今後は世界の温度上昇を2度以下に
パリ協定は、世界的な平均気温上昇を2度(出来れば1.5度)以下に抑えることで気候変動を抑えたいという狙いがある。世界の平均気温上昇を抑えるには、各国が削減目標を作り、その達成のために各国は国内対策をとることが義務付けられる。しかも排出国は削減目標を5年ごとに提出し更新することと、適応する長期目標の設定と各国の適応計画プロセスと行動の実施を求められている。
これでCOP21の合意はほぼ終えたと世界が考えた途端、温室効果ガス排出量第二位(全体の15.8%)のアメリカ(1位は中国28.3%、日本は5位で3.6%)が6月1日、パリ協定離脱を表明したのである。世界から大きな非難の声があったものの、トランプ大統領は「アメリカ・ファースト」「オレ様第一」を唱え、今のところ聞く耳を持っていない。ただ、離脱には手続きが必要で、発効から3年後という決まりもあるので正式離脱は2020年11月になるとみられている。ちなみにアメリカは京都議定書も批准しなかった。
パリ協定に出遅れた日本
一方、日本はパリ協定の採択は遅れるとみてTPP協定などを優先したため、パリ協定のルールづくりに参加できないという大失態を犯してしまった。京都議定書づくりでは議長国として汗をかいてきたのに、パリ協定ではルールづくりに乗り遅れ環境問題に熱心でない環境後進国と呼ばれる結果となったのだ。そればかりでなく批准が遅れたことでルールづくりに参加できず日本に不利益なルールに対して異議を唱えられない状態になってしまい、COP22の開催中にようやく批准にこぎつけた。
温暖化対策として一時は原子力が効果的とされたが、3.11の原子力事故以来、世界から原子力依存に批判の声があがり、いまや再生可能エネルギー(太陽光、風力、地熱などの自然エネルギー)の効率的活用に注目が集まっている。
パリ協定には170カ国が批准。アメリカは離脱したものの、グローバル企業のアップルやマイクロソフトなどのように、事業に使うエネルギー全てを再生エネルギーで賄う企業連合「RE100」への加盟の動きも広がっている。また、最大排出国の中国も発電を石炭から太陽光などに転換し、100基単位の石炭火力発電所を閉鎖することも検討しているという。2014年の発電量は石炭が73%を占めたが、30年は51%、40年は43%に減少させたいとしている。
日本は電源構成を当初、原子力を50%強とし温暖化対策を考えていたが、3.11以後20~22%に減らし、再生エネルギーを23~24%まで引き上げたいとしている。また、アメリカがパリ協定を脱退したことを受けて「欧州がアメリカの代わりになる」とドイツのメルケル首相、フランスのマクロン大統領が宣言し、先導役を担うことを約束した。一方、アメリカはパリ協定から離脱したが、アメリカ企業は次々と参加を約束している。
いまや環境を大事にする企業姿勢を示さないと消費者、国民からそっぽを向けられる時代になってきたのだ。
(TSR情報 2017年11月30日)
なお、ブログには東京の公害の模様がわかるお写真やアンデルセン選手の動画を掲載しております。ご興味をお持ちの方は合わせて以下を参照下さい。
● 時代を読む
image by: Shutterstock.com