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大恐慌からの大戦争。1929年からの歴史は繰り返されるのか?

「歴史は繰り返す」と言いますが、メルマガ『国際戦略コラム有料版』の著者・津田慶治さん曰く「現状が1929年の動きに非常に似ている」とのこと。この状態を打破できなければ世界は通貨安競争後に貿易戦争になり、やがて戦争に突入すると推察していますが、世界はこのカウントダウンを止めることができるのでしょうか。

通貨安競争後は貿易戦争に

1929年からの動きに似ている。通貨安競争後に貿易戦争になり、そして戦争に向かう。その歴史を繰り返している。それを検討しよう。

歴史は繰り返す

バックナンバー「歴史は繰り返すが現象は違う」で、現状は2008年から始まる大恐慌が大戦争に向かう時代であるとした。まるで1929年の大恐慌から第2次世界大戦に向かう時期と同じ。歴史は繰り返すが、その現象は違うという格言の通りになってきたとしたが、そのシナリオ通りの展開になっている。

世界の株が暴落したが、徐々に元の水準に向かい始めて、日本も円高であるが株高になって、ほっとしている。今の円水準では日本企業の製品や部品の競争力は高いために、日本の経常収支は黒字になっている。しかし、米国の貿易赤字は悪化してトランプ大統領は次の一手を繰り出すようである。

それは、関税引き上げ法であるスムート・ホーリー関税法と同じような関税引き上げを米国への貿易黒字国に行うとした。このように、トランプ大統領は、まるでフーバー元米大統領である。

通貨安競争

もう1つ、今の政治は自国企業の利益を最大化して、雇用を作りたいと各国の政治家が思っている。この実現の簡単な方法が自国通貨の通貨安であり、世界の先進国は、新興国に産業の主導権を奪われているので、特に強く感じているようだ。

日本も物価上昇を目的とした金融量的緩和と言っているが、本当の目的は円安誘導である。景気がよくなっても止めないのは、経常収支が黒字であるため止めると円高になるからだ。

これに対して、日本の巨額国債でも潰れないことを見て、米国も減税とインフラ投資などの巨額の財政赤字で国債発行量を増やし、米国債の金利を上げてドル安にしている。普通はドル高になるはずが、米国の貿易制限で中国も貿易制限や米国債売却を行うことになるとみて、ドル安になっている。

もう1つが、FRBのメンバーに銀行関係者がいて、イエレン前議長を追出し、銀行出身のパウエル新議長にしているし、政権中核にもゴールドマンサックスの元経営陣メンバーがいるために、マイナス金利政策など銀行に不利な金融政策を政府・中央銀行がしたくないために、銀行に有利な金利上昇で、ドル安にする方法を探しているように感じていた。

それに比べて、日銀の理事たちは、学者と政府関係者、外銀が多く、日本の銀行の利益を考えない金融政策をしているようだ。そして、金利上昇を日本の現状では容認しないという確固たる意思を感じる。ここが米国とは違う。

このため、日本の銀行経営は厳しさを増している。流動性不安を心配する状況で、米国債の暴落により地方銀行で取り付け騒ぎが起きる可能性も感じる。日本だけ金融不安から景気後退というシナリオもあるかもしれない。

そして、米国は危機でドル安にする方法をとる。強い企業がある韓国はウォンが強い。そうすると、他の産業がつぶれる危機になり、韓国経済は弱くなる。強いことが弱さを呼び込み、逆に弱いことで強くなる例は日本で、日本国債発行量がGDPの250%もあり、弱いので円安になって、日本企業は強くなっている。しかし、現在は日本企業の競争力が高いので経常収支が黒字になり、円高になり易い。弱いのに強いということになっている。

貿易戦争に対抗策

しかし、米国が貿易を止めると、米国以外の各国はブロック経済圏を作り、そこで貿易自由化を拡大して、貿易量の維持を行うことになる。その1つがTPPである。

米国もそのTPPに加入交渉をするというが、米国に有利な条件で加盟するという。その交渉を始めるというが、貿易制限をしている米国をTPP加盟国はどう見るのであろうか?

