米「自作自演」説も。ホルムズ海峡タンカー襲撃、真犯人は誰か?

 

(1)イラン革命防衛隊

1つ目は、米英が主唱するイラン革命防衛隊による仕業という見解ですが、これはすでにお話したとおり、証拠が次々と崩れてきていますので可能性は低いと思います。

そもそもイランとしては、このタイミングで、知ってか知らずかは別として、最高指導者ハーマネイ師と会談している際に、その相手国の権益に攻撃を加えるという愚行にでるモティベーションはありません。

どちらかというと、今、ザーリフ外相が外遊を頻繁に行い、『仲間探し』の旅をしていることからも明らかですが、イランに対してサポーティブな姿勢を取ってくれる国の存在はとても重要で、日本はその最たる“友好国”です。 それに、ハーマネイ師は『トランプ大統領に伝えるメッセージはない』と発言しましたが、安倍総理は、トランプ大統領にモノを言える稀有な存在ですので、そのような仲介者の機嫌を損ねる動きは取らないでしょう。ゆえに、能力はありますが、今回の案件にイラン政府と指導部は関与していないものと思われます。

(2)イラン国内の反政府勢力

2つ目は、イラン国内の反政府勢力による犯行の可能性です。これは、今回の安倍総理のテヘラン訪問時の各メディアの中継の後ろに新聞スタンドが映っていたことを覚えていらっしゃるでしょうか? 日本のメディアは『一斉に安倍総理のテヘラン訪問をトップニュースで伝えています』という表面的なレポートに留まっていましたが、実際に見出しをよく見ると、実に評価や取り方は様々であることが分かります。

一見、この国は最高指導者ハーマネイ師の絶対権力がクローズアップされがちですが、実際は非常に民主的な国で、体制批判も自由に行われますし、恐らくどの国よりも言論の自由も認められていて、日々反政府勢力からの発信も、特に制限を受けることなく行われています。

これは、『何が正しいかを判断するのは国民』という思考に基づいているものと思われます。しかし、それゆえに、現政権や歴代の最高指導者による統治に反感を持つ勢力も多々あることも事実で(300ほど)、中には武力攻撃を行うことのできる高度な装備とテクニックを有するものもいます。

もし、今回の安倍総理のテヘラン訪問によって生まれ得る融和への道筋を良しとせず、現在の緊張関係を現政権と体制を倒すための好機と見ているのであれば、十分に横槍を入れるために、今回のような攻撃にでる可能性はあったかと思います。

ただ、引っかかるのは、機雷ならまだしも、地対海(船)ミサイル、それも誘導型を有し、そして2発を航行中の船舶に命中させるほどのテクニックを持つ可能性は限りなく低いと思われるため、私は、説としては面白いが、彼らによる犯行という見方もできないかと見ています。

print
いま読まれてます

  • 米「自作自演」説も。ホルムズ海峡タンカー襲撃、真犯人は誰か?
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け