斬新なアイデアで快進撃をみせるベンチャー企業が注目を集めています。「きっとうちの会社より優秀な人材がアイデアを出しているんだろう」と思われた方、果たしてそれは本当でしょうか。今回の無料メルマガ『MBA流 大人の学ぶ技術』では著者の若林計志さんが「スイス本社も絶賛。ネスレ日本が起こした『ジャパンミラクル』とは」でもご紹介したネスレ日本社長・高岡浩三氏の名言を引きながら、「部下のアイデアを否定する前に持つべき心構え」を記しています。
ベンチャーが大手と勝負するには?
ここ数ヶ月「ビジネスプランコンテスト」のアドバイザーや採点者をやらせていただく機会が多かったのですが、その経験を通じて改めて思ったことが
「ビジネスプランは作るのにも能力が必要だけど、もっとも重要なのは評価する方の能力だ」
ということでした。
例えば最近、料理系ベンチャー企業間で激しい競争が起こっています。しばらくは「クックパッド」がぶっちぎりで勝っていたのですが、
- kurashiru(クラシル)
- DELISH KITCHEN(デリッシュキッチン)
などの新興勢力が猛烈な勢いで追撃しています。
● 「1分レシピ動画、全世代女子がのめり込む必然」 新興勢力が続々、30億円調達ベンチャーも
実はこの手のベンチャーが大手を追撃する事例が結構増えているのですが、そのあたりの知見がないと、新しいビジネスプランを聞いた時
「そのサービスがうまく行くなら大手がとっくにやっているんじゃないの?」
とか
「うまくいきそうになったら大手がすぐに真似して潰されるんじゃないか?」
というもっともらしい定石的コメントをしてしまうはずです。
もちろん、それが間違っている訳ではないし、実際なんらかの差別化要因があるからこそ、大手の攻撃をディフェンスし追撃できるのですが、表面的な理解で戦略論を振り回したり、頭でっかちな考え方をしてしまうとせっかくの事業の芽を潰してしまうのです。
スタディサプリ
リクルートの新規事業として始まった「スタディサプリ」。いまや受験生の2人に1人が利用していると言われているほど普及しています。YouTubeに動画ありますのでぜひ見て見てください。
基本的なフォーマットは90年代から「代ゼミ」や「東進ハイスクール」がやっていたカリスマ講師の動画を衛星で全国配信する形式と同じです(私も大学受験の際は、代ゼミ東京校から配信されるカリスマ講師の映像を見て、心躍らせながら勉強した受験生の一人でした!)。
そんな市場が既にあったにも関わらず、後発の「スタディサプリ」が一気に追撃して市場を奪ってしまっているのが面白いですよね。これも、下手な審査員がビジネスプランを審査していたら
「そんなの既に東進がやっているでしょ!? いまさら勝てる見込みあるの?」
的なツッコミを入れて、潰していたかもしれません。
マネジメントオブイノベーション
まさにここまで書いてきたことは、「イノベーションのマネジメント」に他なりません。
どうしてベンチャーからどんどんイノベーティブなビジネスアイデアが出てくるのに、大手は後塵を拝しているのかと言えば、アイデアが出てこないのではなくて、社内で潰している可能性が高いのです。
イノベーションのマネジメントについては日本初の「ネスカフェアンバサダー」制度などを生み出したネスレ日本の高岡さんの言葉にヒントが詰まってます。
● カンブリア宮殿 高岡浩三(ネスレ日本 代表取締役社長兼CEO高岡浩三)に学ぶイノベーション経営
要は高岡さんの言葉を借りれば
出てきたアイデアを役員が上から批判するのではなく、チャンスのタネを見つける眼力や、原石を磨き上げる心構えが必要である
ということなのです。
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