かつて「汚い国」日本から脱却も、ふたたび環境後進国となった日

 

2020年の東京オリンピックは大丈夫か

桐蔭横浜大などの研究チームのまとめた予想によると、開催期間中の熱中症発症リスクを表わす「暑さ指数」は年0.4度の割合で上昇しており、このままだと2020年には34度を超えると予測されている。

環境省によると暑さ指数が28度を超えると熱中症患者が急増し、「28~31度」は厳重警戒レベル、31度以上は危険レベル」(※)で原則として運動はやめるよう忠告している。特に懸念されるのがマラソンで、2004年のアテネ五輪の女子マラソンでは熱中症で2割が棄権している。1984年のロサンゼルスオリンピックの時も、スイスのガブリエラ・アンデルセン選手が足元をふらつかせ、よろけながらスタジアムに入ってきた光景を見た人は多かっただろう。彼女は助けを借りず、よろけながらゴールした姿が今も目に焼きついている。

日本の街がきれいになり、過ごしやすくなってきたのは、一般の人々が街の清潔さにも気を配るようになってきたからだろう。「貧すれば鈍す」というが、戦後の貧乏な時代は、他人のことや街の清潔さに目を配る余裕がなく、せいぜい自分の家の庭の手入れ位しか手がまわらなかったのだろう。

しかし高度成長を経て豊かになってくると街のゴミだけでなく、街並みのセンスや建物は古くてもきちんと清められていると、そこに住む人や通行人までに品位を感じたりするものだ。

京都会議から日本は先導役に

1997年の「気候変動枠組み条約第3回締約国会議・環境会議(COP3)」は、日本が議長国になって京都で開かれた。地球の温暖化が世界の気候変動に悪影響を及ぼしているので、世界全体で温暖化防止に立ち上がろうという気運から開かれたものだった。

温暖化の原因となる二酸化炭素(CO2)、メタン、一酸化窒素、代替フロンなどがあるが、人間が出している8割近くは化石燃料の燃焼や森林伐採に伴う二酸化炭素の吸収力の弱体化が原因とされ、現在の大気中の濃度は過去80万年前になかった高水準にあるとされる。ちなみに日本の排出量は14億トンを超したという。

温暖化による主要リスクとしては、海面上昇、高潮、食料不足、大都市の洪水、水不足、インフラの破壊と機能停止、漁業への被害、熱中症、生態系の破壊──などがあげられている。温暖化が引き起こす温室効果ガスの排出量は毎日1億トン以上。国連によると、19世紀後半の工業化以前に比べると0.6度上昇しており、このペースが続くと21世紀末には2.6度から4.8度上昇するという。もしそうなると食料不足や生物の大量絶滅、南極の氷の溶解による海面上昇、農作物の品質低下、熱中症による健康被害など様々な悪影響が予想される。

このため、温暖化対策を決めた京都議定書(1997年)に続き、2020年以降の対策として2016年11月にパリ協定が締結されたのだ。

パリ協定は京都議定書に続く温暖化対策を定めた国際協定で、京都議定書は2020年までの対策を決めているが、パリ協定は京都議定書に代わるものとして2020年以降の温暖化対策を決めている。京都議定書は採択から発効まで各国の利害調整などで7年の月日を要したが、パリ協定は1年弱でCOP21によって正式に採択された。

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