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日本にいたら生涯気づかなかった「ナンパ」を語る女性への偏見

海外に行くと、日本人女性はやたら声をかけられるという話をよく耳にしますが、ニューヨークでもよく見られ、「迷惑話」としてよく聞くようです。メルマガ『NEW YORK 摩天楼便り-マンハッタンの最前線から-by 高橋克明』を発行する米国の邦字紙『NEW YORK ビズ!』CEOの高橋さんはかつて、「ナンパ体験」を自慢したいのでは?と自分自身が日本人女性に偏見をもっていたと告白。その後考えを180度改めることになった街角での仰天の体験について赤裸々に綴っています。

ニューヨークで日本人女性はモテるのか

ニューヨークで生活していると、日本人女性はのきなみ声をかけられます。 街を歩いていると、男性から「Hi!」とか「Hello!」とか「Pssssst!」とか、そんな声が飛んできます。最後の「Pssssst!(プスーッ)」というのは、口笛を吹く要領で空気を出しつつ同時に音を出す感じ。なかなか日本人には難しい発音です。「ねぇ、ねぇ」とか、日本風に言うなら「ちょっと、ちょっと、今、いい?」みたいな感じでしょうか。どちらにしろナンパの時に使う単語で、もともとは子猫(pussy cat)を呼ぶ際の「こっちおいで」みたいな感じで使う言葉なので、ちょっと小馬鹿にされたと感じる女性も少なくないそうです。

ここまでなら、日本でもたまには目にする光景かもしれません。でも、ニューヨーカーはもっと露骨です。 目的が本当に「この子とちょっとお茶でも行きたい」というナンパそのものであれば、逆に、その目的は絶対に達成し得ないんじゃないか、な言葉をかけているのもよく耳にします。通りすがりの女性にいきなり「Wow!いい脚してるね」とか「ナイスなおっぱい!」とか、中には、目をつむって唇を突き出して「んんんんっぱ!」と破裂音入りのエアーキスをしているおじさんも何度か見ました。 厳密に言えばセクハラ、なその行為の対象は、もちろん日本人女性に限りませんが、アジア系の女性が多い気はします。声をかけてる側の人種は問いません。白人、黒人、アジア人。特にヒスパニック系は、どこかで「声をかけなければ失礼」という思いもあるのか、よく目にします。

で、これらの行為に、自分がモテていると勘違いする女性もいるようで、その場で話し込んでいる場面もたまに見ることはあります。でも、それらは稀で、これらのナンパとまでいかない声がけに、ほとんどのニューヨーカーは鼻で笑ってスタスタと通り過ぎて行きます。もちろん男性側もしつこく追いかけたりはしない。「鼻で笑ってスタスタ」も予想範囲以内で、それ込みで声をかけているようです。

男「(特に気にとめることもなく)Psssst!」→女「(特に気にとめることもなく)鼻で笑ってスタスタ」→男(特に気にとめることもなく)ケータイに目を戻したり、そのまま歩いたり。の、お約束の一連の動作。日本人の僕から見ると、まるで伝統様式。つまりは、リアルなナンパではないのかもしれません。

うちの女性社員も、街を歩けば、しょっちゅうこんな感じで声をかけられています。決して、ビジュアル系で、モテる!というタイプでなくとも、声をかけられる回数は日本にいた頃には考えられなかったほど、らしいです。「おかげで、渡米当初、ひょっとして、アタシ、モテるの?って勘違いしたわ!」とはうちのデザイナーの弁。

それでも、他の女性社員で、このナンパからゴール、つまり結婚までしたケースもありました。地下鉄で声をかけられ、前述の「ナンパ目的ではない下品な声がけ」と思い、その場は、無視。それが数時間後に、まったく違う駅でもバッタリ会ったらしく、そこでも声をかけられ「運命かも!」と思ったそうです。「ストーカーかも!」と言っときました。

この場合は、のちにご主人になる彼も、本気のナンパだったのだと思います。でも、前述の「ナンパにもならない声がけ」の最大の特徴は、日本に比べ対象年齢層のレンジの広さ、ではないでしょうか。元来アジア人が実年齢より若く見える、という特徴もあってか、知り合いの40代半ばの日本人女性から「さっき、そこで、あきらかに20代のラテン系の男の子に、お茶しませんかって声かけられた」と聞かされたこともあります。決して自慢ではなく、本当に戸惑っているようでした。

つまり、日本人女性は、モテる、モテない、は別にして、とにかくよく声をかけらる、ということです。この街では。でもね、これはある意味、人種的な差別かもしれない、と思うのです。 理由は、ナンパであれ、そのナンパにもならない声がけ、であれ、必ずセットでくっついてくる言葉があるからです。それは、「かわいいね、君、日本人?」とか、「ヒュー(口笛)、ニーハオマー!」とか。つまり、「あなたは日本人(もしくはアジア人)でしょ」という確認事項。

アジア人は気軽に声をかけやすい、ということなのでしょうか。まさか、いまどき80年代に言われていた「イエローキャブ」という日本人女性差別言葉が頭にあるニューヨーカーは、この2019年にいないとは思います。でも、アジア人女性は、ナンパにひっかかりやすい、と思われているのかなぁと、いまだに思ったりもするのです。いや、今の時代、そうは思われていないのかもしれない。でも、どちらにしても、アジア人の女性に対してのねじ曲げられた先入観を持っているニューヨーカーは少なくないのかもしれません。

