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米国の世論が「朝鮮戦争もやむなし」…イラク開戦前夜と酷似してきた

先日国連安保理が採択した追加制裁について、「戦争行為だ」との声明を発表した北朝鮮。金正恩政権は制裁追加措置を支持した国に対しての報復も示唆するなど、一歩も引かない構えを見せています。ますます「米朝戦争」の現実味が増してきたとの報道も見られますが、アメリカの国民は軍事衝突についてどう考えているのでしょうか。日本の北朝鮮研究の第一人者である宮塚利雄さんが主宰するメルマガ『宮塚利雄の朝鮮半島ゼミ「中朝国境から朝鮮半島を管見する!」』では、11月に米国内の大学で実施したアンケートの結果を紹介するとともに、アメリカ政府が戦争を始めるにあたり世論を慎重にコントロールしている可能性を指摘しています。

来たる新米朝戦争、米国市民は回答者7割がいずれ将来の戦争勃発を予想。しかし米国自身の正当性は7割が認めず

北朝鮮からの漁船漂着の話題がマスコミを賑やかにしている日本国内ではあるが、国会における与党のへの追及は専ら「モリカケ」問題に終始して、日本政府も政治も朝鮮戦争が再び勃発するとは全と言っていいほど考えていないように感じるが、果たして戦争当事者になり得る米国ではどのような意識になっているのであろうか? そんな疑問に米国から興味深いレポートが宮塚コリア研究所に届いた。

レポートの主は米国、モンゴルを拠点に活躍をしているUniversity of Finance and Economics in Mongolia(モンゴル金融経済大学)の古畑貴志准教授であり、以下はその内容である。古畑准教授は米国国防省との共同研究により2017年夏にも国防省で研究発表を行っている。軍関係には様々なコネクションを持っている古畑准教授によると、戦争の事前準備自体は、例えば米国内部での北朝鮮担当への大規模な人事異動等はかなり以前から準備が始まっていたと聞いている。

それでは今度は、この新・北朝鮮VS米国戦争勃発の脅威に対する米国一般人の世論はどうだろうか。米国は歴史的にも戦争を始めるまでに、現政権に影響が出るような大きな反対運動を米国市民が起こさないようにじっくり時間をかける傾向にある。つまり、政府は戦争に関する世論に対しては非常に敏感なのである。

例えば911事件が起こったのは、御存知の通り2001年9月11日、イラク戦争の宣言をしたのは2003年03月20日木曜日、つまり911事件からほぼ1年半もの時間が費やされているのである。

米国政府としては、選挙にも大きな影響を与える戦争反対運動等は、大々的に起きないほうが現政権には都合が良い。そこで、メディアを使って徹底的に戦争相手国のことを報道して、米国市民に「この戦争は仕方なくやるのだ戦争をしないためにコレだけ対話を行っている」ということアピールする努力を良い意味でも悪い意味でも行っているのは、皆さんもニュース等を通して肌で感じることができるのではないだろうか。

それでもイラク戦争が起きた数日後、つまり最初の週末の土曜日、2003年03月22日午後には米国内の大都市を中心に大規模な反戦デモが起こった。例えば、ワシントン州シアトル市ではダウンタウンからワシントン大学に向けての約10キロに渡り、学生を中心とした大規模なデモが起こった。テレビ局は、方々でヘリコプターを飛ばしてデモの隊列をこぞって放映していた。

この戦争からも米国政府はさらに学び、米国は戦争に対する世論を作ることを、より慎重に徹底的に時間をかけている可能性が高い。

それでは、現在、一般の米国人はこの近い将来起こり得る新・北朝鮮VS米国戦争をどのように認識しているのだろうか。

古畑貴志准教授の協力により、箙隆准教授は、2017年11月13日、米国ユタ州ソルトレーク短期大学にて大学生46人を対象とした「新・北朝鮮VS米国戦争に対する米国内での一般人の認識」というアンケート調査を実施した所、以下のような結果を得た。

Q1.米国は北朝鮮を攻撃するだけの十分な(正当な)理由があると思いますか?

Q2.戦争が起きるとすればいつ起きると思いますか? または回避できると思いますか?

  1. 2018年3月までに起きる:(0人:00.0%)
  2. 2018年9月までに起きる:(1人:02.2%)
  3. 2018年以内に起きる:(5人:10.9%)
  4. 2020年までに起きる:(23人:50.0%)
  5. 2020年以降に起きる:(3人:06.5%)
  6. 戦争は回避できる:(14人:30.4%) 

最も興味深いのは、米国のこの大学では7割の学生が米国が北朝鮮と戦争をする正当な理由はないと答えているにも関わらず、ほぼ同数の7割弱の大学生がいずれ将来の米朝戦争勃発の可能性を感じている所である。

ただ意外にも戦争がすぐ起こると感じている学生は意外と少なかった。例えば2018来年以内に起こると感じている米国人は、回答者全体のたった2割以下であった。

しかしさらに意外だったのは2018年以内も含め2020年までであれば戦争が起こるのではないかと考えている米国人は回答者全体の約6割強にも登り、戦争を回避できると回答したのは約3割に留まった

つまり米国内では戦争はここ1年以内というように、すぐに起こるとは感じている回答者は少ないが2~3年以内には戦争が起こると感じている米国人が非常に多いという結果になった。

このように米国国内では7割弱の大学生が直近ではなくともいずれ「新・米朝戦争勃発」の可能性はあると考えているという結果が出た。さらにその世論を米国政府が慎重にコントロールしている可能性について分析をした古畑准教授のレポートであったが、日本人だけでなく米国本土の米国人にとっては、朝鮮半島において、すぐ戦争が勃発するとは考えてはいないが、戦争自体はいつか起こるであろうとことを肌で感じてきているのではないだろうか。(古畑貴志、箙隆、石田健二、宮塚コリア研究所事務局)

古畑貴志Takashi Furuhata
Ph.D。米国ワシントン大学にて統計学で博士号取得、同大学で後輩のボブサップの通訳を務めたことも。ハワイ大学、ユタ大学での米国国防総省との共同研究から米国軍関係にコネクションを持つ、日本三大総合商社の1つでマネージャーを経験、キックボクシングのプロライセンスを持つ。在米生活19年、モンゴル金融経済大学(University of Finance and Economics in Mongolia)准教授。

箙 隆(Takashi Ebira
岐阜市出身。現在ソルトレーク地域短期大学(Salt Lake Community College)人文学科准教授。専門は応用言語学。

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元山梨学院大学教授の宮塚利雄が、甲府に立ち上げた宮塚コリア研究所から送るメールマガジンです。北朝鮮情勢を中心にアジア全般を含めた情勢分析を独特の切り口で披露します。また朝鮮半島と日本の関わりや話題についてもゼミ、そして雑感もふくめ展開していきます。テレビなどのメディアでは決して話せないマル秘情報もお届けします。長年の研究対象である焼肉やパチンコだけではなく、ディープな在日朝鮮・韓国社会についての見識や朝鮮総連と民団のイロハなどについても語ります。

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