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いじめでなく「いじり」。学校が未だに嘘をつく、いじめ認知件数

教育の現場で頻発する「いじめ」を見つめ続けてきた無料メルマガ『いじめから子供を守ろう!ネットワーク』。今回の記事では、いじめに関してはまだまだ心配することは数多くあるとしながらも、メディアのいじめを扱う問題意識が高まり、さらに一部の教育者の意識が変わり始めたことで見えてきた「僅かな希望」についても記しています。

変わらざるを得なくなってきている教育現場

今年度も残りわずかとなりました。桜も開花し、多くの子供たちも4月からは、新しい生活が始まるこの時期、期待と不安の中で春休みを迎えていることだろうと思います。

ここ1ヶ月ほどで、新聞が1件と、テレビが2件、3件の取材の申込みをいただきました。いずれも地元の方の意見を伺いたいとのことで、各地域で長年、いじめ問題に取り組んでいただいているサポーター、協力者の方にインタビューに応じていただきました。

いじめに関して、メディアの問題意識が高まってきているように感じます。具体的には「いじめによる自殺」ではない事件であっても、大きく取り扱っていただけるようになってきたようです。

例えば、埼玉県川口市の市立中学で、男子生徒が不登校となっている事件では、第三者調査委員会がいじめが原因と認めた」と報道されています。生徒は自傷行為もするほどの状況にあり、文科省や県教委から再三指導されていたにもかかわらず学校や市教委は適切な措置を取らなかったというものです。

また、神奈川県茅ヶ崎市の小4年の男子が、いじめによって不登校になっている問題では、市教育委が、担任が虚偽の説明をしていたと報告を受けたにもかかわらず、調査を担当する第三者委員会に伝えていなかったことが報道されています。この事件では、担任が見て見ぬふり」したこと、「注意するのが面倒になった」とのとんでもない弁明をしていることが明らかになりました。


今、一般社会の常識から逸脱した教育現場独自の慣習に対して、「NO」が突きつけられていると言えます。この背景には、いじめ被害者やその保護者が泣き寝入りしなくなってきたことや、問題をおおやけにしようとする意識が高まったことがあると思います。

そのような状況の中、総務省の行政評価局の発表には興味深いものがあります。いじめの定義を巡り全国の公立小中高249校を抽出して調べた結果、24%に当たる59校が法律の定義よりも狭く解釈していたという調査結果が出ました。「行為が続いている」「集団的」といった独自の基準を加えていたのです。いじめを見逃したり深刻な事態を招いたりする恐れがあるため、同省は文部科学省に改善を勧告したという内容です。

広島市で昨年7月に起きた中3女子の自殺事件でも学校の認識は「いじめ」ではなく「いじり」だったということが先月報道されています。国の基準ではなく、独自の基準でいじめかどうかを判断している学校が跡をたちません。子供たちが「いじめられていると訴えたならばそこにいじめがある」と捉えるのがいじめ防止対策推進法の精神です。

文科省の発表している「いじめ認知件数は32万件程度ですが、実際には100万件をゆうに超えるものだと推測されます。国の基準をそのままに報告すれば、500万件程度のいじめ認知件数が報告されてもおかしくはないと言えます。

いじめ認知件数のうそ」については私たちも10年も前から指摘していましたが、今回、他省庁から改めて指摘されたわけです。文科省も今まで、知っていながら改善してこなかったわけですから、襟を正して、「いじめ認知件数」の正確性を期していただきたいものです。

一般社会の常識から逸脱した教育現場独自の慣習に対して、今、「NO」が突きつけられているのです。先週、こんなメールをいただきました。

先日要望書の期日の件ではお返事いただきまして、有難うございました。最後の対策防止等の提示のみを7日に変更しまして、火曜日に担任の先生と校長先生にお手紙をお渡ししてきました。

 

午前中に校長先生よりお電話があり、加害生徒から息子へ謝罪がありました。保護者への連絡もしていただきました。息子としましては謝罪してもらった事により気持ちも随分軽くなったようで、今後はやらないで欲しい、僕のような気持ちになるような生徒を作らないで欲しいと言うような事を学校で加害生徒に話したそうです。

 

1日で解決出来た事に驚いており、校長先生はじめ、学年主任の先生など沢山の先生にご協力頂けたことに大変感謝しています。

いじめは1日で解決できる」、学校にはこのぐらいの力量があります。ただ、一校、一校を見れば、いじめに真摯に向き合っている学校が増えてきているように感じます。私たちが活動を始めた10年前に比べて、先生方の若返りが進み、いじめに関する対応の仕方が変わってきていることも大きな要因だと思います。

また、マスコミによる報道に接することで、「隠蔽しても良いことがない大変な問題を引き起こすだけだ」ということも認識されつつあるのでしょう。

「いじめ問題」は異常事態です。学校が正常化するように心から祈っています。そのためにも、一つ一つのいじめ問題を解決していきたい、私たちは考えております。

最後になりましたが、私たちいじめから子供を守ろうネットワークも東京都港区赤坂に事務所を移転し、新たな出発の時を迎えました。事務所での面談をご希望の方は、ご遠慮無くお申し出いただければ幸いです。心機一転すると共に、初心にもどってこの新しい事務所から出発してまいりたいと思います。

一般財団法人 いじめから子供を守ろうネットワーク
代表 井澤一明

image by: Shutterstock.com

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「いじめ」と学校の「いじめ隠ぺい」から、子供たちを救うための、父母によるネットワークです。いじめの実態やいじめ発見法、いじめ撃退法、学校との交渉法、いじめ相談などを掲載します。

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【著者】 いじめから子供を守ろう!ネットワーク 【発行周期】 週刊

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