血税4千億で陸自の「自分探しの旅」につき合わされる日本の不幸

 

もはや役目がない?陸自

かつては旧ソ連の脅威に備えるのが陸自の主要テーマで、具体的にはソ連極東にある強力な機甲化師団が北海道に上陸侵攻してくるのを戦車を並べて北海道の原野で迎え撃つという中心シナリオを抱いていた。

ところが冷戦が終わって旧ソ連の脅威がほとんどなくなって、困ったのが陸自である。1990年代の中頃には、急に「離島防衛」論が浮上して、北朝鮮が米韓と戦争になるか体制崩壊が起きるかすると「一部武装兵を含む北の難民が大挙して日本の離島に押し寄せて占拠するかもしれない」という危機シナリオが盛んに語られ、それに応じて陸自が「南西諸島防衛」ということを言い出して、北海道にあった戦車の一部を島々に移そうとした

この馬鹿馬鹿しいシナリオはたちまち消え去った。しかし野田政権の「尖閣国有化」の愚行のおかげで、今度は中国が尖閣諸島に攻めてくるという話として蘇った経緯については、17年7月の本誌No.896で詳しく述べたので、それを再録しておく。

いま陸自がやりたがっているのは、中国軍が尖閣はじめ南西諸島に上陸して、そこを足がかりに島伝いに沖縄本島、ひいては九州・本土にまで侵攻してくるという「素っ頓狂として言い様のない妄想的な危機シナリオに立って、

  1. 与那国島、石垣島、宮古島などに対艦・対空ミサイル基地を新設して中国の海空軍の攻撃を跳ね返す
  2. それでも尖閣はじめ島々が占領されるのは防げそうにないので、米海兵隊タイプの水陸機動団を創設し、それをオスプレイに乗せてどこへでも出撃し、奪回する
  3. また北朝鮮の脅威に関しては、海自・空自が盛んに北朝鮮を意識した日米共同訓練を行っているのが陸自にはうらやましくて仕方がないので、イージス・アショアを手に入れて、北がグアムをミサイル攻撃した場合に上空を通過する山口県と、ハワイに撃った場合に通過する秋田県とに配備して、対米忠誠心を示す

──ということで存在感を示そうとしている。が、一言で言って時代遅れの荒唐無稽でしかない。やることがないなら部隊を縮小すればいいのに、何とかありもしない脅威を言い立てて偽のアイデンティティを確保しようとする姿が哀れである。

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※本記事は有料メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』2018年11月5日号の一部抜粋です。初月無料の定期購読のほか、1ヶ月単位でバックナンバーをご購入いただけます(1ヶ月分税込864円)。

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早稲田大学文学部卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。現在は半農半ジャーナリストとしてとして活動中。メルマガを読めば日本の置かれている立場が一目瞭然、今なすべきことが見えてくる。

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