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いよいよ本気出すトランプ。日本は米中貿易戦争に巻き込まれるか

トランプ大統領の中国に対する貿易制限を受け、中国側もその対抗措置として同程度の貿易制限を宣言し、さながら米中貿易戦争の様相を呈しています。この戦いをすでに誰よりも早く予測していた、メルマガ『国際戦略コラム有料版』の著者・津田慶治さんは、株価暴落や日米関係の遠くない未来について改めて予測。そして、近く行われる日米首脳会談で日本がとるべき行動について持論を展開しています。

トランプ革命本番に

トランプ大統領の対中貿易制限に対して、中国同程度の貿易制限をした。しかし、トランプ大統領は、中国の動きに反発して、貿易制限を拡大するという。今後どうなるか検討しよう。 

0.貿易制限の応酬

トランプ大統領は、1300品目・5兆円の中国輸入品に最大25%関税を掛けると宣言。対抗処置として中国も同規模の米国輸入品に25%関税を掛けることにした。その中の大きな部分に大豆があるが、2016年生産では1位米国117百万トン、2位ブラジル96百万トン、3位アルゼンチン59百万トンであり、この3国が主に輸出可能国である。

このように大豆の輸出量が多くないのに、中国の輸入量は、世界の輸入量の内60%も占めている。一番輸入量が多いのはブラジル産であり、ブラジル産の半分程度の量が米国産の輸入量である。米国産大豆の中国輸入金額は200億円~400億円程度。

しかし米国産からブラジルやアルゼンチン産にシフトするのは難しい。よって、25%関税で物価が上昇することになるだけであり、中国での大豆利用のほとんどが飼料であり、飼料の品目を変えることになると思われる。

日本は中国に価格の上で買い負けていたので、日本にとっては非常に良いことになる可能性があるが、米国産は遺伝子組み換えの大豆であり、買えるかどうかだ。どちらにしても、米国は売り先が変わり、価格が若干下がる程度で、大きな障害にならない。

この中国対抗の処置が出た瞬間は、トランプ大統領はツイッターで「米国は中国と貿易戦争は行っていない。こうした争いは何年も前に米国を代表した愚かしく無能な人々が戦い、負けている」と述べた。続いて、米ホワイトハウス当局者もトランプ政権はこれ以上の中国に対する貿易を巡る措置は現時点では計画していないとした。

また、カドロー米国家経済会議(NEC)委員長は「これは貿易戦争ではない。双方で重点的に交渉が行われると思う」と述べ、「米中は合意に達することになると思う。個人的な見解では、中国は主張を引っ込め、歩み寄るだろう」と付け加えた。

このため、5日のNY株は大幅上昇した。日経平均も上昇して、やっと、貿易戦争の懸念が低下して、株価も下げ止まったかなという市場関係者が多かったが、甘かったようである。

1. 貿易戦争の拡大

トランプ大統領は、大豆農家の被害が大きくないことと、中国の出方が厳しいと知り、考えを変えたようである。中国対抗策に対して、トランプ大統領は、追加で10兆円に拡大して貿易制限すると表明したのだ。

今まで除外していた米アップルの「iPhone」に代表されるスマホやパソコン衣服や靴おもちゃなど輸入額が大きい消費財にも貿易制限が及ぶことになる。この多くの製品は、米国企業の現地生産分も含まれているので、影響範囲は米企業にも及ぶことになる。

対する中国も、中国商務省の報道官は「米国が単独主義と保護貿易主義を堅持するならば、中国は最後まで付き合う。いかなる代償も惜しくないし、必ず反撃する」と声明し、同規模の貿易制限を行うとした。

このため、6日のNY株は500ドルも下落した。

しかし、中国の米国品輸入金額が6兆円程度であり、輸入品の貿易制限だけでは10兆円規模にならない。このため、中国国内での米企業活動の制限が加わることになるとみる。

米国企業は、米国への輸入でも、中国での販売でも二重に制限がかかる事態になり、先行きに大きな懸念が出てきたことになる。

それと、米国債を売却に踏み切る可能性がある。もし、売却になると米長期金利は3%以上に上昇して、株価の暴落になる可能性もある。

しかし、このような事態になっても、トランプ大統領は怯まないはず。信念があり、それを実行することに政治生命を掛けている。トランプ大統領は、革命家である。この信念で世界も米国も変わってしまうことになる。

2. 見方の変更が必要

トランプ大統領が富裕層の利益を優先すると見ていた投資家は、大きく見方を変える必要になっている。日本の安倍首相も見方を変えて、日米首脳会談に臨むべき。日本企業のトップも見方を変えるべきだ。

革命を宣言したトランプ大統領就任時の演説を再度確認した方がよい。重要な一部を抜き出して書いてみたが、このトランプ大統領の信念は本気であり、今までとは違う歴史的な革命である。

これを実行し始めたと見るべき時が来たようなのだ。

投資家や富裕層や政治家など、今までの既得権益者の利益より米国の普通の国民労働者の利益を考えて行動するということ。既得権益を潰すことになり、それは株価にも大きく反映されることになる。

株暴落後、海外で生産している米企業は、国内に生産拠点を移すことになるし、外国企業でも米国生産なら問題なしである。

カドロー氏やムニューシン氏などより、トランプ大統領の方が革命を意識している。このため、トランプ大統領が、過激な政策を宣言した後、2人は問題を小さくするために緩和的な発言をするが、そうすると、大統領は否定して、より過激な政策を指示するようだ。

