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有給休暇の新ルール「社員から訴えられる」可能性があるケースは

新元号の発表とともにスタートした新しい年度。企業の皆さんにとっては、「有給休暇の新ルール」が始まる月でもあります。今回の無料メルマガ『採用から退社まで! 正しい労務管理で、運命の出会いを引き寄せろ』では現役社労士の飯田弘和さんが、この新ルールに関するよくある質問に対してわかりやすい回答を記しています。

有給休暇取得の新ルールについてのよくある質問

新元号の発表もあり、いよいよ新年度がスタートしました。

ところで、この4月から有給休暇についての新ルールがスタートします。今まで何度か説明してきましたので、ザックリと新制度について説明しますと、

年10日以上の有休が付与される従業員に対して、有休5日分については、付与日から1年以内に、使用者が時季を指定して取得させなければならない。

というもの。この新制度については、今までたくさんのご質問を受けました。
たとえば、

前年からの繰越しの有休を取得した場合でもこの5日にカウントできるのか?

という質問。

「本年度付与した有休であろうと、前年度繰越分の有休であろうと、とにかく年5日間の有休を取得させればOK!

という答えになります。

会社が時季取得日の指定を行う前に従業員自ら5日間の有休を取得した場合、会社は時季指定できるのか?

会社が時季(取得日)の指定を行う前に、従業員自ら5日分の有休を取得した場合、会社は時季指定することはできません。ただ、会社が時季(取得日)の指定を行った後に、従業員自ら5日分の有休を取得した場合には、会社の行った時季指定は無効にはならずその指定日に有休を取らせることが可能です(時季指定は無効になるといった取り決めも可能です)。

これもよくある質問。

今まで休日であった年末年始や盆休みを有休にすることはできないか?

今まで休日であった年末年始や盆休みを労働日に変更し、その日に有休を充てるというものです。これは、労働条件の不利益変更の問題です。月給制の従業員にとっては、月給額が同じで労働日が増えることになります。ということは、労働条件の不利益変更ということになります。

労働条件の不利益変更については、基本的に、労使の個別の合意が必要です。ですから、すべての従業員から合意を取ることが必要となります。

ただし、合意が取れない場合であっても、就業規則の変更によって労働条件を変更することができます。といっても、何でもかんでも許されるわけではなく、その変更が合理的でなければなりません。

ですから、変更が合理的でないと判断されればその変更は無効となります。合理的かどうかは裁判所の判断になるのですが、合理的であるという主張立証責任は使用者側が負います。

結局は、従業員が裁判を起こすかどうかにかかっているのですが、もし裁判を起こされた場合には、「今まで休日であった年末年始や盆休みを有休にすること」は、合理的な変更とは判断さない可能性が高いと思います。ですから、このような変更は慎重に行うべきでしょう。

image by: Shutterstock.com

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就業規則とは、入社から退社までの「ルールブック」であり、労使トラブルを未然に防ぐ「ワクチン」であり、効率的な事業運営や人材活用を行うための「マニュアル」でもあり、会社と従業員を固く結びつける「運命の赤い糸」でもあります。就業規則の条文一つ一つが、会社を大きく発展させることに寄与し、更には、働く人たちの幸せにも直結します。ぜひ、この場を通じて御社の就業規則をチェックしていただき、問題が生じそうな箇所は見直していただきたいと思います。現役社会保険労務士である私が、そのお手伝いをいたします。

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【著者】 飯田 弘和 【発行周期】 週刊

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