米中覇権戦争のさなかに両国の顔色を窺う日本を待つ暗すぎる未来

 

ペンス副大統領は、安倍首相訪中の少し前、10月4日に、ハドソン研究所における講演で、きわめて明快に対中国政策の全貌を語っていた。1時間近くにわたる講演のなかから、要点をまとめてみる。

中国はかつてないほど、わが国の国内政策や政治活動に干渉し、トウ小平氏の有名な「改革開放」はむなしいものとなっている。この17年間で中国のGDPは9倍に成長し、世界2位の経済大国になった。その成功の多くをもたらしたアメリカの昨年の対中貿易赤字は3,750億ドルだ。

 

中国共産党は「Made in China2025」計画を策定し、ロボット、バイオテクノロジー、人工知能など世界の最先端技術の90%を支配することをめざしている。官僚や企業に対し、米国の知的財産を、あらゆる手段を用いて取得するよう指示する一方で、多くの米国企業に対し、中国で事業を行う対価として、企業秘密を提供するよう要求している。最悪なのは、中国の安全保障機関が、米国の最先端技術の大がかりな窃盗の黒幕であることだ。

 

中国は米国より軍事的優位に立つことを第一目標とし、米国を西太平洋から追い出そうとしている。今日、中国は他に類を見ない監視国家を築き、侵略的になっている。アジア、アフリカ、ヨーロッパ、ラテンアメリカでのインフラ整備に何十億ドルもの資金を提供し、いわゆる「借金漬け外交」でがんじがらめにし影響を拡大している。米国の企業、映画会社、大学、シンクタンク、ジャーナリストなどにカネを流し、その見返りを得ようとしている。

 

我々は、強制的な技術移転を中国政府がやめるまで、断固とした態度をとり、米国企業の知的財産権を保護する。そして、自由で開かれたインド太平洋地域全体のビジョンを前進させるために、諸国との絆を強める。

まなじりを決して中国の膨張政策に立ち向かう米首脳の意思が伝わってくる。中国との取引で巨利を得ている米企業も多いに違いないが、このまま中国の勢力が拡大すると、世界を主導してきた米国の立場が危うくなるのだ。

日米同盟にしがみつく日本としても、長年にわたり経済援助をし、技術移転もされてきた中国のこれ以上の増長を許したくないのが本音ではないか。

しかし、日本の消費市場は中国人観光客の爆買いをあてにし、企業は中国の巨大マーケットで稼がなければ黒字決算を維持できないのが実情だ。米中両国の機嫌を損なわないよう、言動に気を配りつつ、のらりくらりと、変化に対応していくことぐらいしか、目下の策はなさそうだ。

一方、アメリカはペンス副大統領の指摘した知的財産権の保護、技術の移転や窃盗の防止、貿易赤字の解消など対中政策を着々と進めている。

8月に成立した外国投資リスク審査近代化法(FIRRMA)により、大量破壊兵器などに転用できる機微技術を保有する企業が外国に投資を行う場合、あらゆる取引について事前申告することが義務づけられた。

ロボティクス、人工知能(AI)、ビッグデータ、自動走行車、集積回路、3Dプリンタなど先端技術の海外移転の制限を強めるため、輸出管理改革法(ECRA)も成立させた。

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