それでも、日ロ関係は大事
ここで、ネトウヨだったら、「プーチンふざけるな!断交だ!」って話になるんです。韓国と断交し、次はロシアと断交?それで、誰が一番喜ぶ?そう、習近平ですね。まさに、2012年に中国が計画したとおりに事は動いている。日本は、そもそも(領土問題で無茶をいう)ロシアと和解する必要があるのでしょうか?
「戦略的」にどうなのでしょうか?「戦略」は、「戦争に勝つ方法」という意味です。「戦術」は、「具体的な戦闘に勝つ方法」という意味です。皆さんご存知のように、日本軍は、個別の戦闘では連戦連勝だった。ところが、大戦略がなかったので、結局敗れました。「大戦略がない」とはどういうこと?海軍は、「アメリカが日本の敵だ!」と主張。陸軍は、「ソ連が日本の敵だ!」と主張。これ、どっちかにしないとダメでしょう?両方敵にまわしたら、勝てるはずがありません。
その点賢明なアメリカ。この国には、主要な敵が2国ありました。ナチスドイツとソ連です。アメリカは、まずソ連と組んでドイツをつぶした。その後、かつての敵だったドイツ、日本、さらに中国と組んでソ連をつぶしたのです。
私は自虐史観の持ち主ではありませんが、「事実として」アメリカは戦略面で日本よりすぐれています。日本には戦略が必要です。戦争に勝つ方法。
ところで、日本は、どこかの国と戦争をしているのでしょうか(もちろん、「戦闘」という意味ではありません)?しています。日本は、2012年11月から中国と戦争状態なのです。なぜ?
皆さん覚えておられることでしょう。2012年9月、日本は尖閣を国有化した。これで、日中関係は、「戦後最悪」になってしまいます。2012年11月、中国は、ロシア、韓国に「反日統一共同戦線戦略」を提案します。その骨子は、
- 中国、ロシア、韓国で【反日統一共同戦線】をつくろう!
- 中ロ韓で、日本の領土要求を断念させよう!
- 日本に断念させるべき領土とは、「北方4島」「竹島」「尖閣」【沖縄】である
- 日本には、【沖縄の領有権】はない!!!!!!!
- 【アメリカ】も反日統一共同戦線に引き入れなければならない
全国民必読、完全証拠は
中国の戦略を簡単にいえば、
- 日本とアメリカを分断せよ!
- 日本とロシアを分断せよ!
- 日本と韓国を分断せよ!
です。1937年に日中戦争がはじまった。中国は、アメリカ、イギリス、ソ連から支援を受けていた。つまりこの戦争は、事実上
- 日本 対 中国、アメリカ、イギリス、ソ連
の戦いだった。こんなもん勝てるわけがないでしょう?中国は今回
- 日本 対 中国、アメリカ、ロシア、韓国
で日本を破滅させようとしているのです。これが、2012年以降、日本が置かれている状況です。この重大事を99.9%の日本人は知らず、モリカケ問題などで騒ぎながら、時を過ごしてきた。しかし、幸い安倍総理と側近の皆さんは、中国の戦略を知っているようです。中国の戦略がわかれば、日本は戦略をたてることができます。
中国は、
- 日米分断
- 日ロ分断
- 日韓分断
が戦略ですね。ですから日本の戦略の基本は
- アメリカとの関係をますます強固にする
- ロシアと和解する
- 韓国との関係を良好に保つ
となります。そして、安倍総理はそうされてきた。2015年4月の「希望の同盟演説」で日米関係は、とても良くなった。トランプさんともいい関係を維持している。2015年12月の「慰安婦合意」で日韓関係はよくなった。2016年12月のプーチン訪問で、日ロ関係は劇的に改善された。安倍総理は、中国の戦略を、いったん無力化することに成功しました。しかし、戦いはまだつづいているのです。
- 日米関係を良好に保つ
- 日ロ関係を改善していく
- 日韓関係を穏やかに保つ
これは、大戦略の基本であって、中国の体制が変わるまでブレるべきではありません。
世界には、3つの大国があります。アメリカ、中国、ロシアです。この中で中国は、「アメリカ、ロシアを味方につけて日本を破滅させよう!」としている。そこで日本も、「アメリカとロシアを味方につけて中国に対抗しよう」というのが、基本的な戦略になる。それで、ロシアとの関係改善が不可欠なのです。
ところが日ロ関係は、とても悪かった。まず、日本は、クリミア問題でロシアに制裁している。経済の話ができなくなった。それで、日本政府高官は、訪ロするたび、「島返せ!」としかいわなくなった。ロシア側は非常に立腹していました。しかし安倍総理は、「経済協力を進めることで、関係を改善していこう」という路線に転換した(制裁で、簡単ではないにしろ)。それで、日ロ関係は急速に改善されていきました。日本は、アメリカ、ロシアと仲がいい。中国の立場が軟化してきたのは、これが理由です。
2018年、米中貿易戦争がはじまり、中国の態度はさらに融和的になりました。これは、日本の戦略勝ちですが、中国に関しては、「戦は詭道(ウソ)なり」なので、一瞬も油断できないのです。
プーチンは、「2島返して欲しければ、日米安保を解消しろ!」と無茶をいう。それで、激怒する人もきっと多いことでしょう。しかし、ロシアとの良好な関係は、対中国で必須です。「北野さんは、28年モスクワに住んでいたからこんなことをいうのではないですか???」と疑問をもつ人もいるかもしれません。そうではありません。日米ロで組んで、中国に対抗するという戦略は、リアリズム神ミアシャイマーさんも、世界最強の戦略家ルトワックさんも主張しています。
証拠に、ルトワックさんの言葉を引用しておきましょう。ルトワックは、その著書『自滅する中国』の中で、日本がサバイバルできるかどうかは、ロシアとの関係にかかっていると断言しています。
もちろん日本自身の決意とアメリカからの支持が最も重要な要素になるのだが、ロシアがそこに参加してくれるのかどうかという点も極めて重要であり、むしろそれが決定的なものになる可能性がある。
『自滅する中国』p188