口に入れようとしないことを不思議に思って「おなかが空いていないのか」と尋ねると、彼はこう答えたのです。
「僕もおなかが空いています。だけど家にいる3歳のマリコもおなかを空かせているんです。だから持って帰って一緒に食べるんです」
私は一片のパンをきょうだいで仲良く分かち合おうとする、この少年に心を揺さぶられました。この少年を通して「国のために」という日本精神の原点を教えられる思いがしたのです。
「いまは廃墟のような状態でも、日本人が皆このような気概と心情で生きていけば、この国は必ず逞しく立ち直るに違いない」
そう確信しました。果たしてその後の日本は過去に類のないほど奇跡的な復興を遂げ、世界屈指の経済大国に成長しました。
通訳として日本に滞在したのは僅か2か月です。しかし、私は今日に至るまでこの少年のことを忘れたことがありません。日本に来るたびにメディアを通して消息を捜したものの、ついに見つけることはできませんでしたが、もし会えることがあったら、心からの労いと感謝の言葉を伝えるつもりでいます。
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