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ライト陥没のまま走る上海リニアは安全か?在留邦人が現地ルポ

ドイツの技術を流用し、2004年に日本より一足先にリニアモーターカーの商業運用を開始した中国。その乗り心地、そして安全性は如何に? また最近の日本で議論されている「手荷物検査」の有無は? 無料メルマガ『上海からお届け! 簡単3分、写真で覚える生活中国語』の著者で中国在住の日本人著者・ジンダオさんが、写真満載の乗車レポートを届けてくれました。

最先端技術とリスク管理の欠落が混在する中国リニアモーターカーに乗ってみた

日本へ帰国する際に利用している上海の「浦東空港」。空港から上海市内へのアクセス方法は「シャトルバス」「タクシー」「地下鉄」そして「リニアモーターカー」の4つの方法があります。

日本でも最近何かと盛り上がりを見せた「リニアモーターカー」ですが、気が遠くなりそうな試験運転の期間を終え、ついに建設の話が進みだした途端に、談合のニュース。

そんな日本のニュースが頭に残っていたので、今回は久しぶりに「上海リニアモーターカー」に乗車してみることにしました。

浦東空港から市内へ移動。上海リニアモーターカーの基本情報

浦東空港から上海市内への移動手段の案内板を見上げると、「シャトルバス」「タクシー」「地下鉄」の案内の中に「磁浮(ci fu)」の表記が。「磁浮」とは「磁力で浮遊の意味」まさに「リニアを指す中国語の表現です。

案内板に沿って進んでいくとチケットセンターが見えてきます。リニアモーターカーの一般席のチケットは片道50元(約850円、2018年6月現在の1元=17円で換算)。しかし当日乗車のエアチケットを窓口に提示する、もしくは交通カードで乗車すれば片道40元(約680円)で乗車が可能となります。

乗り場近くにあった「乗車ガイド」を見てみると、私も知らなかったのですが運行の時間帯によって最高速度が違うそうで、朝の9時からの便と午後の15時からの便が最高速度430キロ、それ以外の便は最高速度300キロで運行しているそうです。

基本情報を抑えたところで、イザ! 改札へと向かったのですが、改札口に新しい変化が。上海の地下鉄と同様にリニアモーターカーの改札口がリニューアル対応。乗車チケットや交通カード以外に「スマートフォンQRコード」で乗車可能となっていました。

ついに上海の地下鉄にスマホQRをスキャン対応か? 改札【检票】

アプリをインストールして電子マネー決済の対応をしておけば、上海の交通機関と同様にキャッシュレスで乗車ができます。私は携帯のICチップを利用した「スマートフォン交通カード」を使っているので、今回は「スマートフォン交通カード」で乗車することにしました。

さよなら交通カード。スマホICタグで交通カード登録術

現時点で上海リニアモーターカーは、「通常の乗車チケット」、「交通カード」、「スマートフォンQRコードチケット」、「スマートフォン交通カード」と、乗車チケットの選択肢の幅が広がっていました。

日本では、最近発生した新幹線内の痛ましい事件を受け、新幹線にも「手荷物検査」は必要か?という議論がなされているようですが、上海リニアモーターカーでは上の写真でわかるように「手荷物のX線検査」があります。

当初は無視して通る人もいましたが、今ではみんな手荷物をX線で通してから駅に入るのが一般的になりました。

今回の新幹線で発生した殺人事件では、JR側の回答として手荷物検査の義務化は難しいとの話が出ていましたが、手荷物検査を厳しく実施すると乗車の遅延、検査場所や人員の確保、場合によってはダイヤに影響が生じますし、今までのように「チケットを購入して直ぐさま乗車」という手軽さが無くなってしまうのも事実です。

しかし車両の安全性が高くても、乗客の安全性が低ければ、今後も今回の殺人事件のような模倣犯が現れるかも知れません。

そして中国・上海では、すべての地下鉄で手荷物検査を実施。しかし、やる気の無いスタッフが、おしゃべりをして検査をしていたりしていなかったり。乗客もX線検査機に荷物を通したり通さなかったりと、ノンビリとした風景が残っています。

