米中覇権戦争のさなかに両国の顔色を窺う日本を待つ暗すぎる未来

 

ファーウェイ経営者の逮捕劇は、この文脈でとらえる必要がある。第5世代移動通信システム(5G)の開発で先頭を走っているとされるファーウェイは、民間企業ではあっても習近平氏とのつながりが強いとされる。創業者の軍歴から、人民解放軍との関係や中国のサイバー攻撃との関連を疑う見方もある。

次世代通信の覇権を中国に握られるようなことがあると、米国の重要情報が中国共産党に筒抜けになってしまうかもしれない。

エドワード・スノーデン氏のリークで明らかになったように、米NSA(国家安全保障局)は大手IT企業の協力で、電子メール、写真、チャット、動画、文書などから情報を収集している。世界中の同盟国にパラボラアンテナを立てて米国のNSA本部とつなぎ、「エシュロン」と呼ばれるシステムで世界中の通信を傍受してきたことも知られている。

経済、軍事力のみならずサイバー空間においても優位に立っているからこそ、アメリカは好き放題にできるのである。

その立場を脅かす象徴的な企業であるファーウェイを叩くため、米国は同盟国に同社製品の閉め出しを求め、日本政府も政府調達からファーウェイを排除する方針を決めた。

中国のGDPは2017年には米国の63.2%に達している。このペースでいくと遅くとも10年後の2027年には米国を追い抜いてしまうことになる。

しかし中国経済は必ずしも盤石とは言えない。

米国が2017年実績で3,750億ドルに達した膨大な貿易赤字をトランプ大統領の圧力で解消することに成功したら、中国の外貨準備高は一気に減少し、積もり積もった負債が財政を圧迫するだろう。いうまでもなく、軍事力増強のスピードは衰え、米国との国力の差は開く一方となって、世界の覇権などはうたかたの夢と消える。

2008年9月のリーマン・ショック以降、米連邦準備制度理事会(FRB)の5年間にわたる異次元金融緩和で乱発されたドルが、盛んな輸出と外国からの投資によって中国に流入、中国人民銀行の外貨準備高が急増した。その外貨の裏付けに見合う人民元の発行により中国経済はなんとか成長軌道を保ち続けた。

しかし、どうやら習近平氏は先を急ぎ過ぎたようだ。14年にユーラシアから、中近東、アフリカまでの陸海を結ぶ現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」をぶち上げ、南沙諸島を占拠し、「Made in China2025」なる計画でアメリカに挑戦状をつきつけた

この計画は、次世代情報技術、高度なデジタル制御の工作機械とロボット、航空・宇宙設備などからなる10の分野を重点とし、2025年までに製造強国となり、新中国成立100周年の2049年には総合力で世界の製造強国のトップに立つ、というものだ。

これが米国を刺激しないはずはない。習近平氏と個人的に良好な関係を築いたと吹聴していたトランプ氏も、今年に入って、習近平体制の崩壊につながりかねないのを承知で高関税など強硬策に打って出たわけである。

このため中国では、株価下落、人民元安に歯止めがかからず、共産党内の空気も変化してきたらしい。

習近平国家主席の肖像画入りのポスターに墨汁や黒インクをかける運動が拡大し、北京や上海の街に掲げられた「中国の夢」「偉大なる復興」といった習語録の横断幕も外されはじめたという。

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