万円+総報酬月額相当額45万円)-46万円)}÷2=4万5,000円。年金支給月額は10万円-4万5,000円=5万5,000円。

オ.69歳から70歳までの12ヶ月間は総報酬月額相当額は35万円に下がった。となると、(老齢厚生年金月額10万円+総報酬月額相当額35万円)-46万円)だから年金停止は無し。老齢厚生年金支給月額は10万円。

さて、65歳から70歳まで目一杯年金の繰り下げをやると、0.7%×60ヶ月=42%の年金増額になりますが、この男性は上記の通り老齢厚生年金に在職老齢年金による老齢厚生年金の停止が適用されてるため金額が期待通りに増えない。

この場合一体どの程度、老齢厚生年金は繰下げによって増えるのか。まず、65歳から70歳まで支給された老齢厚生年金の平均の支給率というのを出します。

65歳から66歳までの12ヶ月間は8万6,667円が支給停止されてる。

年金支給率は1-(8万6,667円÷10万円)=1-0.87=0.13。

(8万6,667円÷10万円)というのは本来の老齢厚生年金額に対して停止額がどのくらいの割合になるかを表す。これを1から引くと支給される割合が示されるって事。66歳から67歳の12ヶ月間も同じく支給率は0.13。

67歳から68歳までの12ヶ月間は年金支給率は1-(2万円÷10万円)=1-0.2=0.8。68歳から69歳までの12ヶ月間は年金支給率は1-(4万5,000円÷10万円)=1-0.45=0.55。69歳から70歳までの12ヶ月間は年金停止が無いから、年金支給率は1。

よって、すべての年金支給率を合計して平均すると、(0.13×12ヶ月+0.13×12ヶ月+0.8×12ヶ月+0.55×12ヶ月+1×12ヶ月)÷全体の繰り下げ期間60ヶ月=(1.56+1.56+9.6+6.6+12)÷60ヶ月=31.32÷60ヶ月=0.522(平均支給率)。

65歳時点の老齢厚生年金120万円×老齢厚生年金の平均支給率0.522=62万6,400円。62万6,400円×42%=26万3,088円の増額となる。だから単純に120万円×42%=50万4,000円増額になるわけじゃないので注意!

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