というのは、いまだに街角に置いてあるフリーのニュースペーパーであれ、ニューヨーカー対象の下品なネット上の掲示板であれ、風俗サービスの広告の多くの写真は、「異常なくらいでっかいおっぱいの白人」か、「異常なくらいでっかいお尻の黒人」か、「スレンダーな髪の長いアジア人」。だいたいこの3パターンで占められているからです。で、その中でも3番目の「スレンダーな髪の長いアジア人」が絶対数的にいちばん多い気がします。

アジア人女性は、従順なイメージ。お願い事は、黙ってなんでも聞いてくれる、と思われているのかもしれません。2019年の今ですら、それらの広告を見て、僕はそう思ってしまうのです。考えすぎかな。ACTUAL PHOTO!(実物!)と書かれている、日本の有名タレントさんの(あきらかに雑誌から抜き取った)水着写真の横に、卑猥なキャッチフレーズと、サービスの料金設定。 “SACHIKOはあなたの言うことをなんでも聞きます、ご主人さま、どうぞお申し付けください”と書かれていても、写真の時点で嘘なのだから、謳い文句も、料金設定も嘘に決まっている。これを見て、「えええ!!小池栄子が200ドルでなんでもしてくれるの!?」とは絶対、思わないって。

もちろん、全員が全員ではありません。でも、総合的に見て、アジア人女性をセックスの対象と見ているニューヨーカーは、少なからずいます。パーセンテージはいちばん多いかもしれません。 でもね、そうは言っても、昔、僕自身の中にも、日本人女性に対してのあきからに間違っている偏見がありました。

今から10年ほど前のことです。路上でやたら声をかけられる、と迷惑そうな顔をする、うちの女性スタッフに「おまえ、本当は自慢したいだけなんじゃないの?」と無神経な言葉を放った時がありました。「だって、痴漢ならともかく、声かけられるだけなら、被害はないだろ。魅力的に思われてるってことじゃん。嫌な気はしないだろ」と。彼女はちょっと怒った顔をして「いやらしい言葉をかけられて喜ぶ女性なんて、社長の大好きなエロ動画の登場人物しかいませんよ」と返してきました。

そういうもんなのかなぁと思っていた、ある日。夜のヘラルドスクエアを歩いていた時のこと。今でこそ、めっきり減ったけれど、当時はまだチラホラと目にしたエッチビデオ専門店の前を通った際でした。店内から店員であろうアラブ系の男性が、ニヤニヤと笑いながら、こっちを手招きしてきます。 ん?と思った僕は特に深く考えず、彼の方に歩み寄りました。「いいもんあるんだよ、こっちこいよ」と店内に通されます。気のいい30歳くらいのお兄ちゃんの笑顔に危険を感じなかった僕は、「すっごい裏ビデオ」でもあるのかと思い(こっちは基本、すべて無修正の裏ビデオだけれど)言われるままに店内に入りました。

こっち、こっち、とニヤニヤしながら、彼は店のいちばん奥のカーテンで仕切られた試着室ほどの小部屋に僕を手招きます。「すっごい裏ビデオ」を期待した僕は、彼に負けないくらいのニヤニヤ顏で、その小部屋の入り口まで行き、中を覗きました。中には何もないただの空間
不思議な顔をする僕に、彼は20ドル札を2枚渡しながら、「Show me your D●●K」と言ってきました。……ん?最初は何を言ってるかすぐにはわかりませんでした。え?という顔の僕に、もう一度、同じセリフ「あそこ、見せて」と言いながら、40ドルを僕の手に握らせます。2枚の20ドル札を見つめながら、時間が止まり、頭の中で、彼の今言ったセリフを反芻します。「……あそこ…みせて……?…誰の?」

まったく予想すらしなかったセリフの意味を脳内で確認し、彼の顔を見る。あきらかにハァハァ鼻息が荒くなっている。コーフンでかすれ気味に、もう一度同じセリフを言われた時点で、2枚の20ドル札を彼に突き返し、混乱する頭の中で、なんとか出てきたセリフ「It’s too small to show you!」を言い放ち、逃げるように、店外へ。足早にその場を立ち去りました。

当時30代半ばだった男の僕でもショックでした(笑)北風の中、なにか、傷ついたまま、帰路についたことを覚えています(笑)。その事件で、僕の中の日本人女性への偏見は見事、払拭されました。いくら、こっちに好意を思っていたとしても。

エロいセリフや、下品なセリフで喜ぶ人間なんて、男女問わず、いるわきゃない。自身に言われて、初めて気がついたのでした。これも、日本にいるだけでは、生涯気がつかなかった間違い、だったかもしれません(という強引な締めくくり)。 それより、なにより、このコラム全体がセクハラになっているような気がして、訴えられないか、気が気じゃない。

image by: Shutterstock.com

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全米発刊邦字紙「NEWYORK BIZ」CEO 兼発行人。同時にプロインタビュアーとしてハリウッドスターをはじめ1000人のインタビュー記事を世に出す。メルマガでは毎週エキサイティングなNY生活やインタビューのウラ話などほかでは記事にできないイシューを届けてくれる。初の著書『武器は走りながら拾え!』が2019年11月11日に発売。

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【著者】 高橋克明 【月額】 初月無料!月額586円(税込) 【発行周期】 毎週水曜日

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