かつて「汚い国」日本から脱却も、ふたたび環境後進国となった日

shima20171214
 

川は生活排水で泡立ち、大気は汚染され健康被害を引き起こす―。かつての日本にはそんな光景があちこちで見られていました。そして現在、日本がふたたび「環境後進国」のレッテルが貼られてしまったとするのは、ジャーナリストの嶌信彦さん。嶌さんは今回、自身の無料メルマガ『ジャーナリスト嶌信彦「時代を読む」』でパリ協定のルールづくりに乗り遅れた日本の失態を指摘するとともに、世界的な高まりを見せる環境問題への取り組みについて詳しく記しています。

アメリカ政府がパリ協定から離脱─アメリカ企業は参加、独仏が先導役に─

1960~70年代の日本は、高度成長期の真っ盛りで人々は元気でみな浮き浮きしているような雰囲気だった。まだまだ日本は成長し、人々の給料も上がると信じていた。実際、企業の競争力はどの業界も強く、先進国のアメリカやヨーロッパ諸国に追いつき貿易黒字が増え続けて、あちこちの国と経済摩擦を引き起こし黒字減らしを要求された。

昔は汚かった日本

そんな時代の中で日本人も顔をしかめて対策を強く求めていたのが公害問題環境対策だった。工場地帯では煙突から黒い煙がモクモクと立ち上っていたし、大都会は自動車の排気ガスが充満し、咳き込む人が少なくなかった。マスクをして夜、家に帰ると、マスクが中まで黒ずんでいたものだ。天気の良い晴天の日でも排気ガスやスモッグで空がどんよりしていた。富士山が東京からくっきり見えたのは正月位だったと記憶する。

空や空気だけでなく街も汚かった。道に平気でゴミを捨てている人が目立ったし、ツバやタンを吐く人も少なくなかった。道路の舗装率も悪かったから、風が吹くとホコリが舞い上がったし、ゴミ箱も整備されていなかったから道や公園にもゴミが目立った。学校では「自分のゴミは自分で処分しましょう」と教えられていたが、あまり気に留めずポイ捨てをやっていたし、犬や猫は散歩の際に道の端や電信柱に向かって用を足していた。

その当時に比べると今の日本は見違えるように街はきれいになったし人々も礼儀作法を守るようになった。昔は公園などの公衆トイレは汚い所の象徴のように思われ、男は公衆トイレがあるのに脇で立小便をする姿をみかけたものだ。今の公衆トイレはきれいになり、トイレットペーパーが用意されていて30~40年前とは隔世の感がある。世界を旅行して比べてみても日本の公衆トイレの清潔さは誇ってよいのではないか。

ただ、街は清潔になったが気候変動は年々深刻化している。例えば2020年の東京五輪では熱中症の危険があると警告されている。開催期間は7月24日から8月9日だが、運動を中止すべきだというレベルを大幅に超える可能性があるからだ。

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