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台湾代表の選手に「中国」のテロップ。炙り出されたTBSの媚中度

池江璃花子選手らの活躍に日本中が沸き、9月2日に幕を閉じたアジア大会2018。しかし開催中には政治的なトラブルも頻発していたようです。台湾出身の評論家・黄文雄さんは自身のメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』で、TBSが台湾選手の国籍を中国と表記したことに注目。各方面からの指摘や批判を受けるやすぐに訂正した同局の姿勢に疑問を呈するとともに、来るべき東京五輪での台湾の扱いにより、日本の各メディアの「媚中度」が炙り出されるとしています。

※ 本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2018年9月6日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:黄文雄(こう・ぶんゆう)
1938年、台湾生まれ。1964年来日。早稲田大学商学部卒業、明治大学大学院修士課程修了。『中国の没落』(台湾・前衛出版社)が大反響を呼び、評論家活動へ。著書に17万部のベストセラーとなった『日本人はなぜ中国人、韓国人とこれほどまで違うのか』(徳間書店)など多数。

東京オリンピックでの台湾の扱いで媚中メディアの本性が炙り出される

● <台湾・日本>台灣最速男國籍被改為「中國」 他向日本TBS電視台抗議

この夏、ジャカルタで開催されたアジア大会2018は、結果的に競泳の池江璃花子選手をはじめとする日本勢の強さを示す形で幕を閉じました。

しかし、大会開催中には選手を巻き込んだ、小さな政治的なトラブルがたくさんありました。その一つが上記の記事です。台湾最速男と呼ばれる楊俊瀚(ヤン・ジュンハン)の国籍が、TBS放送のテロップで中国となっていたのです。競技は陸上男子200メートル走でした。以下、報道を一部引用します。

同日のレースでは、日本の小池祐貴と楊が並んでゴール。タイムはともに20秒23だったが、小池が1,000分の2秒上回り金メダルを獲得した。自由時報は、このレースを中継したTBSが「4レーン 楊俊瀚 ヨウシュンカン(中国)」と表示していたことについて、日本のネットユーザーから「台湾は中国ではない」「TBSは大失態だ」「楊選手は台湾の代表なのに」といった声が上がっていると伝えている。

日本のテレビ局が台湾選手に「中国」の国籍紹介、ネットで物議―台湾メディア

ということで、日本からも即座に批判の声は上がり、同時に台湾からも、すぐに間違いを指摘する声は上がったようです。大会終了後もTBSのアジア大会特設ホームページは残っており、問題の競技の動画も閲覧できますが、ここではすでに楊俊瀚の国籍は台湾に変更されています。

アジア大会2018 ジャカルタ

アップルデイリーの記事には、「これをわざとと言わないのであれば、わざととはどんなことを指すのか!!」と、激しい口調で記事は結ばれています。

私は、日本で台湾人が中国籍と表記されたことに対しては、またいつもの媚中行為かという程度にしか思いませんが、この出来事を俯瞰してみると、台湾もついに陸上選手の国籍が中国と表記されたことに対して怒りの記事が出る時代になったのだなあと、そちらのほうに注目してしまいました。

今の台湾は、独自の道を自らの手で切り開き歩いています。それが自信となり、政府も人々も、台湾全体が自信に満ち溢れた空気になっています。そのことだけでも私は涙腺が緩むほどで、台湾人は台湾をここまで成長させたということに感動すら覚えます。

昨今、中国が躍起になって世界に向けて台湾や香港表記を抹消させすべてを強制的に中国との表記に変更するよう要請していることは、このメルマガでも再三にわたって取り上げてきました。

無印良品も標的。「台湾製」表記を認めない中国の止まぬ嫌がらせ

世界各地の航空会社やホテルチェーンなどの民間企業に向けて、地域を表示する際には台湾や香港はすべて中国と記すことを要求し、さもなくば中国市場から締め出す、と脅しているのです。

それだけでは飽き足らず、アジア大会中の選手も操作していたようです。例えば、陸上女子100メートルハードル走の中国選手は以下のようなことを言いました。報道を一部引用します。

レース直後に中国中央テレビ(CCTV)のインタビューを受けた王逗(ワン・ドウ)は、涙を浮かべながら「良くなかったです。飛び出した瞬間に、隣のレーンの日本選手と手が当たりました。それで、リズムが狂わされました」と語った。インタビュアーが「4位でも満足はできなかった。もっと良い走りができたということですね? メダルも狙えたと」と聞かれると、「そうです。メダルを取りに来たので。こんなことが起こるなんて思ってもいませんでした。残念です」と応じた。8レーンで走った王の隣の7レーンは紫村仁美で、紫村は7位だった。これについて、中国のスポーツメディア・新浪体育は、「王は『日本選手に手をたたかれたので、実力がうまく発揮できなかった』と語った」などと伝えている。

