俳優業を再開した元天才子役が忘れそうになっていた「馬鹿」

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かつて天才子役と呼ばれるも一時期自らの意志で芸能の世界と距離を置いた黒田勇樹さんが、本格的に俳優業を再開して2年あまり。映画に舞台にと精力的に活躍する中、本気で取り組むがゆえに生じるストレスにピリピリしていたという黒田さんが、そこから脱却する瞬間を『黒田勇樹が働かずに生きていくためのメルマガ「黒田運送(便)」』で綴っています。

日常「ピリ山ピリ太郎」

今週はずっとピリピリしておりました。

映画の上映会が終わってひと段落。月光条例もそんなに出番がないので「楽に行こう」ぐらいのモチベーション。

ほしがりの3周年記念も「再演だしなんとかなるだろう」と思っていたのですが、なんかね、映画の上映会が終わって温泉行ってボーっと頭空っぽにして最初に頭に思い浮かんだのが

もっともっと面白いことがしたい

で、面白いことしようと思ったら、映画も上映会のお客さんの反応で反省点もたくさん見つかったし、もっとクオリティ上げて映画祭とか出せる余地があるし、そうなると、ゆうばりの締め切り10/16だし、ほしがりの台本ももっともっときちんと直して稽古したいし、月光条例も死ぬほど練習したい。

そういう欲求と、改善点のアイデアがどんどん浮かんできて

時間と体とお金が全く足りない

という結論にたどり着くわけです。

それをなんとか成立させられないかとあがいてあがいて上手くゆかず、結局ただのピリピリしている人として1週間過ごしてしまいました。

ここまでが前半。

それでは後半「馬鹿みたいなこと」をお楽しみ下さい。

仕事「馬鹿みたいなこと」

そんなピリピリマックスの状態で、

「明日から月光条例に専念するから、これから2週間稽古に来ないよ」

と、どうにか出来る限り「俺がいない間にやっておいて欲しいこと」を整理して劇団員に伝えようとしても上手くいかず。

「俺、なんでこんな馬鹿みたいなことを一生懸命やっているんだろう」とやさぐれて、酒を煽って寝て、朝起きたら鬼みたいな顔しながら無理やりセリフを頭に詰め込んで、月光条例の稽古行って、本番直前だから「セリフも覚えてないのに通し稽古」みたいな、俳優としては「とても恥ずかしい状況」に立つことになって、それでもなんとか出来る限りのことをと、共演者に頭下げて、その人も練習したり休憩したいだろうに「俺だけのための稽古」に付き合ってもらって、ほとほと精神的に疲れてしまっていた時に自分の出ていないシーンの稽古をふと見てみたら、変なコスプレしてる人が真面目な顔して大声でセリフを言っていたり、なんか急に汗だくになりながら踊り始めたり、「馬鹿みたいなこと」を、スゲー「一生懸命」やっていました。

「そうか、俺たちは馬鹿みたいなことを一生懸命やるのが仕事なんだ」

突然、憑き物が落ちたようにここ最近のストレスが消え去りました。

初日を迎える前にチケットが売り切れるような劇団も「一生懸命、馬鹿みたいなこと」をしている。

僕たちは「馬鹿みたいなことを一生懸命やる」のです。

今まで自分がそういう「一生懸命馬鹿」を観て、どれだけ楽しんで、どれだけ救われてきたことか。

「頑張らなきゃ」「一生懸命」ということにとらわれ、「馬鹿」を忘れそうになっていたんだと思います。

これが自分の中で整理して言語化出来たのは、本当によかった。

稽古終わりに彼女と待ち合わせていたら、駅で彼女に

俳優の黒田勇樹さんですか?

と、声をかけられました。

どうにも彼女からみると、ここ数日の病んだ顔からキラキラした俳優さんの顔になっていたことに対してのジョークだったようなのですが本当に、そういうことなんだな、と。

僕たちはこれからも、馬鹿みたいなことを一生懸命やっていくのです。

image by: Shutterstock

 

 

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黒田勇樹が働かずに生きていくためのメルマガ「黒田運送(便)」』より一部抜粋

著者/黒田勇樹
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