サウジアラビアにとっては、先のフーシー派によるタンカー攻撃事件(26名が死亡)への報復ということもできますし、サウジアラビアとUAEというイランと競合する産油国としては、イランが国際経済に復帰するような事態は、原油の輸出に依存する自国経済へのブローになりますので、イランを国際的な包囲網においておくための策という見方もできるかもしれません。 しかし、今回の当該海域およびホルムズ海峡は、両国にとっても、タンカーの通り道として重要な海峡であり、武力衝突によってホルムズ海峡の封鎖が起きてしまったら、イランの復活による影響以上に、自国経済への痛手となりかねませんので、そのリスクを敢えて犯すのかなあと不思議には思います。
アメリカの、トランプ大統領の、真の狙い
誰が真犯人なのだろうかという疑問は残るかと思いますが、確実に言えることは、アメリカから仕掛けたイランへの喧嘩は、まだまだ解決には程遠いということでしょうか。 今回の安倍総理大臣による仲介の労は、私はBreakthroughにはなると考えていますが、そのためには、我慢強いシャトル外交を実施する必要がありますし、それには日本国民のバックアップが必要です。
果たして私たちにその用意があるのか、北朝鮮問題や韓国との確執などに直面する今、あえてそれを望むのか。日本が直面するエネルギー安全保障との兼ね合いで欠かすことが出来ない中東地域の安定の必要性。それらをすべて踏まえて、どのように対処すべきかしっかりと考えなくてはなりません。
アメリカとイランの衝突は、トランプ大統領が再選を狙う来年までだろう、との見方はありますし、アメリカの本当の狙いは、イランとの戦争ではなく、トランプ政権の下で締結するイランとの“新”核合意と考えていますので、私はアメリカとイランの戦争は恐れていません。
しかし、もし偶発的な衝突が続くようなことがあれば、トランプ大統領でさえコントロールできない状況に陥ってしまう危険性をはらむケースでもあります。アメリカ外交上も、そして国際秩序の安定という観点からも、強いイランの存在は、いつ火薬庫と化すかもしれない中東地域全体のデリケートな安定を保つために欠かせないわけですから、期間限定のメディア上の外交ショーで終わってほしいと願っています。
image by: 米国防省(パブリックドメイン)