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臨床心理士が「頭の良くない人ほど例え話が上手い」と語る理由

上手に話を伝える力は、さまざまなビジネスシーンにおいて求められるスキルです。今回の無料メルマガ『生きる!活きる!『臨床力』』では著者で獣医師と臨床心理士の資格を持ち、大学で教鞭も執られている渡邊力生さんが、他人に物事をわかりやすく伝える例え話は、「頭の悪い人や理解力の乏しい人」ほど技術を磨ける素地があるとの驚きの持論を記しています。

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みなさん、こんにちは。「太鼓の達人たちに気付かされたこと」では、教育・指導する立場に立っている人間は、いかにして相手の心をワクワクさせるかかが大事ではないかという話を、太鼓の響きに例えてお伝えしました。

この「例えの話をすることを私はとても重視しています。重視しているというよりも、それなくして仕事はできないというふうに捉えています。

学生にとっては初めて聞く授業内容ある一定以上難しく感じるものでしょう。また、飼い主さんに動物の病態を説明する際もこれまた専門的な内容をお伝えしなければならないことも少なくなく、難しいと感じられることが避けられません。“例え比喩はもう本当に自分にとっては生命線じゃないだろうか、ぐらいに私は思っています。

ですので学生から「例えがわかりやすいです!!」と言ってもらえたり、書かれた感想を読んだ瞬間は非常に嬉しいんですね。それは自分の「比喩力」を褒められたからというわけではなく、「例えが分かりやすい」ということはすなわち、自分の話した内容が概ね伝わったということだからです。私にとってはまさしく“成功体験”と言えます。学生たちが感動してくれたら私も感動します。

私が関わる学生は、動物看護師をはじめとして将来は人にサービスを提供する、もっと言えば説明をすることが求められる職業に就く人が少なくありません。ですので私はチャンスがあれば彼ら彼女らに、「みんなもそうやって例え話をする力はあったほうがいいで!」という話をするんですね。そうすると決まってこういう答えが返ってきます。

「いや、私にはできひん」
「それは先生が獣医さんやから、頭いいからできるんやって

これは私は全くの逆だと思っています。

例え話が上手な人は頭が良いから上手なのではなく、頭が良くないから、人の話を読んだり聞いてもすぐに頭に入ってこないから自分で理解するためにまず例え話を自分自身に使っているのだろうと私は思っています。少なくとも私自身はそうです。

世の中には「こんなん読んですぐにパッと分かるやつおるんか!?」と自分が感じるようなことを、いとも簡単に理解できる人が間違いなくいます。そしてそれをすぐに自分の言葉で語れるんですね。もう本当にすごいとしか言いようがありません。

私などは何度読んでも聞いても理解できないことが多々ありますので(涙)、人にそれを伝えるという前に、そもそも自分の理解のために例え話を持ち出さなければならないのです。それがたまたま学生や飼い主さんに伝える時に使えている、というだけに過ぎません。

「いや、それはおまえ謳っとるやろ!?」

とご指摘を受けるかもしれませんが、当の本人は自分がこの世界(クライエントに説明をすることが求められる業界)で生きていく上で、この「例える力はなくてはならない命綱だと本気で思っています。だから自慢話でもポジショントークでもなんでもなく、自分が苦なく磨こうと思え拠り所とする能力がその例える力」であったことが本当に良かったと感じています。自分からは切り離せないものを使って勝負ができるのであれば、それはストレスもなく、効率も良い非常にECOな仕事のしかたであるとも言えるかもしれませんね。

そもそも「頭の良さ」をどのように定義するかということによって話は違ってくるかもしれませんが、少なくとも私が伝えたいことは、自分が理解力が乏しいとか頭が良くないとか勉強ができないと思っている人ほどチャンスだと言うことです。

理解力が乏しい人が少し理解力がついたとか、頭が良くない人が少し良くなったとか、勉強ができなかった人が少しできるようになったとか、そういう体験をした人しか、理解力が乏しい人頭が良くない人勉強ができない人の気持ちは分からないしそこからたった一歩でも踏み出せた時の気持ちが分からないからです。

理解力があるとか、頭が良いとか、勉強ができることはたしかに価値があることですが、その逆もまた然り。それを価値あるものにできるかどうかの一つの要因が私は「相手が分かる例え話をできるかどうかというところにあるのではないかと思っています。

理解力が乏しい、頭が良くない、勉強ができないと思っている人は本当にチャンスだと思った方が良いと思います。思い込んでしまったほうが良いです。

はっきり言えば、「アホほど例えがうまくなるぐらいに思っていてもいいでしょう。そうすれば少しは賢い人たちにも認めてもらえるような、そしてその何倍もの人に、「分かりやすい!!」という言ってもらえるような仕事(説明)ができるようになります。こう言ってもらえると、理解できた相手の方はハッピーですし自分もハッピーになれますよね。

これからも私はこの力に磨きをかけて、より大きな感動を生むような仕事をしていきたいと思っています。今日も「ようわからんで、これ(汗)」と思うことに出会いましたのでね(涙)。

それではまた。Ci vediamo!!

image by: Shutterstock.com

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「臨床」という言葉は、人が横たわる床や寝台というギリシア語をルーツとし、元々は宗教的な言葉として用いられていました。それが医療、心理学、教育の世界でも用いられるようになり、徐々に「現場」という意味合いが強くなってきました。  しかし現場というのは何も医療などの専門的な分野に限ったことではありません。人が人に出会う場面は全て「現場」であり「臨床」であると言えます。様々な場面で「生きる」方にとって「活きる」知識や気づきを提供する、すなわち「臨床力」のヒントとなるようなメルマガを目指します。

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【著者】 渡邊力生 【発行周期】 ほぼ 日刊

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