また、ところ変わって北京の場合は、乗客の全員がX線検査機に荷物を通し地下鉄に乗り込んでいます。

この辺の生真面目な性格も上海と北京の相違点の一つで、政治の街のお膝元、北京らしく面白い点でもあります。

改札口を抜けたら、出発まで待合室で乗車待ち

改札を抜けると後は乗車するだけなのですが、待合室にはAホームとBホームの表記があり、2つのホームからリニアモーターカーが交互に出発しています。今回は定刻22時15分の出発でしたが、出発の20分前に案内があり乗車開始。

リニアモーターカーの一般車両は片側3席の一列6席の構成。各座席にはそれぞれ座席番号の案内がありますが、自由席なので気にせずに好きな場所に座ることが出来ます。

一部の座席は向かい合っているので、リラックスして足を伸ばしている乗客も。正直なところ座席のクッション性はそこまで良いといえませんが、乗車時間も短いので気にならない程度です。

今回はスピードメーターが表示している近くの座席で、実際に速度が上がっていく様子を確認することにしました。定刻通りに出発するとグングン速度が上がり、2分足らずでこの便の最高速度の時速300キロ達成!

私も何度か乗車していますが430キロの場合は少々揺れを感じますが、300キロだと気になるほどの揺れは、そこまでありませんでした。

浦東空港から終点の龍陽駅まで停車駅は無いので、あっという間に約8分で終点に到着。下車後、乗車前に撮れなかった、先頭車両を撮影しようと駆け寄ってみたのですが…、何かに当たったのでしょうか、車両のライト部分が完全に陥没。なんとライトが陥没したままで走行していたのでした。

いやはやチケット購入などの電子マネー決済のデジタル化は日本を追い越すほど急速に進んでいるのに、本体車両のメンテナンスが行き届いていないとは! すぐさま事故に繋がる可能性は低いのかも知れませんが、早急な対応を期待したいですね。

代替え車両が無いのか? もしくはライトのパーツの在庫待ちの状態か? ちゃんとオチを付けてくれた上海リニアモーターカーの乗車レポートでした。

ジンダオのここだけの話

日本のリニアと中国のリニア。技術的に全く違うらしいのですが、日本が違う技術を採用して技術面も安全面も中国よりも断然優位なのは良く分かりますし、上海のリニアモーターカーは自国の技術ではなく、ドイツの技術を流用した品という点も分かります。

しかし導入した技術が古くても「世界初の常設商業」という言葉と「他国の技術でも購入して運営したお陰で自国の利益やアピールに繋がっている」訳でして、この辺の物事の発想が日本人と中国人で違っているので、アレコレ言い争っても意味が無く平行線をたどってしまいます。

現在の中国リニアモーターカーが技術的にも設備的にも運用が難しくなった時には、日本のリニアモーターカーが運用を始め、中国でも日本のリニアモーターカーを導入する動きがあるかも知れません。

日本は技術やノウハウを積み重ねて時間をかけて導入し、中国人は新しい技術を他国からでもかき集めて投資して導入する、この辺も両国の大きな考えの違いなのかも知れません。

どっちが良い悪いということでなく、「国民性の違いかも」と割り切って知っておいた方がいいと思っています。

日本リニアモーターカーは品川と新大阪間の開業が2045年を予定しているそうですが、開業までにリニアモーターカーの乗車体験ができるチャンスは非常に少ないようです。

私個人としては「じーっ」と開業を待っているより、違う技術のリニアモーターカーでも、中国で乗車体験できるのは、経験の一つとして大切だと思っています。

ただライトが割れている等、事故に影響を及ぼしかねない状態での運行は勘弁して欲しいです。保守や整備などの運用面が後回しになるのも中国らしい部分です。

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【著者】 ジンダオ 【発行周期】 ほぼ 週末刊

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