3. トランプ大統領就任時の演説抜粋

本日の式典には、とても特別な意味があります。なぜなら、ひとつの政権から別の政権へ、または、ひとつの政党から別の政党へ、単なる政権交代をしているわけではなく、ワシントンD.C.から国民である皆さんへ、政権を取り戻しているからです。

あまりにも長い間、ワシントンにいる一部の人たちだけが、政府から利益や恩恵を受けてきました。その代償を払ったのは国民です。ワシントンは繁栄しましたが、国民はその富を共有できませんでした。政治家は潤いましたが、職は失われ、工場は閉鎖されました。権力層は自分たちを守りましたが、アメリカ市民を守りませんでした。彼らの勝利は、皆さんの勝利ではありませんでした。彼らは首都ワシントンで祝福しましたが、アメリカ全土で苦しんでいる家族への祝福は、ほとんどありませんでした。

(略)

何十年もの間、私たちはアメリカの産業を犠牲にし、外国の産業を豊かにしてきました。他の国々の軍隊を援助してきました。一方で、アメリカの軍隊は、悲しくも枯渇しています。私たちは他の国の国境を守っていますが、自分たちの国境を守るのを拒んでいます。海外に数兆ドルを投資しましたが、アメリカのインフラは絶望に陥り、腐っています。他の国々を豊かにしましたが、自国の富、力、自信は、地平線のかなたへ消えて行きました。ひとつずつ、工場が閉鎖され、この国を去りました。数百万人のアメリカ人労働者が置き去りになることなど考えもしないで、そうしたのです。中間層の富が、その家庭から奪われ、世界中に再分配されました。

(略)

貿易、税金、移民、外交についてのすべての決定は、アメリカの労働者と家族の利益のために下されます。他国の暴挙から国境を守らなければなりません。彼らは私たちの商品を生産し、私たちの会社を盗み、私たちの仕事を破壊しています。保護こそが偉大な繁栄と力に繋がるのです。

(略)

私は全力で皆さんのために戦います。決して失望させません。アメリカは再び勝利します。これまでにない勝利です。雇用を取り戻し、国境を回復し、富を取り戻し、そして、夢を取り戻します。

(略)

私たちは2つの単純なルールに従います。アメリカ製の商品を買い、アメリカ人を雇うことです。世界の国々と友好的な善意の関係を築きますが、すべての国には自国の利益を優先させる権利があることを理解した上で、そうします。

(略)

今、行動の時が来ています。それはできない、と言うのはやめましょう。どんな課題も、心を開き、戦い、アメリカの精神を持てば、乗り越えられます。失敗することはありません。私たちの国は再び繁栄し、栄えるでしょう。

大統領就任時の演説をトランプ革命の宣言書と見るべきでしょうね。

4. 自動車の貿易制限

そして、中国の貿易制限は交渉を待つことになるが、トランプ大統領的には中国との問題は、解決できて終わっている。中国が米企業の中国での活動制限と米国の輸入制限品目に米企業の製品名が出ることで、米企業は生産を米国に戻すからだ。

大豆の輸入制限で、米農家はあまり困らない。現在、一方的な貿易であり、中国が10兆円の貿易赤字削減を実行できないときは、貿易制限を行うだけである。関税という税金も手に入ることになる。

このため、トランプ大統領の頭は、次の貿易政策に移行している。日本とドイツをターゲットにした自動車輸入制限処置である。輸入自動車の環境基準を厳しくするというが、ドイツや日本の内燃機関の自動車を締め出すことになり、電気自動車しか輸入できないようにすることのようである。

この処置で、日本の自動車メーカーはすべて米国生産車を米国で売ることになる。マツダと富士重工の米国工場は増強する必要がある。差別化されているドイツの高級車は関税UPでも売れ行きは、あまり違わないので、放置。

そして、日本の米国への輸出品の多くが、他国企業とは差別化されているので、多くの品目は輸入制限されても放置するべき。そして、差別化できていない品目は米国生産にすることだ。

このような貿易制限では、一番、米企業が影響を受けることになる。日本企業はすでに、米国生産を軌道に乗せているので、影響が少ない。

5. 日米首脳会談

日米首脳会談が4月17日に行われるが、この時、日米同盟と貿易を絡まされて、貿易面で譲歩を引き出す戦術であるから、この準備をすることである。

米国工場を増やすこととシェール石油、農産品関税引き下げによる輸入で、貿易不均衡をゼロにする方策を作り、最初にトランプ大統領に示して、日米同盟堅持を確認することである。これしかない。

貿易赤字の問題と日米安保体制破棄を先に言い出される前に、日本が譲歩をした方がよい。事務方でも協議して臨むと思うが、安倍首相が直接、トランプ大統領に話した方がよい。

首脳同士が分かり合える関係を築いているのは、この先も日米間では必要である。安倍首相が3選できずに辞任しても安倍・トランプラインを維持した方が日本の利益になる。

さあ、どうなりますか?

image by: Alexandros Michailidis / Shutterstock.com

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【著者】 津田慶治 【月額】 初月無料!月額660円(税込) 【発行周期】 毎月 第1〜4月曜日 発行予定

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