血税4千億で陸自の「自分探しの旅」につき合わされる日本の不幸

 

ミサイルの数が足りない

これは、イージス艦導入の段階で問題になっていたことではあるけれども、田岡氏によると、イージス艦は各種ミサイルを90~96発積めるだけの発射台を備えている。

そもそもイージス・システムは、米海軍の主力である航空母艦を敵戦闘機による攻撃から防衛すべく、空母に随伴する巡洋艦、駆逐艦に搭載するために開発されたもので、その最大の特徴は、敵戦闘機編隊が空母に向かって空対艦ミサイルを同時多発的に発射してきた場合に、それらを瞬時にコンピューター解析して、先に当方に到達しそうな敵ミサイルを判別して危ない順に迎撃して撃ち落とすよう設定されたプログラミング能力にある。それを陸上の迎撃システムに移し替えたのがイージス・アショアで、どちらにしても、同時多発的なミサイル攻撃に対する備えというのがその趣旨である。

ところが、この迎撃ミサイルが「SM3 ブロック2A」で1発40億円もする。当初の旧型でも16億円で、せっかくイージス艦を買っても肝心のミサイルは米軍のように90~96発を装備するなど夢のまた夢、8発の予算を組むのが精一杯だった。ということは、イージス艦も単なるおもちゃなのである。

イージス・アショアの実際を考えても、300発のミサイルが必要だと市川氏は指摘する。北が100発のミサイルを日本に向けて発射し、うち10発に核弾頭を装着させたとして、「SM3 ブロック2A」の命中率を90%と(めちゃくちゃ過大に?)仮定しても、これらを確実に無効化するに300発の迎撃ミサイルが必要になる。それにはミサイル代だけで1兆円が必要で、「実現性に欠ける」(市川氏)。

電磁パルスを浴びせられたら

さらに、仮にそれだけを費やして万全の備えをしたとしても、北は電磁パルス(EMP)攻撃の能力をすでに備えていて、30キロ以上の高高度で核爆発を起こしすべての電子機器を攪乱することができる。これを防ぐには、対象物を導電性の金属で覆うことが必要だが、イージス・システムの核心であるレーダーを金属で覆ったのでは電波の送受信そのものができなくなるので、レーダーを電磁パルス攻撃から守ることは不可能である。

つまり、核ミサイルで攻撃してくる「意図」を持った相手から自国の安全を確保するのは、どれほどお金をかけても至難の業なのだ(市川氏)。

しかも、取得経費は2基で2,679億円とされているが、これに維持・運用費と教育訓練費を加えると4,664億円となる。この維持・運用費は「導入時には最低限の費用で見積もられるのが常である。故障した場合の修理費、システム全体が新しくなった場合のバージョンアップ費用は、事前に見積もることができないので含まれない」し、基地の施設整備費上述のミサイル本体の購入費なども含まれていない

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