成果なしのG7でマクロン大統領が放った“場外”ホームランの真価

 

もともとトランプ大統領はイランとの軍事的な衝突を願っていません。その証に6月にイランがアメリカの無人偵察機グローバルホークを撃墜し、イランへの軍事的な報復が発動直前まで行った際、大統領自ら報復を中止した経緯からもわかります。

そして、大統領就任後、一貫して主張しているのが『米軍の海外展開の縮小』です。言い換えれば、アフガニスタンやイラクにおける米軍の駐留の縮小および海外における米軍の役割の見直しです。そのような中、仮にイランとの戦争になった場合、オバマ政権の全否定の材料として主張する軍事的なコミットメントの縮小という方針に真っ向から矛盾することになります。

私自身、大統領になる前のトランプ氏と何度かお会いする機会がありましたが、彼は一貫してPacifist(平和主義者)で、軍事的なオプションについては、おそらく、これまでのアメリカ大統領に比して、消極的だと思われます。

政権内にはボルトン補佐官やポンペオ国務長官など、イランへの軍事介入やむなし!と主唱する超タカ派が力を持っているとされますが、軍部は介入に消極的であり、そのバランスをとるためには、今回の対話への扉が開いたのは、いわば渡りに船だったのではないかと考えられます。

その表れでしょうか。29日には、イエメンで長引く内戦に対する仲介をアメリカが行う意向を表明しています。フーシ派(イランが支持)と暫定政府(サウジアラビアが支持)の争いが長引き、国内は食料不足、公衆衛生状態の著しい悪化、インフラの大規模破壊など惨憺たる状況になってしまっており、国連でも何度も緊急懸念事項として提起されているほどです。

実際には、中東地域の雄であるイランとサウジアラビアの代理戦争の様相を呈していますが、ここでアメリカがイエメンの内戦の仲介を申し出たということは、まだハードルが高いとされるアメリカとイランの直接対話の前に、イエメン内戦という“媒介”を通じ、イランとの対話のチャンネルを開こうとしているのではないかと推測します。

その会議には、サウジアラビアも呼ばれ参加する意向のようですし、いつもイラン絡みでは必ず口を出したいイスラエルも、今回、このアメリカの提案については、特にコメントはしていませんので、アメリカに非常に気を使っている様子が窺えます。

ここまでの内容をお読みになれば、「もしかしたら米イラン間の緊張緩和の日は近い!」と楽観的なニュアンスをお感じになるかもしれませんが、実際のところはどうなのでしょうか。

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