日本の選手に手をたたかれた?中国メディアが選手のコメントを曲解、ネットでは批判も

中国選手が「日本人選手と手が当たった」と言っているのを、中国メディアが「日本選手に手をたたかれた」と言い換えて、いかにも日本人選手が故意に妨害したかのように報じたわけです。

このような例はいくらでもあります。競泳男子200メートル平泳ぎでは、以下のような記事がありました。以下、記事を引用します。

21日の決勝で、小関は2分7秒81を記録し金メダルを獲得。2位には0秒01差で渡辺一平が入り、3位は中国の覃海洋(タン・ハイヤン)だった。このレースについてCCTV記者の馮旭(フォン・シュー)氏は、水中カメラの映像から「スタート時に1回しか認められていないドルフィンキックを小関は2回使用した」と指摘。「水中カメラの映像はテレビ放送用で、今回は水中の監視システムがなかったため審判が見逃した」「小関はこの穴を利用した。故意の、そして低劣な行為だ」などと批判した。

日本の競泳金メダリストが反則していた!中国国営テレビが暴露、しかし…

まあ、どれもこんなような内容で、要するに日本に言いがかりをつけて批判しようということです。まるで当たり屋のヤクザのようなものです。

しかし、かつてと今では社会も人も変わっています。何よりネット時代の今、中国政府がいかに人々の口を塞ごうとしてネット規制やら閲覧規制やらをしても、情報を完全にシャットアウトすることはできないし、人々を完全にコントロールすることもできません。

こうした明らかに言いがかりと見える報道に関しては、中国でもネットでは冷静に受け止めている声も少なくないようです。陸上女子の記事については、「手がぶつかっただけで、たたかれたとは言ってない」とネットユーザーからの声もありました。競泳男子の記事には、「よく見ると2レーンの覃海洋も複数回キックしている」といった声もあったそうです。

中国の仕組んだプロパガンダは、ネット時代の今国内でも通用しないということでしょう。話を冒頭のTBSに戻しますが、TBSもこうした批判が出ることがわかっていながら、なぜ媚中的行為をするのでしょうか。会社の方針として、中国の主張を遵守するから批判や訂正要請にも応じないというのなら、それも一つの姿勢でしょうが、結局は後から訂正するわけですから本当に情けないことです。

「一つの中国」をめぐって中国と台湾がもめていること、中国が「台湾」表記を取りやめて「中国」表記をするように他国企業に強要していること、また一方で、実質的に台湾は民主主義国家であって、中国とは全く異なること、大半の台湾人の意識も自分たちは中国人ではないと思っていることなどは、すでに日本でもよく知られるようになりました。少なくとも、メディアで国際関係に携わっている者なら、「常識の範囲でしょう。

「知らなかった」などということはあるはずもないことで、結局、中国の顔色を見ながら、「反発があったので表示を戻しましたが、一応は、中国の主張に沿って表示しました。努力しました」というアリバイ作りをしたかったのではないかと疑ってしまいます。

先に、日中高官協議の冒頭取材を産経新聞が中国から拒否され、そのために日本記者クラブが一丸となって取材をボイコットしました。私もだいぶ以前とは日本のメディアの姿勢が変わったと思いましたが、日本国内においては、メディアの中国への忖度ぶりはまだまだ健在のようです。

先のメルマガでは、日中記者交換協定のことを述べましたが、日本のマスメディアも、そろそろ戦後ずっと続けてきた媚中姿勢を改め自分の力で前進するべきです。

ところで、中国政府が台湾を「中国」と表記することは、国共内戦時代からあり、決して近年に始まったことではありません。自分の願望を一方的に押し付けるのが中国のやり方なのです。

とくにこのところ、中国が台湾への圧力を強めている背景には、「92共識」(国民党政府と中国共産党が1992年に、どちらが統治主体であるかは別として、「一つの中国」で合意したとされる認識。蔡英文総統や李登輝元総統はその存在を否定している)を、蔡英文総統が認めないことがある。

さらに、米中貿易戦争が過熱するのと同時に、アメリカは「台湾旅行法」を制定して米台の政府高官の相互訪問を促進させたことも大きいでしょう。中国はアメリカに対しては表立って手も足も出ないため、その鬱憤を台湾いじめに転じ、スポーツの場でも、台湾を中国と表記するよう各国各社に圧力をかけているのでしょう。

