阿曽山大噴火が裁判所で見た 「酔ってビール瓶を振り下ろした男」

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罪名 傷害
被告人 29歳のアルバイトの男性
事件は今年の8月11日。
被告人は、東京都中野区の自宅で女性(21)の頭や顔を叩き、さらにビール瓶とスプレー缶で殴って全治4週間の怪我を負わせたという内容。
被告人と被害女性の関係がわからないので、なにがあったのやら、と。
検察官の冒頭陳述によると、被告人は専門学校を卒業後、デザイン会社などで働いていたという。前科はなく、今回が初めての裁判。

被告人は去年11月、被害女性と知り合い交際をスタート。今年1月からは現場である被告人のマンションで同棲していたらしい。

そして、犯行当日。
2人で焼肉屋へ行き、酒を飲み肉を食べ、午後8時30分過ぎに帰宅したとのこと。
そして、帰ってきてからも缶チューハイや瓶ビールなど、再び飲酒。そんななかで別れ話になり、カッとなった被告人が被害女性を殴ったと。

被害女性は部屋の外に逃げ出し、近くの交番に駆け込んだため、警察官が部屋に行って被告人を逮捕したというのが事件の流れになります。
別れ話を切り出されて、興奮したのは想像つくけれど、ビール瓶で彼女を殴るって普段から暴力をふるってたんじゃないかなぁという印象を受けますね。
調べに対して、被害者の女性は、

被害者
長い時間殴られて、殺されるかと思いました。もう2度と顔を見たくありません
と、犯行時に死を感じたと述べているようです。

一方、被告人は調べに対し、「酒を飲んでいて記憶が飛びとびだが、ビール瓶やスプレー缶で殴ったのは覚えている」と供述しているらしいです。かなり酔っていたみたいですね。
法廷には被告人の母親が情状証人として出廷です。
まずは弁護人からの質問。

弁護人
息子さんの性格は?

証人
人に対して、老若男女分け隔てなく優しい性格で、子供のころから動物好きでした

事件の中身だけ聞くと、極悪DV男って気もするけど、見た目は人あたりもよさそうで、今どきのバンドマンによくいるキノコみたいなマッシュボブ。確かにやさしそう。

弁護人
事件を知ったとき、どう思いましたか?

証人
全身の血が凍る想いで、信じることができませんでした

弁護人
今は保釈されて一緒に住んでますよね。どんな様子ですか?

証人
憔悴しきった様子で、息をするのも忘れてしまったのかと思うほどで。それでやっと大きなため息をついてて……

と、法廷では端的に答えたほうが印象はいいと思うんだけど、なんとも文学的な描写が多いお母さんですね。
次は、検察官から。

検察官
普段から被告人と連絡取り合ってたんですか?

証人
はい。LINEとかで

検察官
本人はなぜやったと言ってます?

証人
たまっていたものが爆発したと

検察官
爆発してなぜ暴力を振るったと?

証人
そこまでは聞いていません

検察官
原因がわからないと、今後の監督ができないと思いますけど

証人
密に連絡とって、相談に乗ります

この答えを聞くと、検察官の口角がちょっとだけ上がり、

検察官
事件前から連絡取ってたんでしょ?

これを言いたいために、最初の質問があったんですね。なかなか意地悪問題。

証人
これからは深く意味のある、表面的だけではない入り込んだ自分の意見を口うるさいながらも言い続ける役目でありたいと思います

このお母さんだから答えられた感も。この親なら大丈夫でしょうという安心感もあるし。
そして、被告人質問。まずは弁護人から。

弁護人
なぜこんなことやったんですか?

被告人
兼ねてから男女・友人関係のトラブルでケンカをしてまして、そのたまっていたものが、この日はお酒も入ってカッとなってしまいました

以前からケンカの絶えない2人だったようですね。

弁護人
事件を振り返ってどう思いますか?

被告人
今まで信じて交際を続けてくれた被害者様に申し訳ないです

弁護人
はじめて身柄の拘束を受けてどうでしたか? 留置所は

被告人
事件を反省、憔悴しまして、食欲がなくなりました

ちょっと前まではケンカしながらも、同棲していた相手を、“被害者様”と呼ぶようになり、親と同居するようになってからは、呼吸を忘れているように見えるほど落ち込んでるわけだから、相当の反省があったんでしょう。

弁護人
被害弁償、治療費とかは?

被告人
被害者様のお父様のほうから、弁護士を通じて170万円と言われたのですが、なんとか集められたのが、50万円だったので、残りは働いて…

弁護人
じゃあね、今後はお酒は?

今、29歳。人生100年時代とか、新聞に書いてあるのを見たので、71年くらいお酒は飲まないってことですね。なかなかの決意です。
次は、検察官から。

検察官
殴られた後の写真見た?

被告人
はい……

検察官
どう思いました?

被告人
…はぁ…、とんでもないことをしたと思いました

当然、傍聴席からそのケガの写真は見えないんだけど、2人のぼそぼそっとした会話で被害の大きさが想像できる感じです。

検察官
なんで何度も殴ったの?

被告人
今まで揉めていたことが……かなり酔っていて覚えていないんですけど、たまってたものが全部出てしまって……

検察官
酔うと暴力ふるうの?

被告人
そんなことは今までないです

はじめてのことだったんですね、酔って暴力ふるったのは?
そして、検察官ラストの質問。

検察官
お酒、一生飲まないの?

被告人
はい!

検察官
その自信はどこから来るの?

ほんとに一生の約束守れるのかよってことなんでしょう。

被告人
自分で信じられないことをして、正直飲むのが怖いんです……

飲まないと言うより、飲みたくないと。
酒の影響はあったにせよ、殴るほどのケンカってなにがあったのか気になったけど、裁判官はひとつも訊かず、被告人質問終了。訊きたいこといっぱいあるだろうけどねぇ。

この後、検察官が懲役1年6ヶ月を求刑して閉廷でした。

──もしこの裁判がフィクションだったとして。

          私は被告人の言葉に対して───

被告人が酔ってるのを見たことない知人なら、信じられないんだろうなぁ。
ま、10月16日に実際に行われた裁判なのだが。

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