カナダは、米国の条件を飲むくらいなら現在交渉中のNAFTAを離脱して、TPPに賭けると言っている。というように、TPP加盟国は米国の条件を飲まないようだ。

そして、今後、米中の貿易制限競争で世界経済は失速することが確実である。日本企業の売上増は米中の売上であり、日本の景気も急速に失速することが見えている。日本企業は強いが世界が弱くなるとそれに引きずられて日本も弱くなる。

このため、日欧FTAや東アジア地域包括的経済連携RCEPなどで米国を抜いたブロック経済圏を作り、米国抜きの世界経済を強くして世界の貿易量を確保することで、日本企業の業績落ち込みを抑えるしかない。

米国が今までしていた世界を考えることで、日本は生き延びることである。覇権国米国の代行を日本が行うことこそ、日本のやるべきことになる。世界の平和と経済を考えることである。

戦争経済に

というように、世界経済的に恐ろしい事態が進行している。世界の景気は確実に落ち、特にブロック化をしない米国の貿易量は大きく落ちることになり、特に米国企業の利益は大きく落ちることになる。米国優先の経済政策で米国が大きく傷がつくことになる。

米国経済が落ち始めると、戦争経済に向かうことになる。シリアや北朝鮮での紛争が進行しているのは、米国の経済が落ちた時に戦争経済に移行できるようにしているのではないかと疑いたくなる。

第2次大戦による戦争経済により、1929年の大恐慌の傷が癒えたように、2008年のリーマンショックの経済的な傷は、次の大戦争でしか癒えないとみている米国の知識人がいるようだ。このため、歴史は繰り返すのである。

北朝鮮と米国との戦争になれば、日本も無傷ではないはず。中東での戦争になってほしいが、しかし、どちらの戦争でも戦争になれば、核戦争になることが予想できるので、そうなってほしくないと願うしかない。

日銀手持ち国債を永久国債に

世界と日本の景気後退後、国債の消化ができず国債金利上昇が心配になるはずで、それに備えて日銀手持ち国債のゼロ金利永久国債化を行い国債償還を止めて、金利負担の上昇に備えることである。

1ドル=100円を下回る円高になったら、日銀手持ち国債を永久国債化して円高を止めると同時に、国債の償還量を少なくすることだ。円高解消と金利負担軽減という一石二鳥の政策効果がある。この政策は、財政ファイナンスそのものであり、為替ディーラーはびっくりするはず。

世界経済が失速すると、内需減少の日本企業の利益が急速になくなり、日本の経常収支は赤字になり、株安円安になる危険がある。輸入物価上昇でインフレになる心配をした方がよい。円高防止は日銀の国債直接購入などの財政ファイナンスと思われることを矢継ぎ早に行うことで、為替ディーラーをびっくりさせればよいので簡単である。

しかし、超円安になってしまうと、円水準を維持するのは大変で金利を上げることや出口戦略などの金融引き締めを行う必要になるが、景気がより悪くなる。そのようなことはできない。

米国の了承を得て円買いドル売りの円高方向の為替介入を行うことである。しかし、ドルを得るために米国債売却ということになり、米国金利が上昇する。米国が了承しない可能性もある。

このため、円高に過度な心配しないで、超円安になったときの対応策を今から考えていくことである。

さいごに

そして、いつも言うとおりに、財政均衡化を行い金融緩和を止めないと、いつかは大銀行がつぶれて金融恐慌になるし、または超円安になり、日本の破綻が起きる

また、財政均衡させるためには経済成長が必要であり、その経済成長には労働人口の増加が必要である。この2つを確実に行うことが重要であることを再度、言い添えておく。

さあ、どうなりますか?

image by: Shutterstock

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【著者】 津田慶治 【月額】 初月無料!月額660円(税込) 【発行周期】 毎月 第1〜4月曜日 発行予定

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