台湾に対しても、あの手この手で「いう通りにしろ」と強要しているのです。しかし、中国がそうすればするほどアメリカと台湾は接近し、アメリカは台湾を支持するようになります。それだけ、中国の焦りが表面化し世界に中国の醜態がさらされるわけです。

チベット、ウイグル、南シナ海、東シナ海問題と同様に、中国は力によって台湾を併呑しようとしていることが、明らかになってくるわけです。

「台湾は中国の絶対不可分の一部」という主張は、江沢民時代に作成された「台湾白書」にまも書かれていました。中国がどれだけ台湾が欲しいかがわかります。この主張は70年近くも続いています。いつか「武力統一」するという噂も常にまことしやかに流れています。

しかし、ではそれはいったいいつなのかというと、誰にも分かりません。米中両政府にもわからないでしょう。米中は現在、貿易戦争に夢中です。双方とも、これにいつまで耐えられるでしょうか。

アジア大会が終わり、2年後にはいよいよ東京オリンピックです。以前のメルマガでもご紹介したように、東京オリンピックに向けて、台湾は「チャイニーズ・タイペイ」ではなく、「台湾」「TAIWAN名義で出場しようという運動が日本でも広がりつつあります。

台湾で「日本に感謝」の声。国際大会を中止させた中国の大誤算

私もさまざまなところで、この「台湾正名」(名を正す)運動への支援を呼びかけています。

黄文雄氏(作家・評論家)/東京オリンピックに「台湾」の名称で参加を!2017.3.24【2020 東京五輪「台湾正名」推進協議会】 設立記念大会#16

【スピーチ】黄文雄氏(評論家)2017.10.9#7東京五輪 「台湾正名」大演説会 ~10.9 総選挙・中国共産党大会 台湾正名運動の未来 ~

これまで日本のメディアは媚中・媚韓姿勢を取り続け、中国・韓国の歴史認識を盲信し、さらに中国や韓国への「忖度」を繰り返し、場合によってはご注進報道まで行って、日本の名誉を傷つけてきました

その意味で、2020年東京オリンピックで、台湾問題について「中国のご意向」に従うのか、それとも台湾を台湾として扱うのかということは、単に台湾人の関心事だけではなく、これまでメディアの媚中姿勢によって尊厳を貶められてきた日本人にとっても大きな意味を持つのだと思います。

image by: 蔡英文 Tsai Ing-wen - Home | Facebook

※ 本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2018年9月6日号の一部抜粋です。初月無料の定期購読のほか、1ヶ月単位でバックナンバーをご購入いただけます(1ヶ月分:税込648円)。

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2018年8月配信分
  • 「台湾製」表記を許さない中国でも避ける「中国製」/絶望的な中国の学生デモの現状(8/28)
  • 中国の妨害に屈せず「日本精神」で通じ合う台湾とパラオ/歴史的に監視大国だった中国が監視カメラとAIで行き着く先(8/21)
  • 終戦記念日を迎え、戦後73年の日台関係を考える(8/15)
  • 【終戦記念日にあわせてメルマガ発行日変更のお知らせ】(8/14)
  • 水不足の中国が金門島に送水する政治的思惑(8/7)

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2018年7月配信分
  • 国際大会を中国に阻止され、ますます強化された日台の絆(7/31)
  • 日台の絆を悪用して台湾人になりすます中国人/アフリカしか相手にしなくなった一帯一路(7/24)
  • ついに中国で反・習近平の狼煙が上がった/中国に対して「Think different」できないアップル(7/17)
  • 台湾で環境保護運動が進む本当の意味/マナー無視の中国人が自らを窮地に追い込む(7/10)
  • なぜ中国人は他人の不幸を喜ぶ民族なのか/米台接近に日本も加わるときが来(7/3)

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2018年6月配信分
  • 李登輝氏が沖縄で「為国作見證」を示した理由/日本人から「日本精神」が消える日(6/26)
  • 大阪地震への支援表明した台湾が目指す華僑支配からの脱却/もう韓国との付き合いを完全に変えるべき時だ(6/19)
  • 米朝首脳会談後、台湾を巡る米中激突が本格化する/日本時代の建物を残したいという台湾人の思い(6/12)
  • 2018年6月7日号(第238号)に一部、誤りがありましたので、再送いたします(6/8)
  • 天安門事件を直視できない中国に未来はない/アップルマンゴーの父が残した日本の作物技術(6/7)
  • 【メルマガ配信日遅延のお詫び】(6/5)

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