親なら誰しも「わが子の学力を上げたい」と願うものですが、勉強しろと口酸っぱく言っても、なかなか子どもは親の思い通りになってはくれません。そんな状況に頭を抱える親御さんたちのために、無料メルマガ『親力で決まる子供の将来』の著者で「ドラゴン桜」の指南役としても知られている親野智可等さんは「楽勉」という楽しみながらできる学習法を伝授しています。
子どもの学力を上げたいなら楽勉が一番
親はみんな、わが子の学力を上げたいと願っています。では、そのためにどうしたらいいのでしょうか? いろいろな考え方があると思いますが、私のイチオシは楽勉です。楽勉とは、生活や遊びの中で楽しみながら知的に鍛えることです。その中でもまずお薦めしたいのが本物体験を増やすことです。
例えば、ある男の子は休日に博物館の特別展に連れて行ってもらい、そこで本物の人工衛星、ロケットエンジン、宇宙服などを見ました。やはり本物は迫力があって、その子はとても喜んだそうです。その後は、テレビで宇宙関係のニュースが流れると真剣に見るようになり、小学生新聞や図鑑を見ていても、宇宙に関する記事があるとよく読むようになったそうです。
このように、子どもは本物を体験すると強烈な印象を受け、そのことに興味関心を持つようになります。すると、生活の中でそれに関する情報が流れてきたとき意識に引っかかるようになります。
知識の杭に情報がたまる
これは、川に杭を打ち込むようなものです。流れる川の中に杭を打ち込むと、流れてきた物が引っかかってたまります。先ほどの子は、生活という流れる川に本物体験によって宇宙に関する知識の杭を打ち込んだのです。すると、その後、生活の中で流れて来る宇宙に関する情報が引っかかってたまるようになりました。
これが数年経つとかなりの情報がたまり、ある程度まとまった知識になります。そうなったところで、学校の授業で宇宙や星の勉強をすると、内容もよくわかって非常におもしろく感じられます。宇宙に関する知識も興味関心もまるでない子がその授業を受けたとしたら、内容もよくわかりませんし、おもしろいとも思えないのです。
実は、勉強が好きでよくできる子には、このような知識の杭がたくさんあります。ですから、日ごろからいろいろなことに知的な興味関心を持ち、情報も自然にたまっているのです。
ということで、子どもたちには本物体験をたくさんさせてあげて欲しいと思います。発掘体験をして歴史に興味を持った子もいますし、水族館でメダカの卵を採取する体験をして、魚に対する興味が高まったも子もいます。
図鑑で知識の杭が増える
ここまで、楽勉の代表的なものとして本物体験について書きましたが、とはいっても全てにおいて本物体験をすることはできません。
そこでお薦めしたいのが楽勉グッズであり、その1つめが図鑑です。今、日本では図鑑革命と図鑑ブームが同時に起きていて、図鑑の質が依然と比べものにならないくらいよくなっています。迫力満点の写真やカラフルで美しいイラストが増えて、見ているだけで楽しくなります。説明の文章もわかりやすくなっていますし、トリビア的な知識を提供してくれるコラムも増えています。中には、付録のDVDで動画を楽しめる図鑑もあります。しかも、扱う内容の種類も増えています。昆虫、恐竜、動物、植物、魚、鳥、歴史、地理、人体、宇宙、世の中の仕組み、環境、季節と生活など、本当にいろいろなものがあります。
また、以前からあった博物型図鑑だけでなく、新しい発想によるテーマ型図鑑も増えています。例えば、「なぜ?の図鑑」(学研)では、「なぜオナモミは服につくのか?」「なぜうさぎの耳は長いのか?」など、子どもが不思議に思うことを横断的に扱っています。また、「くらべる図鑑」(小学館)では、乗り物、動物、人間などのスピードを比べたり、恐竜、ビル、乗り物などの大きさを比べたりしています。これらのテーマ型図鑑は、もともと子どもが興味を持ちそうな物を選りすぐって乗せてありますので、絵本や雑誌を見るような感覚で楽しく読むことができます。
さらに、図鑑の効果的な活用法として、テレビや親子の会話で出てきたことを図鑑で調べるのもお薦めです。例えば、ニュースで「去年の立春は2月4日でしたが、今年は2月3日です」と言っているのを聞いて、「え、そんなことあるの?」と思ったら季節と生活の図鑑で調べます。あるいは、お父さんが「今年は徳川家康がなくなって400年だから記念の行事が…」と言ったら歴史図鑑で徳川家康を調べます。こういう生活をしていれば、子どもの中に知識の杭がたくさんできます。
学習マンガは読みやすくて記憶にも残る
図鑑と並んでお薦めしたいのが学習マンガです。今は、書店や図書館に行けば実に多種多様な学習マンガが手に入ります。例えば、地球のなぞ、漢字のひみつ、魚のひみつ、単位の不思議、歴史マンガ、都道府県のなぞ、伝記マンガなど、子どもの勉強に役立つものがたくさんあります。
これらはなんといってもマンガなので、取りかかりのハードルがとても低いと言えます。つまり、誰でも気楽に読み始められるのです。それでいて内容はとてもしっかりしています。というのも、必ず各分野の一流の専門家が監修しているからです。
情報の量も充実していて、一冊の中に小学生にすぐ分かるレベルから、大学の教養レベルのものまで含まれています。例えば、地球の秘密を扱ったものには、地学、地質学・地球物理学・地球化学・岩石学・鉱物学・海洋学・気象学・地形学などの初歩が含まれています。そこでマントルとか地殻などの言葉を知れば、それらが知識の杭になっていろいろな情報がたまり始めます。
学習マンガで○○博士になる
子どもはマンガを楽しく読んでいるうちに、どんどん知識を身につけます。しかも、ストーリーに関連して覚えるので記憶に残りやすいという長所もあります。
私の教え子で、小学校の3、4年生ころから歴史マンガを読みまくっていた子がいました。その子は、他の勉強はそれほどできませんでしたが、6年生で歴史の勉強が始まったら歴史博士と言われるようになりました。彼はこれで大いに自信を持つことができました。
また、植物の学習マンガを読みまくっていた女の子もいました。この子は、小学3年生の時に、被子植物、裸子植物、単子葉類、双子葉類などという言葉も知っていました。
というわけで、ぜひ、子どもたちに学習マンガを読ませてあげてください。そして、子どもが読んでいるとき、「いい勉強してるね。○○の勉強が好きだね」とほめてあげると、子どもはうれしくなってその勉強が大好きになります。
初出『月刊サインズ・オブ・ザ・タイムズ(福音社)2015年2月号』
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