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住民がやってしまうという選択。マンション管理人不足の解消法

一軒家に比べてマンションの良い点は、共用施設の掃除やごみ集積所の管理など、何かと面倒な仕事を管理会社が代行してくれることです。では、それらを住民がやらなければならなくなったとしたら…。今回の無料メルマガ『まんしょんオタクのマンションこぼれ話』では著者の廣田信子さんが、マンション管理の現場で起きている危機的状況を紹介しつつ警鐘を鳴らしています。

マンション管理業界の人手不足から見えるもの

こんにちは! 廣田信子です。

マンション管理の現場での管理員・清掃員の不足は深刻です。マンション管理業界の採用事情に詳しい方からその現状について伺いました。

マンションの管理員や清掃員の募集には、少し前までは、企業の早期退職制などもあったので50歳位からの応募もあり、元気な方々がたくさん応募されました。年齢の高い方の再就職先は限られていましたので

ですから、採用する側も余裕があり、まず、書類を送ってもらって、審査の後、面接をして採用を決めていました。その方々にマンション管理業界は支えられていたのが現状です。

その方々は、つらいこと、疲れること、嫌なこと、手の汚れること等々、文句を言わず、あるいは言いながらでも実行してくれました。昨今、その方々は年齢的に労働現役を引退しています

次の世代は、企業の定年が延長され、しかも、人手不足で、企業が積極的に退職者を再雇用するので、65歳や70歳まで現役として働き続けるためマンション管理の管理員・清掃員の仕事にまでは人が回ってきません

時代も変わり、働く人の意識も変わります。目の前に仕事があれば、とりあえずやってみる世代とは違い、最近のハローワーク登録者や派遣会社登録者は、やる前に吟味して何か気が進まないと思えばそこで止まります

人気なのは、事務所内の楽な仕事。でもそんな仕事は求人数も少なく、募集などせずとも、紹介で埋まります。次は、仕分けの仕事です。倉庫内や事務所内での簡単な作業です。雨風にあたらず、冷暖房完備の場所での仕事です。最近は、こういった仕事でも、人手不足で採用年齢を引き上げているので、高齢者の選択肢の中に含まれるようになってきたのです。

最後に仕方なく、マンションの管理員・清掃員のような少しきつい仕事に流れるという順番です。だから、どんなに管理員・清掃員の求人してもなかなか人が集まらないのです。

コンビニ、飲食店、ビル清掃、工事現場等すでに、外国人労働者に支えられていますが、住民とのコミュニケーションが重視される管理員、居住スペースの中に入る清掃員には他の業界のように、外国の方の採用は簡単ではないのです

今、東京23区では、時給1,200円+交通費では人が集まりません。時給1,500円位でやっと来てくれるかなといった具合です。それでも、大型マンションは基本的にフル勤務(週40時間)ですので、人が集まりやすいのですが、30戸以下のマンションは、週8時間や週12時間なんていうところもあります。そんな短い時間の現場の仕事は見向きもされません。

しかし、契約にある以上、管理会社は絶対に誰かを派遣しなければならず、やむを得ず、派遣会社へ依頼しています。現在の派遣会社の相場の例を挙げると、6時間の場合、日給1万2,000円位ですから、時給2,000円位のコストがかかります。2時間以下の場合は最低が1日5,000円時給2,500円位かかるのです。当然、この費用に見合った額を管理組合からいただけていないので、逆ザヤになり収益を圧迫します。

このままの状態が進んだら、小規模マンションの管理は、コストに見合う大幅な値上げをお願いし、受け入れてもらえなければ、管理会社側から契約を止めることも視野に入ります。とりあえずは、大手管理会社がこれを始め、中規模・小規模の管理会社は、利益が出にくくてもひとまず受け入れるでしょうから、急に管理会社難民になることはないと思いますが、それもいつまでの続くのか…先が見えないのが現状なんです…と。

で、管理員・清掃員の問題だけではなく、フロントマンマンション担当者も常に採用をかけている状況で、二重の人手不足に悩まされているのが多くの管理会社の現状だといいます。

先日、管理会社から引き抜かれていくつか管理会社を変わったという方が言っていました。どの管理会社も同じで、来てほしいときは必死なので、いい条件を出すけど、採用してしまえばあとはもう現場に放り出すだけ

で、人が辞めるので、常に人手不足で、残っているフロント、特に仕事ができるフロントは集中的に面倒な担当を押し付けられているのが現状。その中でも、上に行こうとする人は、上手に、現場の面倒なことから逃げる。で、資格を取ったり、社内営業することにエネルギーを使う。

あまりの負担の偏りを何とかしてほしいと言っても、人がいないのでどうしようもない…と言われるだけ。で、その状況から抜け出すには、辞表を出すしかない…という悪循環。先の展望がなく体や精神がやられるよりはましなので辞めることになる。この業界では、常に人が足りなくて求人があるので、就職先には困らないから…。

でも、いくつか会社を変わって、どこに行っても結局この業界は同じだと気づいた。で、ここから抜け出すことにした…と。

正直、最近、フロントの方の質とやる気の低下が気になっています。この状況が続けば、人で成り立つマンション管理業の健全性も、そのサービスを受ける管理組合の利益も損なわれることになります。それでも、本当に困るまで、なかなか状況が改善されないのが現状です。管理組合の側も現状を踏まえた上で少し柔軟に考えてみませんか

以前ご縁があった20戸ちょっとの小規模マンションを思い出しました。理事の使い込みがあって、非常に厳しい状況に追い込まれ、節約できることはできるだけ節約しなければ、大規模修繕工事もできないということになり、定期的な機械清掃を取りやめました。で、デッキブラシをたくさん購入して、年3回、住民総出で共用廊下やエントランスの清掃をすることに。確か、清掃に詳しい方がいたのだと思います。

使い込みを許すぐらい無関心だった管理組合が、この危機で、清掃という作業を通して、会話を交わす機会が増えものすごくいいコミュニティになっていました。何も、全戸が参加する必要はないのです。半分も参加すれば十分です。

この清掃日に合わせて、豊富な道具で、ついでに自宅バルコニーを清掃したり、暮れの清掃時には、共用廊下側の窓を同時に一斉清掃したり、清掃の時に、建物の不具合に気がついたり…と、プラスの効果もあります。

夏、子供たちは水遊び感覚で楽しんで参加します。で、汗だくになっても、汚れても、すぐ自宅に戻ってシャワーを浴びてさっぱりできます。

これは、特殊な事例かもしれませんが、小規模マンションは、外注すれば割高になる傾向はますます強まると思いますが、自分たちでやる気になれば始めやすい環境でもあるのです。

自分たちで、自分たちのマンションをきれいにするために汗を流した心地よさはお祭りの準備の汗と変わらない…そんな気がします。

image by: shutterstock

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【著者】 廣田信子 【発行周期】 ほぼ 平日刊

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