歴史が示す中国独裁の末路
プレジデントオンライン3月28日から転載します。
【アタリ】しかし私は、中国のポテンシャルを過剰に評価してはいけないと思っています。第1の理由は、中国人の生活水準がアメリカ人の生活水準の15%にも満たないこと。西欧人や日本人に比べても、中国人の生活水準はかなり低い。この先も、低いままでいくと思います。金持ちになってから人口が減少し始めた日本と比べればよくわかりますが、中国は人民が豊かにならないうちに人口減少社会に突入したからです。
皆さんご存知のように、中国のGDPは、世界2位です。しかし、国民の豊かさを表す一人当たりGDPはどうでしょうか?IMFによるとアメリカは2017年、世界8位で5万9,792ドル。日本は同年、3万8,448ドルで世界25位。中国は、8,643ドルで世界74位。つまり、中国の一人当たりGDPは、アメリカの約7分の1。日本の4.4分の1。
もちろん、中国はこれからも少しずつ順位をあげていくでしょう。しかし、この国のGDP成長率は、年々鈍化しています。成長期が終わりに近づいている中国は、もはや高成長できない。日本よりはるかにひどい少子化問題が起こる(一人っ子政策の反動)。
人民が豊かにならないために内需が拡大しなければ、これから先の経済成長も大いなる輸出で賄っていくしかありません。これはそう簡単ではないというのが、第2の理由です。
(同上)
国民が貧しくて内需が拡大しない。それで、成長は、輸出で賄う。そうはいっても中国の価格競争力はもはやなくなっています。中国国民は、全体で見るといまだ貧しい。その一方で、人件費は、外国企業から見ると魅力がないほどあがっている。それで、日本企業も、中国からベトナム、インドネシアなどに生産拠点を移しています。これから中国が輸出を激増させることは難しいでしょう。
2つ目は、独裁であること。習近平主席は憲法を改正して、国家主席の任期を撤廃しました。共産党の指導部がどれほど優秀だとしても、やはり全体主義的な体制には脆弱な部分があります。独裁の中に市場経済を取り入れていくとブルジョワジーが台頭して、結果的に独裁を追い詰めることは、今までの歴史が示してきた通りです。10年後か20年後か、あるいは50年後なのかもしれませんが、独裁体制が続かないことを中国の指導者は、完璧にわかっているはずです。
(同上)
同感です。
独裁は、意志決定が迅速だという長所はあります。その一方で、「政権交代のシステムがない」のは致命的。民主主義国家、たとえば日本であれば、自民党がおかしくなれば、「民主党に試しにやらせてみようか」となる。その結果さらにひどくなったので、「やっぱり自民党にもどそう」となる。その時、自民党は、「もう少し真面目にやろう」となるでしょう。このプロセスは、選挙によって革命なしで行われます。
しかし、中国では、こういうことができない。国家主席の任期を撤廃した習近平を倒すためには、党内でクーデターを起こす?共産党政権を交代させるためには、革命しかない。これ、脆弱ですね。