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「日本のボスは楽しい」ゴーン氏が揶揄した日本企業の腐った根底

多くの企業では、いまだ時代にそぐわない常識や過去の栄光にすがり人材を潰しまくっているとするのは、無料メルマガ『戦略経営の「よもやま話」』の著者・浅井良一さん。今回の記事では、松下幸之助、本田宗一郎、そして話題のカルロス・ゴーンのトップマネジメントの「奥義」について語っています。

トップマネジメントの「仕事」

事業は人なり」。これは松下幸之助さんの言われたことばですが、本田宗一郎さんもまったく同じ“思い”で、洋の東西を問わず多くの秀でた経営者が持つ絶対的な基本的の“考え方”です。マネジメント(経営)の要諦はある意味「人間学」であり、それは“論理”でありながらもそれを超えた“アート”であるとも言えそうです。

すべての偉大なトップマネジメントは、“人”に、為すべきことを指し示し為さざるを得ないさら得心して為すような環境をつくり、他が成せなかったことを成しています。

話題の日産のゴーンさんですが、あるパネルディスカッションの席で「日本とフランスの違い」について、こんな興味深いことを言っています。

日本では、いったん決断が下されたら、それ以上の議論は起こりません。いったんチーフがこうだと言えばそれで終わりです。日本でボスになるというのは楽しいことですね(会場笑い)。もっともこれは危険をはらんでいます。誰も止める人がいないので間違った決断をしたら、それをストップするのはずいぶん先になってしまいます。一方フランスでは、みなさんよく御存じの通り、決断が下されたときから議論が始まります(会場大爆笑)」

ゴーンさんの「日産の復活」は、この日本の悪しき習癖を打破して、社内に機能横断的な(クロスファンクション)チームをつくって進むべき方向をさぐり若手を参画させて発言・活躍できるようにしたからできたことで、問題発生の根源をつきとめ、目標となるビジョンを示して危機感のなかで行き場を失っていた現場に活力を注入しV字回復させたのです。

しかし、その人が「日産の“組織文化”」に溺れてしまったようです。

今回もまた、理屈ぽく即効性のない話をすすめて行くのですが、これは、厳しい経営環境にある企業が成長し生き残るための基礎要件として提起するものであり「優良企業の起点」となるものです。“知恵”なき経営は“知恵”ある経営に勝ち得ることなどないからなので。しっかりと、このアドバンテージ(優位性)を得ていただきたいのです。

組織の意義は「多くの人」が集まって、それぞれの得意な役割を分担して実行することにより「より大きな成果」を実現させることにあります。「より大きな成果」を実現させるためには“個人”が持つ知識と活力とさらに知恵を目的および目標のために合理的、合目的に結合させて継続的に最適にエネルギーを投入するようにマネジメントしなければなりません。

情報は常に現場にあり、課題解決のヒントも現場にあります。顧客と接しているのは常に現場でありその現場の「衆知」を集めて、そしてここで“個々人”に究極の意欲をもって如何に参画し活躍してもらえるか。そのことが鍵になり、人間性を知悉したやり方について「嫌いなことをムリしてやったって仕方がないだろう」とする本田さんはこのように言います。

「だれでも、自分を表現したいという欲求を持っている。従って『言ってみな』と言って自由に言わせ『やってみな』と言って自由にやらせることが必要で、そのような環境を作ることこそ“トップマネジメントの重要な役割”である。それには『好きなことに熱中すること』が最も効果的である。好きこそものの上手なれ、成功への早道であり楽しい人生の最大の要素である」

ゴーンさんが「日産」を復活させたのは、この“トップマネジメントの重要な役割”を果たしたからで、それまでダメだったのは適切な“トップ・マネジメント”が行われていなかったからです。現場の若手社員にはおぼろげに分かっていたことで、どうすればよいか知りまたそれを適える力もあったのをゴーンさんは統合して解放したのです。

多くの企業では今も、時代には役立たなくなったパラダイム(常識)や過去また狭い地域で成功した技法を固辞して、障害とさえなる「知恵を生まない企業文化」でもって、あたら役立つ貴重な人材を潰しまくっています。勝ちたいなら、儲けたいならば、たとえ苦しくとも意に沿わくとも正しく超優良企業の経営者が見極め行ったその“奥義”を行うべきです。

先ずしていただきのは“他”を当てにせず“自”に頼ることです。最初に何が必要であるのか、それは知識でもお金でもましてや地位ではもちろんなく、絶対的に必要なのは“自己”の“智恵”“勇気”“価値観”です。「事業」とは「“自己”が“他”に働きかけることによって新たな“現実”を創造する活動」で、成るまで行い続けなければ成立しません。

何を成立させなければならないか、それは「他を幸福にする」ことで、この“価値観”を持った経営者が“物心”両方の“利”を得ることになり、この意味することの“強烈さ”を真に知る“覚醒した者”のみが、失敗のなかにおいても光明を見て「果てにある感慨」を得るようです。“利他”は、日本人が多く持ち得やすい「心情」です。

本田さんが言うように「研究所の技術者が第一にすべきことは、お客様の心を研究し、お客様に喜んでもらう将来価値を見つけること。それが分かったら、手段である技術を使って、その将来価値を実現すればよい。」なので、研究所は「技術ではなく、人間の研究をする所」と言うように、事業は人間が人間のために行う活動なので「人間の価値観がその核」になります。

image by: Frederic Legrand – COMEO / Shutterstock.com

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戦略経営のためには、各業務部門のシステム化が必要です。またその各部門のシステムを、ミッションの実現のために有機的に結合させていかなければなりません。それと同時に正しい戦略経営の知識と知恵を身につけなければなりません。ここでは、よもやま話として基本的なマネジメントの話も併せて紹介します。

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【著者】 浅井良一 【発行周期】 ほぼ週刊

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