英国に学べ。近視眼的に中国にすり寄る日本に必要な戦略的忍耐力

 

仮想敵ナンバー1と和解したイギリス。今度は、仮想敵ナンバー2ロシアとの和解に動きます。1907年8月、イギリスとロシアは、「英露協商」を締結しました。さらにイギリスは1902年、日英同盟を締結。ドイツが日本と組む道を閉ざしました。もう一つの重要なファクターがアメリカです。イギリスは、「あらゆる犠牲を払ってもアメリカと良好な関係を保つことを決意し、そのようにしました。

こうして、1890年時点でドイツに「覇権を奪われるか?」と恐怖していたイギリス。1907年までにフランスロシア日本アメリカを味方につけることに成功したのです。結果、ドイツには弱い同盟国しか残りませんでした。それは、オーストリア=ハンガリー帝国(民族紛争がひどかった)、イタリア(弱い軍隊しかなかった)、オスマン帝国(近代化できず、なおかつイタリアと仲が悪い)。

結果、どうなったか?皆さんご存知です。1914年にはじまった第1次世界大戦でドイツは完敗したのです。しかし、ドイツが負けることは、イギリスが1907年までに、フランス、ロシア、日本、アメリカを味方につけた時点で決まっていたのです。

国力でドイツに劣るイギリスが勝利できた要因は2つです。

  • 「外交力」によって、有力な国々を味方につけることができた。(そのために、イギリスは、大きな譲歩をしている。)
  • 外交を導く、確固たる「大戦略」があった。

一方、強い経済、強い軍隊があったドイツは、それにあまりも頼りすぎ、「大戦略」でイギリスに負けたのです。ルトワックはいいます

最終的な結果を決めるのは、それらよりもさらに高い大戦略レベルである。

ドイツ陸軍が1914年から1918年にかけて獲得した、数多くの戦術・作戦レベルの勝利でさえも、より高い戦略レベルを打ち破り、そのトップの大戦略レベルまで到達することはなかった。したがって、ドイツ陸軍の激しい戦いは何も達成しなかったのであり、それはまるで彼らが最高ではなく、最低の軍隊であることを証明してしまったのと同じなのだ。
(同上 p98)

皆さん、イギリスとドイツの話を読まれてどう思われましたか?

イギリスは、ドイツに勝つために、仮想敵ナンバー1フランス、仮想敵ナンバー2ロシアと和解しました。それは、簡単だったと思いますか?そうではないでしょう。それでも彼らは、ドイツに勝つために忍耐したのです。「戦略的忍耐」です。だからイギリスは勝てたのです。

日本は、「日本には沖縄の領有権もない!」と主張する中国に勝てるのでしょうか?それは、日本人が、少なくとも安倍政権が、感情ではなく「大戦略」に従って進めるかどうかにかかっています。

日本にも、イギリス並の戦略的忍耐力が必要です。それがあれば、勝利は確実です。

image by: 首相官邸

北野幸伯この著者の記事一覧

日本のエリートがこっそり読んでいる秘伝のメルマガ。驚愕の予測的中率に、問合わせが殺到中。わけのわからない世界情勢を、世界一わかりやすく解説しています。まぐまぐ殿堂入り!まぐまぐ大賞2015年・総合大賞一位の実力!

無料メルマガ好評配信中

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 ロシア政治経済ジャーナル 』

【著者】 北野幸伯 【発行周期】 不定期

print
いま読まれてます

  • 英国に学べ。近視眼的に中国にすり寄る日本に必要な戦略的忍耐力
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け