また騙すのか。小型原発で延命をはかる原子力ムラの悪あがき

 

実は、この時すでに経産省は原発を将来にわたって生き延びさせるための具体的な案を練っていたのだ。

それは、小型原発の開発である。経産省は国会やメディアで批判のマトになるのを避けるため、基本計画からその構想をあえて外した。有識者会議のメンバーが知らなかったとは思えない。

今年12月1日付の東京新聞に、こう報じられている。

地球温暖化対策を名目に、経済産業省が新たな小型原発の開発を進め、2040年ごろまでに実用化を目指す方針を固めた。…新方針は11月14日、経産省内で開かれた非公開の国際会議で、同省資源エネルギー庁の武田伸二郎原子力国際協力推進室長が表明した。本紙は武田室長に取材を申し込んだが、応じていない。

国際会議で表明するほどだから、単なる思いつきではない。ある程度の時間をかけて練り込まれた末の方針だろう。

産業界における小型原発開発の動きは今年10月、いくつかのメディアで報じられていた。

日立製作所が米ゼネラル・エレクトリック(GE)と新型の小型原子炉を採用した原子力発電所の開発に取り組むことが15日、分かった。出力30万キロワット程度の「小型モジュール炉(SMR)」…2030年代の商用化を目指す。SMRは従来の原子炉に比べ低コストで安全性が高いとされ、主に海外への輸出を狙う。
(産経ニュース)

日立とGEが開発に取り組もうとしている「SMR」と、経産省が開発方針を固めた小型原発が同じものなのかどうか、関連は明らかではない。

日本における小型原発の構想は、福島原発事故後の2012年10月、元電力中央研究所理事(工学博士)、服部禎男氏が提案したのがはじまりだ。その後、東芝原子力部門の技術者が開発を進めたとされる。

「4S」と呼ばれる小型ナトリウム冷却高速炉で、機械、装置の数が少ないため安全性が高くどこにでも置けるというのが売りだった。

「4S」と「SMR」の設計理念の違いは今のところ、さっぱり分からない。世界を見渡すと、小型原発についてはいくつもの取り組みがある。英ロールス・ロイスの小型加圧水型軽水炉、カナダのテレストリアル・エナジーの「溶融塩炉」などだ。

いずれにせよ、小型原発は、100万キロワットを超す既存の大型原発と違い、工場で製造したモジュールを現地で組み立てる建設方法が可能であるらしい。

しかし、こうした新開発計画が、原子力ムラの悪あがきのように見えて仕方がないのは筆者だけではあるまい。

小型、大型にかかわりなく、核のゴミの処分方法が確立されていない以上、新たに造ってはいけないし、既存原発もゼロにしていかなければならないのである。原発には100%の安全が求められるが、どんな技術にも完璧はありえない

だからこそ脱原発が叫ばれるのだが、原子力ムラの住人たちは、培った技術の高さ、儲かってきた記憶など、過去の栄光が呪縛となり、原発を諦めることができない。

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