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絶好調ドンキが経営不振の老舗ユニーをあえて買収した本当の理由

29期連続増収・営業増益と絶好調のドン・キホーテホールディングスによる、ユニーの買収が話題となっています。まったく毛色の違う両社がこの決断を下した背景には、どのような思惑や事情があったのでしょうか。元AmazonにしてMBAホルダーの理央 周(りおう・めぐる)さんは、自身のメルマガ『理央 周の売れる仕組み創造ラボ【Marketing Report】』で、その理由を探るとともに、そこから学ぶべきことについて記しています。

ドン・キホーテはなぜユニーを買収したのか?

ドン・キホーテホールディングスが、ユニーファミリーマートホールディングス傘下で、総合スーパーマーケットのユニーを買収する。これで、イオン、セブン&アイホールディングスに続く、第3位のグループとなる。

今、なぜ買収なのか

ドン・キホーテにしてみると、2007年に長崎屋を買収して以来、2度目の大型買収になる。以前、このメルマガでも書いた通り、タワー陳列、極端な安値での提供などなど、日本の国内の小売業において、かなり独自な路線で伸びてきたドン・キホーテが、経営不振に陥っているとはいえ、老舗に近いユニーを買収するのは何故なのだろうか?

まず、ドン・キホーテ側が欲しいユニーの「よさ」に関しては、立地条件、社員の習熟度など、企業としてののれんや資産が魅力であった点もあるだろう。

さらに、スーパーマーケットとしてのユニーは、生鮮食品を扱っている。先号にも書いたが、小売業にとって重要なのは「来店頻度」だ。雑貨を中心に扱うドン・キホーテにとって、顧客が週に何度も買いに来る生鮮食品を扱えることで、さらなる売り上げを見込みたい、という点もあるだろう。

一方で、生鮮食品は仕入先との関係性構築の経験もなく、さらに陳列や売りの現場での経験もないため、自社でゼロから立ち上げることは難しい。ドン・キホーテにとっての魅力の1つはそこにあるだろう。

ユニーファミリーマート側の思惑は?

では、ユニー・ファミリーマート側の方は、何をメリットに感じているのであろうか。

市場を見てみると、圧倒的な売上と店舗数を誇るイオンと、セブン&アイホールディングスの存在がある。さらに、GMSの業態を取っているユニーは苦戦の連続だ。私の自宅の近くにも、アピタがあるが、やはり混んでいるのは生鮮食品売り場と、フードコートだけといった印象が強い。3階建ての2、3階においては各テナントも、ほとんど「ガラン」としている印象が強い。

GMSの不振は、ユニー・ファミリーマートのみではなく、イオンやヨーカドーなども同様だ。それも、大規模出店法の施行以来、数が増えてきたGMSもそれぞれ画一化も進み、どこのGMSも同じようなターゲット層を狙うことで、独自性がかなり薄れてきている。イオンは、どこのイオンにいっても、テナントも、売っている商品もかわい映えがしない、そしてそれはGMS同士でも同じことなのだ。その点、ドン・キホーテはかなり独自性が強い販売手法で独自性の強い商品ラインアップをそろえている。

また、イオンやセブン&アイホールディングスが持ち合わせていない、ディスカウントストアという業態が加わったことも、グループとしては大きい。実際に、イオンやセブン&アイはこの業態を持ち合わせておらず、来店する消費者側から見ると、「同じ食品を買いに行くなら、今日はドンキのあるアピタへ」という選ばれ方になるのだ。

もちろん、上記に加えて、顧客データの統合による相乗効果が見込まれる。コンビニのファミマからドンキへ、またその逆という相互送客も見込まれるし、ポイント制なども合算できることになれば、よりグループとしての相互効果が見込まれるであろう。

私たちはこれらの企業から何を学ぶべきか?

では、私たちはこの2企業から、何を学ぶべきだろうか?

それは変化への対応に尽きる。ビジネスは、弱肉強食ではなく適者生存だ。氷河期に対応できなかった恐竜が死滅したように、市場と時代の変化に対応できない企業は、退場を命じられる。

変化に対応することが得意なドン・キホーテは、これまで買収のみでなく、メガドンキの出店や、インバウンドの取り込み、アメリカのマルカイの子会社化など、次々と斬新な手を打ってきた

一方で、変化を好まない、と言われていたユニーも、今回はかなり大きな決断をした。企業の規模が大きくなると、組織も複雑化し、意思決定のスピードが落ちることも多い。その中で、ユニーとファミマを統合、またサークルKを買収したユニー側にとって、かなり短いスパンでの今回のドン・キホーテへのユニー売却と、ドン・キホーテの株取得は、スピードあるまた大きな決断だった。

市場の変化に対応し、先取りをしないと、価格競争に陥り、苦境に追い込まれる。斬新で、スピードある決断が求められるのが、昨今の特徴だ。

どちらも、自社に足りない、ある意味での不得意な分野を、時間をかけて自社で育てるという選択肢ではなく相互補完で対応した、というのも、ここのところの企業合併や提携の特徴だ。

私たちにとっては、学ぶところも多いユニーとドン・キホーテの提携だ。

image by: ドン・キホーテHP

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