成果なしのG7でマクロン大統領が放った“場外”ホームランの真価

 

私の仕事柄そしてその役割柄、「対話は望ましく、そしてそれは解決のためのカギで、今回の一連の動きについては楽観視している」と申し上げるべきところかもしれませんが、実は、一触即発の全面戦争の種はまだ残っていると言わざるを得ません。ではどのような“種”が考えられるでしょうか。

1つ目は、『変わってしまった戦争のかたちと人間心理の変化』です。6月にイランの革命防衛隊と思われる勢力が、アメリカのスーパーハイテクな無人偵察機であるグローバルホークを撃墜しました。この際、政権内部の対イラン強硬派(ボルトン補佐官とポンペオ国務長官)の声に押されて、一度はトランプ大統領もイラン攻撃にゴーサインを出しました。

しかし、もともと戦争を避けたいと考えていて、かつ自らの公約(アメリカ軍の海外展開を減少させる)に相反する結果を招くことになると気づいたのか、Twitterや記者会見の内容をうのみにするなら、イラン攻撃10分前に攻撃を中止したとのことでした。この“10分前”というタイミングについては、若干大袈裟ではないかと感じますが、攻撃を直前に思いとどまり、米軍の戦闘機に帰還命令を出したのは事実のようです。

しかし、7月に入ってからは、アメリカ海軍第5艦隊の駆逐艦がイランの無人偵察機を撃墜し、再度、両国の間に軍事衝突の緊張感が高まりました。この際、実はアメリカ軍は、従来のようなミサイルによる撃墜ではなく、ドローンを含む無人攻撃機・偵察機のファンクションを無効にしてしまう最新のサイバー兵器を用いたとされています。

ここで大事なことは、これまでの軍事衝突に向かう緊張の高まりとは違い、今回の衝突・攻撃の応酬は、どちらも無人戦闘機、無人偵察機という、攻撃側も迎撃される側も、直接的に人命を賭すような状況ではなかったということです。

これまでは、報復のためであろうと、相手軍の戦闘機などを撃墜するにあたり、必ずパイロットが操縦する戦闘機が活躍し、常に自らの命の犠牲と背中合わせという状況であったために、攻撃にも、撃墜にも、一種の心理的な抑止力が働いてきました。

しかし、今や攻撃する側も、攻撃を受ける側も、投入する兵器はかなり高額のものではありますが、人命を賭すことが少ないことから、これまでと違い、攻撃に対しての心理的な抑制が効きづらくなり、もしかしたら実際の軍事的衝突の頻度が大幅に高まるかもしれません。

また、無人攻撃機などの投入により、実は誤爆による民間人の犠牲者もうなぎ上りに増えているといわれています。最新の無人攻撃機は、すでにAIによって制御され、敵の目標物を認識した際、自動的に攻撃を行うシステムが導入されていますが、その精度はまだ完ぺきとは言えない状況です。

心理的な抵抗が低くなり、攻撃が自動的に行われるような現状では、必然的に“偶発的な衝突”や“誤爆”が起こる頻度が増えることになります。そうすると、fullスケールの武力衝突に発展する可能性が高まることになるかもしれません。そうなると、対話による緊張の緩和どころではなく、もしかしたら、先日お話ししたような次の世界大戦のきっかけとなってしまうかもしれません。

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