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店内にQRコード600枚?新店舗「ビックカメラドットコム」の狙い

7月1日に、通販サイトと同じ「ビックカメラドットコム」という名前で大阪八尾市にオープンしたビックカメラの新店舗は、ネット時代の家電量販店のあり方として注目されています。解説するのは、メルマガ『理央 周 の 売れる仕組み創造ラボ 【Marketing Report】』発行人の理央周さん。お客様の立場で考えるというマーケティングの原点に立ち、「どこででも、いつでも買えるようになりたい」というニーズを実現する取り組みは「見事」だと評価しています。

ビックカメラの挑戦

ビックカメラが面白い試みをやっているそうです。大阪に「ビックカメラドットコム」という、自社の通販サイトと同じ名前の「リアル店舗」を出したとのこと。

日経新聞によると、通常の駅前にあるような店舗より小さく、面積は5分の1程度。特徴は、店のいたるところに、色々な大きさの「QRコード」が600枚配置されているそうです。

QRコードは、四角いバーコードのことで、スマホをかざして読み取ると、インターネット上のサイトにつながって情報が得られるあれです。店に来た人は、気になる商品のQRコードから、商品の細かい情報や口コミなどを調べることができます。

お客様は、このお店に置いてある商品にさわったり、試したりできるのですが、買うのはビックカメラのネット通販ページで、ということになります。

ビッグカメラがこうした売り方を始めた背景には、お客様が何かを欲しい・買おうと決めてから、実際に買うまでの「買い方」という行動と、お客様が、ニーズに気づき、調べ、買おうとするまでの、「心の動き」という心理が、昔と比べて変わってきたことにあります。

ネット通販が浸透していなかった時は、欲しいと決めたらとりあえずお店に見に行き、現物を触ったり使ってみたりします。店員さんに聞いたり、他の店と比べたりしながら、最終的にお店で買う、という買い方でした。

ネット通販が出回ってきて、一般的になってきた5、6年くらい前には、欲しいと思った人はとりあえず、店に行き商品を確かめたりしていました。ここまでは同じですが、そこからスマホやパソコンを使いネットで調べて、様々なネット通販会社の中で、一番安いものをそのネット通販会社で買う、という買い方も一時期流行りました。

家電量販店はショールームのように、現物を飾っておくだけ、最後はネットで買ってしまうので、「ショールーミング」と呼ばれていたのも、まだ記憶に新しいところです。

家電で言えば、冷蔵庫などを買う時には、ネットのクチコミで何が書かれているのかを確かめ、実際に現物を量販店に観に行き、触り確かめた上で、何を買うかを決めます。そして、ネットで買うか、その場で買うかを決めますよね。つまり、お客様はネットとリアルの間を、行ったり来たりするのです。

お客様のこのような行動に関して、日経新聞の記事によると、「ネット通販で買う人の8割は、事前に実際に現物を確かめる」ということにビックカメラは気付いたそうです。インターネット通販の浸透で、どこででも買える、また、どこででも調べられるようになったため、小売業者は対応しなければなりません。

お客様が、どこにいても、いつでも調べ、買えるような仕組みを作ることを、「オムニチャネル」と言います。オムニとは「すべての」、チャネルとは販路=売る場所、という意味です。が、「売る場所」とはあくまで、企業からの目線。

これをお客様目線に変換すると、「どこででも買うことができる」のみでなく、「どこででも、調べられて、体験することができて、買うことができる」となります。つまり、「全ての販路を使って売る」のではなく、「お客様が便利に買ったり調べたりできるようにする」のが、今求められる「オムニチャネル」なのです。

売り手目線ではなく、買い手目線になって、これまであった売り方をさらに一歩進めたのが、このビックカメラのやり方だと言えます。それもこのように、商売の環境の変化とそれに伴う、お客様の買い方の変化にいち早く気づき、すぐに対応したのがこの事例といえるでしょう。

マーケティングは、お客様が抱える問題や課題を解決することから始まります。売れない、というのはどんな商売の人にもある、大きな問題です。その解決策は「どうやったら売れるのか?」ではなく、「お客様は困っていないのか?」「不便なことはないのか?」と、お客様の立場で考えてみることになります。

その意味においても、「どこででも、いつでも買えるようになりたい」というお客様の欲求を見事に掴んだ事例です。

image by: TungCheung / Shutterstock.com

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